日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

LGBTQに対する発言

2023-02-05 21:50:43 | 徒然

先週末、岸田首相のスピーチライターなども務めていた首相秘書官を、岸田首相が更迭した。
更迭した理由は、ご存じの通り「LGBTQの人たちに対する発言内容」が、問題になったからだ。
オフレコという場面でありながら、更迭にまで及んだのはやはり早い収拾、という考えがあったからだろう。

ただ、この秘書官の発言報道の前に、岸田首相自らが「(同性婚で)社会が変わってしまう」という発言をした、と報道されている。
朝日新聞:同性婚「社会変わってしまう」首相発言に専門家「差別肯定と同じ」 

発言そのものは、時間的前後があるかもしれないのだが、岸田首相自らも「LGBTQ」という人達に対する差別的な発言をしている。
秘書官を更迭して、自分はどうなの?という、疑問を持たれる方もいるのではないだろうか?
そもそも、今の自民党に限らず政党の多くが、この「LGBTQの問題」に対して積極的に取り組んできたのだろうか?
メディアの扱いはどうなのか?
メディアに関していえば、「LGBTQ」の人たちを取り上げる時、半ば興味半分のような取り上げ方をしてきたのでは?という、印象を持っている。
日本の社会が「LGBTQの人たちを受け入れる準備ができていない」とは、思わない。
例えば、故橋本治氏は「性のタブーのない日本」という本を書かれている。 
社会として「性に対する大らかさ」のようなものは、日本の文化の中にあったのではないだろうか?

もちろん、個人の考えとして受け入れ難いという方がいても、おかしくはない。
「人権」という視点で考えれば、「個人として当然守られるべきこと」だ。
同じように「LGBTQ」だからと言って、非難されるような事があってはならないと思う。
何故なら、上述したように「個人」に関わる問題だからだ。
「LGBTQ」の志向を持った人は苦手、ということもまたとても個人的な事なのではないだろうか?
それを、政治的な話にしてしまうことで、この問題が難しいものにしているのでは?という、気もしている。

法律として「同性の婚姻を認める」ということは、「人権」ということと結びつく問題なので、それは認められるべきだろうし、極論を言えば同性婚や事実婚であっても、特別養子を受け入れる家族とするということになれば、岸田首相の発言意図とは違う意味での「社会が変わる」ことになるかもしれない(勿論、養子縁組をする際には厳しいチェックは必要だと考えている)。
それは「様々なカタチをした家族が当たり前の社会になる」ということだからだ。
そのような「家族形態の多様性」が社会から受け入れられる事で、多様な価値観や寛容性が生まれる可能性はある。

問題を解決するためには、「政治課題」とするより前に社会の固定観念を壊すような事が必要な気がする。


イオンの非正規雇用者の時給7%アップが与える影響

2023-02-02 20:01:12 | アラカルト

今朝、FM番組などで「イオン、非正規雇用者に対する時給7%アップ」という話題が取り上げられていた。
日経新聞:イオン、パート時給7%賃上げ 国内最多40万人

イオンより前、ユニクロやGUを展開しているファーストリテーリングが、正規の新卒者の給与を30万円にする、という話題もあった。
ファーストリテーリング程の衝撃ではなかったかもしれない、イオンの非正規雇用者に対する時給7%アップだが、イオンで働いている非正規雇用者40万人が対象と聞くと、イオンとしての人件費は相当額になる、ということが分かる。
そこまでして、イオンが非正規雇用者の賃上げ7%にするのか?ということを考える必要があると思う。

まず最初に考えられるのが「人員の確保」だろう。
イオンのように、スーパーマーケットだけではなく、様々な「第3次産業」に関わる事業を展開していると、「優秀な人員の確保」は最優先されるべき事だろう。
随分前に言われてきた「AIによって奪われる職業」の中には、いわゆる「第3次産業」と呼ばれる「サービス業」が多く含まれていた。
いずれAIにとって代わられる仕事が多いのに、人員の確保?と思われる方もいらっしゃると思うのだが、現状のサービス業は「人の手」で行われている部分が相当ある。
バックヤードから店内への商品だしなどは、その一例だろう。
生活者にとって、見やすい・選びやすい商品棚つくり、というのは小売りにとってとても重要な仕事だ。
売れ筋商品を並べれば良い、という訳ではないし、店舗ごとの購買客像も違うはずだ。
そのような「微妙な違い」に合わせて、商品棚をつくるということは、まだまだAIが及ぶ分野ではないような気がしている。
だからこそ「人の手」が必要なのだ。

もう一つは、公務員や金融を除く「第3次産業従事者の給与が、他の産業に比べ低い傾向にある」という点だろう。
意外な印象を持たれる方もいらっしゃるかもしれないのだが、「第3次産業=サービス業」のうち、公務員や金融、コンサルティング業のような仕事に関しては確かに給与は平均値に近いか、高い傾向にあるはずだ。
しかし、それ以外の「介護職・保育士・小売り」等に関していえば、第2次産業のように企業規模が大きくなく、多くの従事者が女性で非正規雇用者ということもあり、賃金設定そのものが低く設定されている。
そして、バブル経済崩壊後、急速に増えた労働者というのが「非正規雇用者」であり、企業の賃金抑制の役割を果たしてきた、という側面がある。

このようなことを考えると、今回のイオンの非正規雇用者の時給を7%上げる、というのは相当思い切った判断だという気がする。
イオンという様々な事業を展開し、事業規模も大きかったからこそできる判断ではないだろうか?
それを地元密着の小規模生鮮スーパーで同様のことを求められても、おそらく難しいだろう。

そして非正規雇用者の賃金を上げる事で、わずかながらでも経済を動かしていきたい、という考えもあるはずだ。
このような議論は「卵が先か?鶏が先か?」ということになってしまうのだが、まずは影響力のある大規模事業者から、給与アップをしていくことで、経済が上向きになることは難しいと思う。
その意味で、今回のイオンの非正規雇用者に対する時給7%アップは、小さなさざ波から大きな波へと経済を動かすきっかけとなるのでは?と、期待したい。