11月24日放送のNHK杯将棋トーナメントは、渡辺明三冠と福崎文吾九段の一戦だった。渡辺三冠の実績は言うまでもないが、福崎九段も十段と王座獲得の実績がある。これは面白い戦いになると思った。
当日私は所用があり、後日ビデオで観た。先手が渡辺三冠で、▲2六歩△3四歩▲7六歩△4四歩▲4八銀△3二銀▲6八玉の出だし。福崎九段は振り飛車穴熊の名手で、中でも1986年の第25期十段戦七番勝負で米長邦雄十段を撃破した将棋は、いまも名局として語り継がれている。
本局はここで福崎九段が熟考したので、飛車を振るのかと思った。両者は過去に1回だけ対戦しており(少ない!)、それが18年前のNHK杯である。これは福崎八段が四間飛車に振り、相穴熊の熱戦を福崎八段が制している。
ところが本局は△4三銀。これは雁木のニオイである。続く▲5八金右に△8四歩とし、相居飛車となった。私はガッカリである。
福崎九段は、実は居飛車も指す両刀遣いなのだが、ファンの目には第25期十段戦の残像があるのだ。ちなみに第26期十段戦の防衛戦では、高橋道雄棋王相手に全局居飛車を採用し、しかもストレートで敗れた。私は、福崎前十段がもう少しファンが期待する戦法を採ってくれてもいいのに、と残念に思ったものだ。
本局は、渡辺三冠のペースで進んだ。実はこの対局のあとネットで、「渡辺三冠、史上初のレーティング2000突破」という記事を見た。福崎九段に負けたらレートが大きく下がるので(失礼)、渡辺三冠の勝ちと予想していた。
図は△4八角成▲8五桂と飛車を取り合ったところ。ここで福崎九段は当然△5八馬と切ると思った。
その前に、参考A図は第23期十段戦リーグ、▲福崎七段と△谷川浩司名人との一戦である。
ここで福崎七段は▲3二飛成!(参考B図)とし、△同金▲3三歩から華麗に寄せた。後に谷川名人は自戦記で「感覚を破壊された」と述懐し、大いに話題になったものである。
この将棋があるから、私は図でも△5八馬と思ったのだ。ところが福崎九段は△2六馬。以下▲8二飛△4四馬▲6六角△4五馬に▲5六銀が冷静で、以下渡辺三冠の快勝となった。
感想戦でこの局面に来たとき、△5八馬の変化もやったが。明らかに本譜よりよかった。でも福崎九段は、「△2六馬が予定だった」と言った。私はまたもガッカリである。35年前の福崎九段だったら、躊躇なく△5八馬と行ったはずだ。その決断力が喪われていたことが、悲しかった。
現在福崎九段は、順位戦はC級2組、竜王戦も6組まで落ち、順位戦は0勝7敗である。もはや全然勝てる雰囲気がないが、このまま終わってしまうのだろうか。
当日私は所用があり、後日ビデオで観た。先手が渡辺三冠で、▲2六歩△3四歩▲7六歩△4四歩▲4八銀△3二銀▲6八玉の出だし。福崎九段は振り飛車穴熊の名手で、中でも1986年の第25期十段戦七番勝負で米長邦雄十段を撃破した将棋は、いまも名局として語り継がれている。
本局はここで福崎九段が熟考したので、飛車を振るのかと思った。両者は過去に1回だけ対戦しており(少ない!)、それが18年前のNHK杯である。これは福崎八段が四間飛車に振り、相穴熊の熱戦を福崎八段が制している。
ところが本局は△4三銀。これは雁木のニオイである。続く▲5八金右に△8四歩とし、相居飛車となった。私はガッカリである。
福崎九段は、実は居飛車も指す両刀遣いなのだが、ファンの目には第25期十段戦の残像があるのだ。ちなみに第26期十段戦の防衛戦では、高橋道雄棋王相手に全局居飛車を採用し、しかもストレートで敗れた。私は、福崎前十段がもう少しファンが期待する戦法を採ってくれてもいいのに、と残念に思ったものだ。
本局は、渡辺三冠のペースで進んだ。実はこの対局のあとネットで、「渡辺三冠、史上初のレーティング2000突破」という記事を見た。福崎九段に負けたらレートが大きく下がるので(失礼)、渡辺三冠の勝ちと予想していた。
図は△4八角成▲8五桂と飛車を取り合ったところ。ここで福崎九段は当然△5八馬と切ると思った。
その前に、参考A図は第23期十段戦リーグ、▲福崎七段と△谷川浩司名人との一戦である。
ここで福崎七段は▲3二飛成!(参考B図)とし、△同金▲3三歩から華麗に寄せた。後に谷川名人は自戦記で「感覚を破壊された」と述懐し、大いに話題になったものである。
この将棋があるから、私は図でも△5八馬と思ったのだ。ところが福崎九段は△2六馬。以下▲8二飛△4四馬▲6六角△4五馬に▲5六銀が冷静で、以下渡辺三冠の快勝となった。
感想戦でこの局面に来たとき、△5八馬の変化もやったが。明らかに本譜よりよかった。でも福崎九段は、「△2六馬が予定だった」と言った。私はまたもガッカリである。35年前の福崎九段だったら、躊躇なく△5八馬と行ったはずだ。その決断力が喪われていたことが、悲しかった。
現在福崎九段は、順位戦はC級2組、竜王戦も6組まで落ち、順位戦は0勝7敗である。もはや全然勝てる雰囲気がないが、このまま終わってしまうのだろうか。