4日に行われた第9期女流王座戦第4局は、西山朋佳女流二冠が里見香奈女流王座に勝ち、女流王座を奪取。西山新女流王座は女王、女流王将と合わせ、女流棋界4人目の女流三冠となった。
この第4局と、11月27日に行われた第3局を軽く振り返ってみよう。
第3局は、西山女流二冠の先手中飛車。里見女流王座は居飛車を採り、急戦の構え。
しかし△3五歩と突いたあとに△1三角と覗いて、ややおかしい。
里見女流王座はなおも△7二飛と動いたが、西山女流二冠は△1三角めがけて戦いを起こす。
里見女流王座は△3三銀と引き締めたが、そこで▲2六金!(図)が最強の一手。

この手、将棋ソフトにかければ、あまり評価は良くないと思う。しかしこれが「西山朋佳の手」で、形に捉われない力強さに、私はホレボレしてしまった。
結果、西山女流二冠の快勝となった。里見女流王座相手に▲2六金と指して勝てる女性は西山女流二冠しかいない。完全に里見女流王座を飲んでいる、と思った。
そして第4局である。ここまで西山女流二冠の2勝1敗だが、本局、最初から西山女流二冠が勝つ雰囲気があった。しかも相手が里見女流王座というのが意外で、里見ブランドに若干の翳りが見えた。
将棋は後手・西山女流二冠の三間飛車。里見女流王座はまたも居飛車を採り、今度は銀冠に構えた。
第1図は、西山女流二冠が▲2四飛を防ぎ、△2五桂と跳んだところ。

ここ、普通は▲1一角成である。私は将棋の手の中で、香を取りながら▲1一角成とする手がいちばん好きだ。解説の藤井猛九段も▲1一角成を予想しており、それで先手が悪いはずがないと思った。
然るに里見女流王座は▲4五銀! 香を取らなかった。西山女流二冠は△5五歩と伸ばし、これは先手の楽しみが消えてしまった。

進んで第2図は先手が▲3六飛と走ったところ。ここで西山女流二冠は△4五飛! 以下▲同歩△5四馬と進んだ。
△4五飛が、控室の斎田晴子女流五段もビックリの手だ。中田功八段だったか、飛車は切るためにある、の名言があったが、奪取の懸かった一局で、△4五飛は指せない。余談だが、斎田女流五段はこの日が誕生日だった。
△5四馬以下は、▲6五歩△同馬▲6七歩△7六歩▲6六角△7五銀打▲3九角△5六歩▲7七歩△5五馬(第3図)と進んだ。
△5四馬は△7六歩の先手。里見女流王座は▲6五歩から▲6七歩とトリッキーな受けだが、西山女流二冠の△7六歩から△7五銀打が手厚い。私見だが、プロは駒の損得より厚みを重視する傾向があると思う。その伝でいけば△7五銀打で勝負アリで、西山女流二冠が相当勝ちやすくなったと思った。

第3図からは▲2六歩△7三金▲2五歩△8五歩▲9八桂△4六歩▲8五歩△4七歩成▲5八歩(第4図)と進む。
里見女流王座は▲2六歩から桂を取りにいったが、2手かけて桂を取っても、それをどこで使うのかという問題がある。
その間西山女流二冠は△7三金と上部を厚くし、待望の△8五歩。里見女流王座は▲9八桂と受けざるを得ないが、得した桂をここに打つようでは苦しい。
そして△4七歩成に▲5八歩。私だったら、バカバカしくなって投了するところである。

ところがこの辛抱が実を結ぶ。第4図からの△3八歩が緩手で、▲7五角△同銀▲5三飛△6四馬▲5六飛引成(第5図)となっては、かなり紛れている。

さらに第5図から△5八とが疑問で、▲5八同竜(第6図)となっては、アマ同士の戦いなら先手勝ちである。
第4図からたった8手で、なんでこんなに景色が違ってしまうのだろう。これだから将棋は分からない、恐いのだ。

戻って△3八歩では、ひとつ横の△4八に打っていれば、西山女流二冠が優位を保持できたようだ。
ところが冷静に見ると形勢はひっくり返っていなかったようで、第6図から西山女流二冠が再び引き離し、勝利を収めたというわけだった。
西山新女流王座は、出場可能3棋戦ですべてタイトル獲得となった。いずれも里見女流四冠から獲ったところに価値がある。これが現役奨励会三段と退会奨励会三段の差なのだろうか。
それにしても、里見女流五冠が第1期清麗を獲り女流六冠となり、女流七冠が期待されたのは9月である。あれがもう、遠い昔のように思える。「勝ったときに笑っておけ。いずれ泣くときがくる」という、芹沢博文九段の名言を思い出した。
西山女流三冠の将棋は面白い。3棋戦以外の女流棋戦でも、西山将棋を見たいものである。
この第4局と、11月27日に行われた第3局を軽く振り返ってみよう。
第3局は、西山女流二冠の先手中飛車。里見女流王座は居飛車を採り、急戦の構え。
しかし△3五歩と突いたあとに△1三角と覗いて、ややおかしい。
里見女流王座はなおも△7二飛と動いたが、西山女流二冠は△1三角めがけて戦いを起こす。
里見女流王座は△3三銀と引き締めたが、そこで▲2六金!(図)が最強の一手。

