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国連からの「皇位継承」についての勧告を考える

2024-10-30 14:07:25 | アラカルト

先週あたりからだろうか?国連が日本に対して「皇位継承」について、勧告をしている。
朝日新聞: 「家父長的な固定観念が背景に」国連の担当員、日本勧告を語る 

この国連からの勧告に対して、「保守」と呼ばれる方々の中には「内政干渉」ということを言う方もいらっしゃる。
他の意見として、「ローマ法王やダライ・ラマ」を引き合いに出し、「男性であることに宗教的意味がある」という、意見を持っていらっしゃる方もいるようだ。

まず「ローマ法王」に関しては、男性の宗教家であることには違いないが、それは代々一つの家系によって引き継がれてきたものではない。
「ダライ・ラマ」は、亡くなられたダライ・ラマの記憶を持つ生まれ変わり、ということが条件になっている。
そして現在のダライ・ラマ14世は、中国からの迫害などにより「今後ダライ・ラマが生きている可能性」について、言及をするという事態にまで陥っていたと記憶している。
ローマ法王とダライ・ラマを同一の理由で、現在の「男系男子継承」、ということに違和感を感じられた方はいらっしゃらないだろうか?
というのも、現在の「保守・男系男子」ということを言われる方は、「萬世一世である男子」ということを、強調されているからだ。
成り立ちが違う存在を、同一として考えることは、どうなのだろうか?

もう一つは、現在の「天皇」という存在の位置づけである。
「天皇は、日本国民の象徴である」と憲法で定められている通り、宗教的な存在ではない。
一般市民が有する様々な権利をはく奪された存在でありながら、「日本を象徴する存在」でもあるのだ。
それは、経済やビジネス、政治といった様々な社会の仕組みから隔絶されていなければならない、ともいえる。

そこで考えてしまうのは、「男系男子」という理由で、皇位継承者となっている秋篠宮家の日ごろの振る舞いなのだ。
多くの市民が、直系長子である敬宮殿下を皇位継承者として、相応しいと感じるのは、秋篠宮家があまりにも世俗的過ぎるからなのでは?
もし、秋篠宮家がこれほど世俗的ではなく、真摯に皇族としての役割を果たそうとしていれば、ここまでの議論には発展しなかったように思うのだ。
この点を「男系男子」という視点で論じてしまうと、世間が感じている「違和感の元」を見誤ってしまう気がしてならない。

宗教的という視点で考えた時、現在の天皇家は「神道」の象徴でもあるが、日本史を学んだ方ならご存じの通り、推古天皇の頃は「仏教」を積極的に勧めていた。
現在も「国分寺」という地名が全国各地に残っているが、この「国分寺」こそ、国が推し進めていた仏教政策の拠点でもあったのだ。
現在NHKで放映されている「光る君へ」の主人公・紫式部の時代でも、天皇(=帝)や帝から寵愛を受けた女性たちが仏門に入る(=世を捨て帰依する)、ということは当たり前こととして描かれている。
そう考えると、現在のように「天皇」をある特定の宗教の祭祀を行う者として考えることも、違うのではないだろうか?
むしろ「天皇」という存在は、「宗教を越えた『祈り』をつかさどる者」であり、それは俗世間から一番遠く離れた存在なのだと考えるのだ。

となれば、その資質を持った人物が受け継ぐのが自然な流れだと思う。
その資質を持った人物が、現在の直系長子である敬宮殿下である、と一般市民が感じ取っている、ということなのでは?
違う言い方をするなら、「『一子相伝』で伝わる祈り」ということになるのかもしれない。

確かに、日本のジェンダーギャップは年々下がっている、ということは現実だ。
そこには、国連が指摘した「家父長的考え」が根強くある、ということもまた事実だろう。
コミュニケーション力においても、男性の方が自分を誇張して見せることに長けているため、社会的上位者に就きやすいという指摘もある。
今回の国連からの勧告は、「皇位継承」という問題というよりも、「皇位継承」を象徴的にとらえた、「日本の社会における家父長意識に対する指摘」と考える必要があるのでは?
だからこそ、国連の担当者が「家父長」という言葉を出しているのではないだろうか?