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「アカデミー・クラウドファンディング」について考える

2023-11-06 20:13:34 | アラカルト

先日、国立科学博物館が収集した標本や資料等の保管・管理の為の費用を捻出するために、クライドファンディングを行った。
当初の予定を大幅に超えるお金が短期間で集まった、というニュースをご存じの方も多いのでは、無いだろうか?
この国立科学博物館に限らず、今は「アカデミー・クラウドファンディング」とも呼べるような、国立の研究所や大学等が積極的にクラウドファンディングにより、運営費を集めるようになっている。
大学でいうなら、東北大学の植物標本の管理の為から金沢大学の大学構内のトイレ改修に至るまで、様々な国立大学が資金不足のクラウドファンディングや寄附金募集を継続的に行っている。
朝日新聞:目標は400万円だったけど…科博に続く、東北大のクラウドファン支援
朝日新聞:「どんだけお金ないの」国立大が批判覚悟で寄附募り改修したいもの 

朝日新聞の2つの記事の他にも、法隆寺のような国の文化財指定をされている仏閣に至るまで、様々な文化施設や国立大学、研究所等が「クラウドファンディング」による、資金調達をするようになっている。
このようなニュースを聞く度に、「日本って、いつのころからか文化や科学等の学術的分野にお金を投資しない国になったのだろう?」と、驚きと情けなさのようなモノを感じていた。
その決定打となったのが、国立博物館が実施したクラウドファンディングだったような気がしている。
Huffpost:国立科学博物館のクラファンに9億超。国の予算の在り方に一石を投じる結果に。館長が会見で述べたこととは? 

拙ブログでは何度も指摘してきているのだが、日本の予算のうち「子どもに対する教育費」等はOECD諸国の中でも低位にある。
言い換えれば、「日本は子どもに教育投資をしない国」ということになる。
その延長線として、今回のような「アカデミー・クラウドファンディング」のような動きが出てきたのでは?という、気がしている。
その結果として既に、日本の大学等での研究論文等の「質の低下」が問題になってきている。
現代ビジネス:「日本の学術研究」が危機的状況に・・・論文は多いのに「質の高い」論文が少なくなっている理由 

おそらく「成果主義」と称して、大学自体も「自助努力をし、積極的に論文本数」を求めた結果なのでは?という、気がしている。
そもそも「アカデミックな場」に「論文の本数を競わせる」ような「成果主義」的発想は、相容れられないモノだったはずだ。
もう一つは、「儲けられる研究(分野)」に投資をするという考え方に凝り固まってしまっている、のでは?という懸念がある。
それは「補助金が得やすい研究分野」ということになるだろう。

しかし残念ながら、この「儲けられる研究分野」というのは、半ば「博打ち」のようなところがある。
何故なら、「未来に役立つ研究」という予測等できないからだ。
私たちの生活を見てみるとわかるのだが、10年前に「生成AIやチャットGPT」なる技術が、想像できただろうか?
しかも、身近な技術となるという予測を、多くの生活者はしていなかったと思う。
それほど、「未来を予測する」ということは、難しい(というよりも不可能に近い)ことなのだ。
そしてそれらの技術は、膨大な時間の基礎研究と失敗から発見された新たな発想によるイノベーションによるところが多い(のではないだろうか?)。
その基礎研究となるモノを手放し、儲かる研究に国が投資する、というのは上述した通り「博打」のようなコトなのだ。

「アカデミー発クラウドファンディング」が増える、ということは「国が学術研究を手放した」ということでもあるのでは?という気がする。