朝日新聞のWebサイトを見ていたら、3月公開予定の映画のロケ地に話題があった。
朝日新聞:映画聖地になる?「わたしの幸せな結婚」ロケ地マップが完成 三重
映画のロケ地として使われたお寺などを中心に、行政が「ロケ地巡り地図」をつくり、ロケ関連地などに配布するということのようだ。
映画や原作のファンがロケ地巡りをする「聖地巡礼」と呼ばれる、旅ガイド地図のことだ。
この「ロケ地巡り地図」そのものを作る事自体、悪いとは思わない。
映画や原作のファンが、現地を訪れる事で「地域活性化」へと結びつくなら、良いのでは?と考えているからだ。
ただ、このような「聖地巡礼」は、「地域活性化」へと繋がっていくのか?というと、疑問に感じるところがある。
というのは、多くの場合一過性で終わってしまうからだ。
このような「聖地巡礼」の元となったのは、NHKの大河ドラマではないだろうか?
ご存じの通り、NHKの大河ドラマは主役級の俳優さんが数多く出演するだけではなく、衣装などの時代考証や方言指導など相当な制作費用が掛かっている。
当然のことながら、大河ドラマの舞台となった地域ではNHKの制作発表があると同時に、「大河ドラマゆかりの〇〇」として旅行会社との共同企画が始まり、観光誘致に躍起になる。
このパターンは、おそらく「大河ドラマ」が始まってから、変わることなく続けられてきた「地域活性化策」なのでは?という、気がしている。
しかしこの「地域活性化策」も、諸刃の刃のような所がある。
「大河ドラマ」が放送された間は、観光地となり多くの旅行者が訪れるようになる。
その為、様々な施設を建てたり、行政自ら「キャンペーン」を貼り、観光誘致に必死になる。
残念な事に、人の気持ちは移ろいやすく、冷めやすい。
「大河ドラマ」が終わってしまえば、引き潮のように人の関心は、サッと引いてしまう。
関連施設などを建ててしまった場合、「負の遺産」となってしまう場合が多いのでは?
このような現象は、「大河ドラマ」に限ったことではない。
昨年暮れ、話題のドラマとなった「silent」等は放送開始直後から、ドラマに登場したCafeや主人公が座ったベンチなどに座り、Instagramなどに挙げるドラマファンが数多くいる、と話題になった。
ドラマそのものが12月で終了し、2か月たった今ドラマに登場したCafeやベンチは今でも、「silent」のファンが訪れているのだろうか?
「silent」の「聖地巡礼」と「大河ドラマ」のロケ地訪問との違いは、行政や旅行会社が仕掛けるているのに対して、「silent」をはじめとする人気ドラマの「聖地巡礼」はドラマのファンが自主的に行く、という違いがある。
ファンが自主的に行く「聖地巡礼」と、行政や旅行会社が仕掛ける「聖地巡礼」とでは、受け手となる生活者の「ドラマに対する熱量」に大きな差がある。
ファンが自ら訪れる「聖地巡礼」は、行政などの費用はほとんどないだろう。
それに対して行政や旅行代理店が仕掛ける「聖地巡礼」は、同じ一過性のモノであっても大きな違いがある。
とすれば、行政は安易な「旅行企画」で地元を盛り上げるのではなく、「大河ドラマ終了後」の姿を常に思い浮かべた「地域活性化策」が必要、ということになるはずだ。