一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第9回世田谷花みず木女流オープン戦(2)「熱戦」

2016-05-03 00:06:12 | 将棋イベント
私はもちろん立ちっぱなし。でもふだん運動不足なので、これでいい。

山口恵梨子女流初段は△6二飛と回った。これは森下卓九段もうならず、△5二角を指摘した。これなら△8四銀~△8三飛で、角をタダ取りできる。山口女流初段、しくじったか。
室谷由紀女流二段は左銀を繰りだし、▲5六銀とぶつける。△5四金にも▲5五銀と突っ込んだ。森下九段、「これが室谷さんの本来の将棋です」。
山口女流初段は、△8四銀を△7三銀と引き付ける。遊び駒があっては勝てない理屈で、こういうじっとした手が私たちには指せない。ただ、△6二飛で△5二角としていれば、こんなに苦労しなくて済んだのだ。
ここで室谷女流二段に驚愕の一手が出た。
▲5一金!
中原誠十六世名人や清水市代女流六段を彷彿とさせるベタ金だ。これには森下九段も絶句した(第2図)。

しかしその代償に室谷女流二段は、角を成ることができた。数手前には憤死の危機だったことを思えば、この生還は望外だろう。
室谷女流二段、髪をファサ、とこちら側にやって、▲8三歩。山口女流初段は△9二飛とよろける。▲7一馬にも△9三銀と打つが、これではつらい。▲8二歩成に△同銀で、山口女流初段の飛車銀がタコになってしまった。
▲4五歩。△同銀なら▲5三飛成と突っ込む狙いで、「室谷流です」と森下九段。どうやら室谷ペースになったようだ。
と、山口女流初段、△7三銀!! 銀取りを放置して、馬に当てたのだ。「これはいい手です」と、森下九段が激賞・絶賛する。
確かに飛車筋を通して味がいい。山口女流初段といえば「攻めるヤマトナデシコ」が代名詞だが、本局は実によく辛抱している。藤田綾女流初段も感心している。
△3三歩。手順にキズを消して、だいぶ山口女流初段が持ち直した。「全く優劣が分かりません」と森下九段がつぶやく。先手は▲5一金の働きが弱い。

室谷女流二段、▲3六桂と銀取り(第3図)に打つ。これに△3五銀は「▲2五飛△3四歩▲5五角があります」と森下九段。
よって山口女流初段は△5七とと寄った。
「これはいい判断です…あっ!」
森下九段が叫んだ。
室谷女流二段はもちろん▲4四桂と銀を取る。が、これを△同歩は▲6五角の王手飛車があったのだ。厳密には飛車角交換だが、後手陣は飛車を持たれるとひとたまりもない。
とはいえ後手は△4四同歩と取るよりなく、前記の順が実現した。
室谷女流二段の髪がまた向こう側に垂れている。飛車を下ろして▲3一銀から▲4二銀成とし、室谷女流二段の指し手が速くなってきた。
▲4二飛成とし、髪をバサッ、とやる。もう、勝ちを確信した感じだ。
△3五玉を余儀なくさせて、最後は▲3六歩と突いて即詰み。ここで山口女流初段が投了した。場内、お疲れさまの拍手である。
さっそく、大盤で感想戦である。いろいろやったが、第3図で△3五銀の変化は、▲5五角に△3三桂(参考図)の切り返しがあり、後手にも楽しみがあった。

だから室谷女流二段も△3五銀には▲4四桂打とするつもりだったというが、それでも大変な勝負だった。
山口女流初段は残念だった。しかし敗れたとはいえ粘り強い手が随所に出て、ニューエリコを存分にアピールしたといえる。
さて室谷女流二段は、2年連続のきもの姿が決定。今年はどんなおめしものか、期待は高まる。

準決勝第2局の開始である。対局者は渡部愛女流初段と飯野愛女流1級。「愛愛対決」だ。
まずは両者の決意表明。
飯野女流1級「毎年…すみません」
中村アナウンサー「お父様(健二七段)からは何か言われてきましたか?」
飯野女流1級「いえ。今日は師匠の寿命を縮める日でもあるので…」
どうも飯野女流1級、景気がわるい。世田谷区在住の飯野女流1級は、育成会時代からこの棋戦に参戦しているが、毎年成績がパッとしない。「けやきカップと中倉宏美女流二段」の関係みたいなもので、毎年期待を裏切り続けているのだ。しかし今年の相手も厳しい。
渡部女流初段「さっきまでは何ともなかったのに、緊張してきました」
続いて中村アナによる対局者紹介。
「渡部女流初段は、YAMADAチャレンジ杯の初代王者。LPSA期待の若手女流棋士です。この4月から、NHKの将棋フォーカスの聞き手を務めておられます」
「飯野女流1級は、第2回の準優勝者。持ち前の品格の将棋で、初制覇を狙います。今年度から、NHK杯将棋トーナメントの記譜読み上げを務めておられます」
解説は中村修九段、聞き手は鈴木環那女流二段。鈴木女流二段は、昨年度までのNHK杯棋譜読み上げ係だった。NHK関係者がここまで集まるのは珍しい。
中村九段がポソポソつぶやいているのだが、よく聞き取れない。中村アナが聞き取りをしているのだが、そのやりとりがおかしく、夫婦漫才のようだ。
鈴木女流二段「飯野女流1級の三間飛車か、角換わり振り飛車を予想します」
飯野女流1級の先手で、12時08分に対局が開始された。
戦型は飯野女流1級の三間飛車に渡部女流初段が居飛車で応じ、まずは予想通りだ。
鈴木女流二段は、中村アナに月1回、「話し方教室」でお世話になっているという。その口調は相変わらずハキハキしていて、聞きやすい。ただし、舌足らずのしゃべりも私は好きなのだが。
渡部女流初段の作戦は、居飛車穴熊。渡部女流初段は意外に穴熊党で、先のけやきカップでも、3局中2局で穴熊を採用していた。
私見だが、渡部女流初段の将棋は中央志向だと思う。渡部女流初段が玉を固くして勝ちたい気持ちは分かるが、ちょっと目先の損得に捉われている気がする。
飯野女流1級は「コーヤン流」(鈴木女流二段)を採る。まだ駒組み段階なので、解説者の雑談が続く。
中村九段「こうして観客がいらっしゃいますよね。私、9割のひとは解説を聞かず、対局者を見ていると思ったんですよ。でも違うんですね。大盤を見てるんです(だからしっかり解説をしないと)。
…男性棋士はどうでもいいんですけど、女流棋士は応援したくなりますね」
鈴木女流二段「私きのう対局だったんですけど、男の先生はボヤキが多いですね。駒音も高いです」
中村九段「女性は上品ですね」
私はあっちこっちに移動する。着座していない者の特権である。
解説は、棋士の癖の話になった。
鈴木女流二段「矢内さんは座る時に『よいしょ』って言う時は、優勢を意識していますね」
私はニコニコして聞く。私は現在、左手の立ち見スペースにいる。その時、
「こんにちは」
と、背後で私に声を掛ける女性がいた。
(6日につづく)
コメント (4)
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