一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第80期名人戦第3局

2022-05-09 23:23:10 | 男性棋戦
今日は久し振りに雑誌を買った。
きのう、PCのメールを確認していたら、間違えて富士山ネットサービスのメルマガを開けてしまった。「グラビア全72ページ」という見出しがあり、週刊プレイボーイの案内のようだった。でも、これはちょっと購買欲をそそる。
富士山は基本的に定期購読サービスだから、1冊だけ買うのは面倒である。だからきょう、上野駅構内の書店に寄ったのだった。
店内にはFRIDAYの合併号もあり、表紙は篠崎愛だった。篠崎愛がまだグラビアアイドルをやっていたとは驚きで、合併号だから620円というメチャクチャな値段だったが、これも買うことにした。しかし、写真週刊誌を買うのも本当に久しぶりだ。
2冊で1,170円。アホみたいな値段だった。
でも私は、買ったことに満足して、この2冊をしばらく読まないと思う。

   ◇

7日、8日は第80期名人戦第3局が行われた。先手は渡辺明名人で、角換わりになった。
後手の斎藤慎太郎八段は角打ちを何度か繰り返し手損をしたが、それは角打ちのスキを作っていたようだ。
実際数手後に馬を作ったのだが、渡辺名人も桂得して、やや渡辺名人がよくなった。
斎藤八段も△1九角成と香を取って反撃するが、▲3七桂と跳んだ手がピッタリで、やはり渡辺名人がよい。
この、「△1九馬に▲3七桂」は第1局でも現れたが、隅の馬はこうして防御壁を作られると、存外活躍の幅が狭くなる。大野八一雄七段の飛車落ち指導対局で、下手に馬を作らせてそれを遊ばせる、という高級手筋があるが、そのくらい、隅の馬は働かせるのが難しい。
だから先人は「馬は自陣に引け」と説いた。
話を戻すが、これはこのまま渡辺名人が中押し勝ち、と思ったところへ△2五桂(第1図)が飛んできた。

これを▲2五同桂は△3七銀▲5九玉△4六銀不成で、後手の攻めが続く。しかしAIの推奨は▲2五同桂で、なるほど先に桂を得して悪いわけがない、という理屈だ。
私はこのときABEMAを見ていて、藤井猛九段の解説を何となく聞いていた。
そこに▲2八歩(第2図)が打たれた。

そのとき、70%以上あった渡辺名人のバーがぐぐーっと減り、23%になってしまった。
持ち時間が11分しか残っていなかった斎藤八段はさして考えず、△3七桂成▲同玉△2五桂▲4八玉△2八馬。当然の手が指され、斎藤八段の優勢が確定した。なんだ? この進行は……。
藤井九段は言う。「▲2八歩の悪いところは、△2八馬で、後手に1歩を渡してしまったこと。さっきまでだったら▲6五飛△6四歩▲7五飛に△7四歩と打つ1歩がなかった。
だけど今度は△7四歩と打てる。これが大きいんですよ」
渡辺名人は考え込んでしまった。しかし△2八馬までの手は、アマ有段なら誰でも指せる。なんで渡辺名人は、この局面に誘導してしまったのか。
当然の疑問を、聞き手の女流棋士も藤井九段に聞いた。私たちの聞きたいことを代弁してくれる。この聞き手が誰だか分からなかったが、なかなかいい仕事をする(註:読者からのコメントにより、村田智穂女流二段、武富礼衣女流初段であることが分かった)。
対して藤井九段は「それが読めないときもある」みたいなことを言った。
「後手はここまで辛抱に辛抱を重ねて逆転したわけですよね。それなら渡辺名人だって、ここから辛抱して逆転すればいいじゃないか、という話になりますよね。だけどそうはならない。……この将棋はもう、逆転しません」
藤井九段の解説はアマの視点に立って、相変わらずキレがいい。ナルホドナルホド、と私は頷いてばかりだ。藤井九段の解説に人気があるわけだと思う。
渡辺名人は、▲2八歩には△同馬の一手と読んだのだろう。だけどそこでA▲3八金は△3七桂成▲同金△3九銀があるし、B▲3八銀でも△2七銀と絡んで、後手が十分だと思う。
▲2八歩は悪魔に魅入られたような一手で、まさに上手の手から水が漏れてしまった。しかし、こうしたことがあるから、人間同士の戦いは面白いのだ。ミスのない将棋なんて、見ていて面白くない。
渡辺名人は▲2八歩のところで1時間31分を残していたが、どんどん持ち時間が減ってゆく。プロだって、悪くなってからも考えるのだ。
しかし逆転の綾はなく、いくばくもなく斎藤八段の勝ちとなった。

これで、渡辺名人2勝、斎藤八段1勝となった。とりあえず1勝を返し、斎藤八段はホッとしたことだろう。
問題は渡辺名人の気持ちだ。第3局も中盤までは優位に立っていた。彼我の相性を考えれば、残り4局を2勝2敗で乗り切れる、と考えれば防衛できると思う。
しかし、次の後手番を落としたらタイだ、と悪いほうへ悪いほうへ考えると、防衛に黄信号となる。
もっとも私は、まだ渡辺名人の防衛は固いと見ている。とにかく第4局だ。第4局は19日、20日に行われる。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする