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余呉町の北部は、近畿地方以西では唯一の特別豪雪地帯に指定されているといい、「中河内」集落では公式には6.55mの積雪(1981年)を記録しており、7.2mの積雪(1936年)の記録もあるといいます。
木之本町の街中から余呉湖を経て進むと、両サイドを山に挟まれた谷あいの道となり、福井県との県境に「栃ノ木峠」はあります。
峠の先には、福井県南越前町の「今庄」集落や北国街道の入口の関所「板取宿」があるといいますが、ここで折り返しです。
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「栃ノ木峠」は標高537mにあり、峠から南越前町方向の眺めはとても心地が良い。
奥の方に見える山は「ホノケ山」?(標高737m)。地図で見るとそう思えるが...。
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この峠道は、1578年に柴田勝家が越前北ノ庄に封ぜられた時に、安土・京都方面への近道として道幅三軒(約5m)に改修したといいます。
たまにしか車の通らない山奥ではあるものの、すぐ手前にある「余呉高原リゾ-ト・ヤップ」から聞こえてくる音楽に何とも言えない違和感を感じます。
スキーシーズン・オフの今は、ドローンやバギー・ドッグランやBBQが出来るようですが、駐車場はがら空きみたいですね。
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「栃ノ木峠」で見たかったのは、この峠にある「栃ノ木峠のトチノキ」で、幹周7m・樹高25m・樹齢500年といわれている大トチノキでした。
しかし、残念ながら大トチノキは令和元年に枯死してしまったといい、現在は切り株があるばかり。
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急な斜面に立ち、峠越えする人たちの目印にもなっていた巨樹だったと思いますが、残念ながら寿命が来てしまったということになります。
峠の滋賀県側すぐのところには「峠の地蔵堂」があり、堂内には地蔵さまが祀られてあり、かつて峠を越えていく旅人が旅の安全をお祈りしていかれたのかと思われます。
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峠を下って「中河内」集落まで戻ると、鳥居の前にケヤキの巨樹を抱いた「廣峯神社」が目に入ってきます。
「廣峯神社」は、慶長元年(1249年)に山の神・日吉大神を祀って創建されたと伝わり、山王宮を中心に信仰を深めていましたが、明治4年に「廣峯神社」と改称されたと伝わる。
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鳥居の形式は「両部鳥居」となっていて、高島市の琵琶湖に浮かぶ白髭神社の両部鳥居を思い起こさせます。
山王宮信仰の影響から神仏習合の雰囲気が感じられる「廣峯神社」ですから、鳥居の形式も密教的な要素が入っているのかもしれません。
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「廣峯神社」にはケヤキやトチノキの巨樹が多い神社で、環境省の巨樹・巨木林DBにも4本の巨樹が登録されていますが、なかでも最大のケヤキは鳥居の横のケヤキになります。
幹周は6.3m、樹高30mで推定樹齢は不明。この雪深い地で力強く生き抜いてきた樹です。
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幹が苔で覆われているのは湿潤なこの地の気候ゆえかと思いますが、積雪のきせつには根っこや幹の途中まで雪の下となるのでしょう。
大きな痛みもなく、瘤もないことから健康な状態で育っているケヤキといえそうです。
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本殿の横にあるケヤキが2番目に大きいケヤキです。
本殿は寺院の本堂と呼んでも違和感のない造りとなっており、この神社が神仏習合の寺社であったことが伺われます。
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本殿横のケヤキは、幹周5.7m・樹高40mあり、他にも数本太い幹の樹木がみられ、境内にはトチノキ(幹周4.2m・樹高25m)もある。
トチノキの巨樹は山奥に生えているイメージがあるが、ここ中河内はそれだけ山奥の山村だという言い方も出来そうです。
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さて、中河内の集落を抜けて国道を南下すると「小峠の冷水(己知の冷水)」という水場がある。
先客がペットボトルに水を入れ終わるのを待って水に手をひたすと、とにかく冷たい水でした。
いつからあるものかは分かりませんが、この道を通る人の喉を潤してきた名水なんだろうと思います。
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栃ノ木峠へ来たのはこれが2度目ですが、前回は峠の向こうの積雪が除雪されておらず、通行止めとなっていて引き返したことがありました。
今回は県境までと予定していましたので折り返しましたが、帰ってから調べてみると福井県側にはなかなか興味深い場所があるようです。
機会を見つけて峠の向こう、福井県側へ行ってみようかと思います。
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