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“男のためのガーデニング”改め

青岸寺 早川鉄平「補陀落山図」切絵障子と「上丹生生木彫展」

2022-10-30 10:30:30 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 米原駅の東側に「青岸寺」という曹洞宗の寺院があり、御本尊に「聖観音菩薩坐像(室町期)」や「十一面観音立像(鎌倉後期)」などをお祀りされています。
寺院には雨量によって「枯山水庭園」にも「池泉庭園」にも姿を変える「青岸寺庭園」という季節ごとに美しい姿を見せる名勝庭園があります。

青岸寺では10月から11月の2か月間、「orite Art 青岸寺」というイベントが開催され、各種のイベントやワークショップが開催されています。
イベント期間を通じてメインイベントとなるのは米原在住の切り絵作家の早川鉄平さんによる「補陀落山図」の襖絵の展示で、補陀落山を表現する庭園と襖絵との競演となります。



襖絵は10月の初旬に夜のライトアップをされていましたが、訪れることが出来できず、太陽光に映し出される「補陀落山図」を楽しみに参拝することになりました。
太尾山を背にした青岸寺へは山門から入山しますが、この寺院は紅葉の頃に参拝すると紅葉も楽しめそうな雰囲気があります。



境内にはイワヒバの前庭が広がっており、独特の景観となっていますが、近年は猪や鹿の出没によって被害が出始めているとか。
イワヒバはシダ科の植物で青岸寺は「イワヒバのお寺」と呼ばれることがあるといい、50年以上前から植えられている「長寿(イワヒバの花言葉)」の植物とされている。



玄関から入ると正面には上丹生木彫が並んでおり、ライトアップされています。
上丹生木彫は神社仏閣の建欄彫刻や仏壇の彫刻、美術工芸品まで造る技術集団ですが、モチーフはそれぞれ違った試みがされています。
伝統的な仏像から少女の木彫り・信楽のタヌキから白蛇まで試みは多岐に渡っている。



中でも中央に配置された「毘沙門天三尊」は、吉祥天と善膩師童子を脇侍とする三尊で、森彫刻所の森望さんの作品です。
「木彫りの里 上丹生」とも「仏壇作りの里」とも呼ばれる上丹生の技術の高さを考えさせてくれる仏像です。



「毘沙門天三尊」と同じ作家の方が作られたとは思えない作品は「縄文のビーナス」で、長野県茅野市米沢の棚畑遺跡で出土した土偶(国宝)を模したものと思われます。
妊婦を表し子孫繁栄や豊穰などの祈りを込めたとされる「縄文のビーナス」を木彫りで再現された目を引く作品でした。



「多聞天」と「聖観音」に挟まれて中央に座するは「元三大師」です。
彫られた方は森彫刻所に勤める徹雄さんで、彫りの深い衣文と生きているかのようなリアルな表情の元三大師です。





青岸寺庭園は、観音菩薩がお住まいになる補陀落山の世界を表現しているといわれ、後方に控える太尾山を借景として石組と苔が美しい庭園です。
季節によって枯山水庭園が池泉庭園に姿を変えるように造園されており、雨が多く降る季節には苔の庭園が池の庭園へと変貌する。



降り井戸形式の蹲は、元々は茶道の習わしで客人が這い蹲るようにして身を清めたのが蹲の始まりとなっており、雨量が多い時期になると水位が上がって庭園に水が流れます。
この仕掛けによって梅雨などの雨量の多い時は、白砂ならぬ苔の枯山水庭園が池泉庭園に姿を変える訳です。



降り井戸の横の間は改装されてすっかり綺麗になっており、そこにも上丹生木彫がライトアップされて展示してあり、ヒーリング・ミュージックが流れている。
この日は法要を営まれていましたので、ヒーリング・ミュージックと読経が混じり合って響く中で庭園を眺めておりました。



庭園の奥にある書院「六湛庵」に早川鉄平さんの「補陀落山図」の襖絵が展示されてあります。
渡り廊下から部屋に入ると切り絵の補陀落山の世界が広がり、幻想的な世界に導かれます。
早川さんの作品は大きなものから小さなものまでありますが、この青岸寺や長浜の大通寺での襖絵からは仏教世界と自然の中で生きとし生けるものが共存する世界観を感じます。



ライトアップの時も幻想的な世界が照らし出されていたと想像しますが、太陽光に透かし出された襖絵もため息が出るほど美しい。
襖の向こう側には補陀落山の庭園。部屋の中には補陀落山の襖絵。



正面には虎の姿と遊ぶ猿。空には鳥が飛び、木の上にはリスの姿。同じ構図の中に魚までもが泳いでいる。
虎はともかくとして、米原の山間部の風景が広がります。



片や大きな亀の甲羅の上には鷺の姿。飛ぶ鳥と泳ぐ魚。
咲き終えて実を付けたハスとこれから咲こうとする蕾。



鹿や鼠の上を鳳凰が舞い、巨大な大蛇が空を這います。
天にあるのは太陽か月か?御来光なのか闇に輝く月なのか、その時の感情で受け取り方が変わりそうです。



年々、米原や長浜の市街地で早川さんの作品を目にすることが多くなり、早川さんの人気の高まりが実感出来ます。
寺院や史跡とタイアップした展覧会も増えてきており、場所に融合した作品は、作品の新たな魅力を発掘するかのようです。

ところで、長浜市に店舗を構える「菓匠禄兵衛」さんへ手土産を買いに行った時に面白いお土産を見つけました。
「オトナレモンケーキ」という早川鉄平さんとのコラボレーション商品で、手土産の他に自分用のケーキを購入してしまいました。



早川さんの作品展は今年「盆梅展の慶雲館」「ヤンマーミュージアム」「草津エイスクエア」「真夏の慶雲館」「青岸寺」と5回訪れました。
季節の風物詩のように早川作品が定着してきていますね。



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