この手、将棋ソフトにかければ、あまり評価は良くないと思う。しかしこれが「西山朋佳の手」で、形に捉われない力強さに、私はホレボレしてしまった。
結果、西山女流二冠の快勝となった。里見女流王座相手に▲2六金と指して勝てる女性は西山女流二冠しかいない。完全に里見女流王座を飲んでいる、と思った。
そして第4局である。ここまで西山女流二冠の2勝1敗だが、本局、最初から西山女流二冠が勝つ雰囲気があった。しかも相手が里見女流王座というのが意外で、里見ブランドに若干の翳りが見えた。
将棋は後手・西山女流二冠の三間飛車。里見女流王座はまたも居飛車を採り、今度は銀冠に構えた。
第1図は、西山女流二冠が▲2四飛を防ぎ、△2五桂と跳んだところ。

ここ、普通は▲1一角成である。私は将棋の手の中で、香を取りながら▲1一角成とする手がいちばん好きだ。解説の藤井猛九段も▲1一角成を予想しており、それで先手が悪いはずがないと思った。
然るに里見女流王座は▲4五銀! 香を取らなかった。西山女流二冠は△5五歩と伸ばし、これは先手の楽しみが消えてしまった。

進んで第2図は先手が▲3六飛と走ったところ。ここで西山女流二冠は△4五飛! 以下▲同歩△5四馬と進んだ。
△4五飛が、控室の斎田晴子女流五段もビックリの手だ。中田功八段だったか、飛車は切るためにある、の名言があったが、奪取の懸かった一局で、△4五飛は指せない。余談だが、斎田女流五段はこの日が誕生日だった。
△5四馬以下は、▲6五歩△同馬▲6七歩△7六歩▲6六角△7五銀打▲3九角△5六歩▲7七歩△5五馬(第3図)と進んだ。
△5四馬は△7六歩の先手。里見女流王座は▲6五歩から▲6七歩とトリッキーな受けだが、西山女流二冠の△7六歩から△7五銀打が手厚い。私見だが、プロは駒の損得より厚みを重視する傾向があると思う。その伝でいけば△7五銀打で勝負アリで、西山女流二冠が相当勝ちやすくなったと思った。

第3図からは▲2六歩△7三金▲2五歩△8五歩▲9八桂△4六歩▲8五歩△4七歩成▲5八歩(第4図)と進む。
里見女流王座は▲2六歩から桂を取りにいったが、2手かけて桂を取っても、それをどこで使うのかという問題がある。
その間西山女流二冠は△7三金と上部を厚くし、待望の△8五歩。里見女流王座は▲9八桂と受けざるを得ないが、得した桂をここに打つようでは苦しい。
そして△4七歩成に▲5八歩。私だったら、バカバカしくなって投了するところである。

ところがこの辛抱が実を結ぶ。第4図からの△3八歩が緩手で、▲7五角△同銀▲5三飛△6四馬▲5六飛引成(第5図)となっては、かなり紛れている。

さらに第5図から△5八とが疑問で、▲5八同竜(第6図)となっては、アマ同士の戦いなら先手勝ちである。
第4図からたった8手で、なんでこんなに景色が違ってしまうのだろう。これだから将棋は分からない、恐いのだ。

戻って△3八歩では、ひとつ横の△4八に打っていれば、西山女流二冠が優位を保持できたようだ。
ところが冷静に見ると形勢はひっくり返っていなかったようで、第6図から西山女流二冠が再び引き離し、勝利を収めたというわけだった。
西山新女流王座は、出場可能3棋戦ですべてタイトル獲得となった。いずれも里見女流四冠から獲ったところに価値がある。これが現役奨励会三段と退会奨励会三段の差なのだろうか。
それにしても、里見女流五冠が第1期清麗を獲り女流六冠となり、女流七冠が期待されたのは9月である。あれがもう、遠い昔のように思える。「勝ったときに笑っておけ。いずれ泣くときがくる」という、芹沢博文九段の名言を思い出した。
西山女流三冠の将棋は面白い。3棋戦以外の女流棋戦でも、西山将棋を見たいものである。