飯島栄治八段は歴史的名投手・沢村栄治と同じ名前だ。将棋は竜王戦で第23期(2010年)に1組昇級を決め七段昇段。順位戦では第74期(2015年度)にB級1組に昇級した。「飯島流引き角戦法」を開発し、横歩取りの研究者としても知られる。かつてあった「週刊将棋」では「深夜A時」を連載し、人気を博した。
かように飯島八段は人気・実力の持ち主なのだが、頭髪がさびしいのと、全体的におどおどしているというか生き方に自信がなさそうな感じで、強く見えないのである。
そんな飯島八段は第78期B級2組順位戦で4勝6敗で終わったが、同星の棋士がうじゃうじゃ出て、順位最下位だった飯島八段はC級1組に降級してしまった。大変不運ではあったが、何となく飯島八段らしい降級の仕方だと思ったものである。
その飯島八段が5月30日放送のNHK杯で大橋貴洸六段と当たった。飯島八段は当然予選を勝ち抜いたと思いきや、中村桃子女流初段のナレーションでは、なんと成績優秀者枠で出場したという。あとで調べたら前年度の成績は32勝13敗の勝率7割越えで、そんなに勝ちまくっているとは思わなかった。
とはいえ大橋六段も毎年好成績を挙げる若手実力者である。飯島八段には悪いが、ここは大橋六段がいかにして勝つか、という展開になると思った。
将棋は飯島八段の先手で相掛かりになったが、大橋六段が意表の仕掛けで有利になり、じりじり優勢を拡大。テレビ画面の上部には今年から形勢バーが掲示されるようになったが、一時は2%:98%になり、誰が見ても大橋六段の必勝形と思われた。

第1図から△5八角成▲8八玉△5九飛成▲9六歩。金、桂と駒をボロボロ取られ、△8九金を防ぐため▲9六歩と逃げ道を開けているようではもうダメである。あとは大橋六段がいかに仕上げるかだ。
大橋六段は△7六桂の王手。当然の追撃に見えたが、この瞬間形勢バーが先手10%から80%に変わったのに驚いた。放送時の解説は村山慈明七段で本局も明快な解説だったが、その村山七段は、以下▲9七玉△9九竜に▲9八金で先手を取り、△8九竜に▲7三歩(第2図)で先手有望と解説した。将棋は逆転のゲームだというが、まさかこの将棋がひっくり返るとは……!! 将棋は本当に恐ろしい。

実戦も村山解説に進んだが、その後は飯島八段が▲7三歩成と成り捨てた手が悪手で、形勢バーが先手99%から1%になるという大波乱になった。ただ飯島八段は▲7四歩と打ち直し、大橋六段も△6三玉と元の位置に戻らざるを得なかったようで、これで事なきを得たようだ。以下は飯島八段が村山七段指摘の▲5二銀を指し、即詰み。鮮やかな逆転勝ちを収めたのだった。
こんなはずじゃあ……というテイで呆然とする大橋六段。その気持ちも痛いほど分かり、私はいたたまれなかった。
ともあれ奇勝の飯島八段が強かったということだ。
その飯島八段が1日の王座戦挑戦者決定トーナメントで深浦康市九段に勝ち、準決勝に進出した。次の相手は佐藤康光九段。そこも勝てば挑戦者決定戦で、木村一基九段VS石井健太郎六段の勝者と対戦する。いずれも実力者だが、今年度も5勝2敗と好調をキープしている飯島八段なら、勝てない相手ではない。
そして挑戦者になれば、C級1組に降級した棋士がタイトル戦に登場するという史上初の快挙となる。そうなったら愉快だが、さてどうなるか。
かように飯島八段は人気・実力の持ち主なのだが、頭髪がさびしいのと、全体的におどおどしているというか生き方に自信がなさそうな感じで、強く見えないのである。
そんな飯島八段は第78期B級2組順位戦で4勝6敗で終わったが、同星の棋士がうじゃうじゃ出て、順位最下位だった飯島八段はC級1組に降級してしまった。大変不運ではあったが、何となく飯島八段らしい降級の仕方だと思ったものである。
その飯島八段が5月30日放送のNHK杯で大橋貴洸六段と当たった。飯島八段は当然予選を勝ち抜いたと思いきや、中村桃子女流初段のナレーションでは、なんと成績優秀者枠で出場したという。あとで調べたら前年度の成績は32勝13敗の勝率7割越えで、そんなに勝ちまくっているとは思わなかった。
とはいえ大橋六段も毎年好成績を挙げる若手実力者である。飯島八段には悪いが、ここは大橋六段がいかにして勝つか、という展開になると思った。
将棋は飯島八段の先手で相掛かりになったが、大橋六段が意表の仕掛けで有利になり、じりじり優勢を拡大。テレビ画面の上部には今年から形勢バーが掲示されるようになったが、一時は2%:98%になり、誰が見ても大橋六段の必勝形と思われた。

第1図から△5八角成▲8八玉△5九飛成▲9六歩。金、桂と駒をボロボロ取られ、△8九金を防ぐため▲9六歩と逃げ道を開けているようではもうダメである。あとは大橋六段がいかに仕上げるかだ。
大橋六段は△7六桂の王手。当然の追撃に見えたが、この瞬間形勢バーが先手10%から80%に変わったのに驚いた。放送時の解説は村山慈明七段で本局も明快な解説だったが、その村山七段は、以下▲9七玉△9九竜に▲9八金で先手を取り、△8九竜に▲7三歩(第2図)で先手有望と解説した。将棋は逆転のゲームだというが、まさかこの将棋がひっくり返るとは……!! 将棋は本当に恐ろしい。

実戦も村山解説に進んだが、その後は飯島八段が▲7三歩成と成り捨てた手が悪手で、形勢バーが先手99%から1%になるという大波乱になった。ただ飯島八段は▲7四歩と打ち直し、大橋六段も△6三玉と元の位置に戻らざるを得なかったようで、これで事なきを得たようだ。以下は飯島八段が村山七段指摘の▲5二銀を指し、即詰み。鮮やかな逆転勝ちを収めたのだった。
こんなはずじゃあ……というテイで呆然とする大橋六段。その気持ちも痛いほど分かり、私はいたたまれなかった。
ともあれ奇勝の飯島八段が強かったということだ。
その飯島八段が1日の王座戦挑戦者決定トーナメントで深浦康市九段に勝ち、準決勝に進出した。次の相手は佐藤康光九段。そこも勝てば挑戦者決定戦で、木村一基九段VS石井健太郎六段の勝者と対戦する。いずれも実力者だが、今年度も5勝2敗と好調をキープしている飯島八段なら、勝てない相手ではない。
そして挑戦者になれば、C級1組に降級した棋士がタイトル戦に登場するという史上初の快挙となる。そうなったら愉快だが、さてどうなるか。