一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

2021年度下半期・驚愕の一手

2022-05-03 00:06:56 | 将棋雑記
かなり遅れたが、「驚愕の一手・2021年度下半期編」を記す。
今回はちょっと異色で、昨年10月30日・31日に行われた、第34期竜王戦第3局・▲藤井聡太王位・叡王・棋聖VS△豊島将之竜王を選んだ。

驚愕図の▲3四香が強打で、△3三桂は▲同角成で詰み。後手が詰みを免れるには△3四同竜しかないが、そこで▲1一角成で後手玉は必至。よって、豊島竜王が投了した。
この手だけを見れば、▲3四香は驚愕でもなんでもなく、私でも指せる。というか、香打ちしか手がない。しかし、すべての変化を精査し、この局面に誘導した藤井三冠の構想が素晴らしい。
ここで指し手をプレイバックしてみよう。第1図は豊島竜王が△7一香と犠打を放ったところ。

第1図以下の指し手。▲7一同成桂△6八と▲6一成桂△4一玉(第2図)

先手は当然▲7一同成桂と取る。豊島竜王は一手の余裕を得て△6八と。先手玉にもいよいよ火が付き、藤井竜王は▲6一成桂。
△4一玉に次の一手は。

第2図以下の指し手。▲5一成桂△3二玉▲8二竜△4二金打▲6八金(第3図)
藤井三冠は▲5一成桂と寄ったが、ここでは▲4二金△同金▲同銀成△同玉▲4四香以下の即詰みがあった。つまり△7一香の犠打が犠打になっていなかったのだが、ターミネーターの藤井三冠ですら詰み手順を読まなかった。実戦では詰みがあるかどうかは誰も教えてくれないから、藤井三冠でもこうしたことが起こる。これが実戦の恐ろしさである。
もっとも藤井三冠は別手順で勝ちを確信していた。▲8二竜の王手が厳しい。豊島竜王は詰みを逃れるために△4二金打と入れるよりない。
そこで▲6八金と手を戻したのがニクかった。

第3図以下の指し手。△6八同馬▲3四香(驚愕図)
まで、藤井三冠の勝ち。

第3図で△6八同竜は▲7八金△3八竜▲4四香で先手勝ち。勝ち将棋鬼のごとし、とはよく云ったもので、どの変化も香打ちが決め手になっている。
よって豊島竜王は馬で取ったが、そこで冒頭の通り、▲3四香まで、藤井三冠の勝ちとなったのだった。

第1図から驚愕図まで、藤井竜王の読み筋だったのは言うまでもない。豊島竜王もほぼそうで、この壮絶な手順が、プロから見れば、投了への手続きに過ぎなかった。その高度な技術に、私は深い感銘を覚えるのである。
コメント
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