伊藤匠七段の封じ手は、大方の予想通り、飛車を取る手だった。藤井聡太竜王も当然、金を取る。ここで伊藤七段の指し手が注目されたが、敵陣に銀を打った。これは第1日目の検討でも出てきた手だが、ここでは緩手。正着は8筋の歩を突きだす手で、先手がどう応じても、後手が優勢に進められたらしい。
それはそうなのかもしれないが、私だったら8五の拠点を大事にして、8六には香か桂を打ちたいところ。8五の歩を捨てる発想は浮かばない。しかしZ世代の伊藤七段なら、固定観念に囚われず、この手の発見は容易だったはずだ。それなのにどうして銀打ちのほうを選んでしまったのか。
藤井竜王、得した金を受ける。ああ、これで形勢は「50:50」に戻ってしまった。これで、先の刺し違いの過激な手が、チャラになってしまった。これは流れからいってもう、藤井竜王の勝ちである。
伊藤七段は飛車を打ち、香を取る。この香を8六に打つのが伊藤七段の狙いで、それで後手よし、という読みだったのだろう。
しかし藤井竜王の4筋の歩成も大きな手で、後手玉への脅威になるばかりか、4筋に底歩が打てるようになったのが大きい(竜を遮断できる)。
伊藤七段は狙いの香打ちを実現させたが、藤井竜王の銀受けと底歩が、当然とはいえいい粘りだ。
しかし伊藤七段も手順を尽くし、先手玉に肉薄する。これ、アマ同士の対局なら、後手が勝つのではないか?
ところが藤井竜王の馬切りが鋭い手で、伊藤七段の桂の王手にも、その馬で食いちぎってしまった。
伊藤七段、馬を取る一手に、藤井竜王、頭金の王手。藤井竜王がこんなところに金を捨てるということは、伊藤玉に詰みがあるということだ。
以下、流れるような手順で、伊藤七段を投了に追い込んでしまった。最大3時間1分あった消費時間の差も、最後は藤井竜王が残り1時間10分、伊藤七段が残り29分で、藤井竜王のほうが41分も多く残していた。消費時間の逆転も、いつものことである。
しかしこの投了図、△9二玉でも△7一角でも、詰み手順が難しい。前者は▲8二香成△同玉▲7二歩成△同玉▲8四桂△8二玉▲8三歩以下。後者は▲7二歩成△同玉▲8四桂△8一玉▲8二香成△同玉▲8三歩△8一玉▲7一飛成△同玉▲8二角△8一玉▲9一角成以下だろうか。金捨てから数えて37手詰になる。藤井竜王の恐るべき終盤力と言わねばならない。
とはいえ、第2局と第3局もそうだったが伊藤七段、もう少し手を進めてくれないか。ただ、ここで投了するのが、伊藤七段の矜持なのだろう。
かくして、第36期竜王戦七番勝負は、藤井竜王のストレート勝ちに終わった。伊藤七段ははっきり言って期待外れだったが、今シリーズは相手が悪かった。次回相対したら、何番か入るのではないだろうか。
藤井竜王は「充実したシリーズだったと思う」と述べたがその通りで、不利になった局面は、第4局の飛車の手のときぐらいだったのではなかろうか。第4局の勝ちも神懸かりで、現棋界で藤井八冠に太刀打ちできる棋士はいない、と言わざるを得ない。藤井一強時代は、気が遠くなるくらい先まで続きそうである。
それはそうなのかもしれないが、私だったら8五の拠点を大事にして、8六には香か桂を打ちたいところ。8五の歩を捨てる発想は浮かばない。しかしZ世代の伊藤七段なら、固定観念に囚われず、この手の発見は容易だったはずだ。それなのにどうして銀打ちのほうを選んでしまったのか。
藤井竜王、得した金を受ける。ああ、これで形勢は「50:50」に戻ってしまった。これで、先の刺し違いの過激な手が、チャラになってしまった。これは流れからいってもう、藤井竜王の勝ちである。
伊藤七段は飛車を打ち、香を取る。この香を8六に打つのが伊藤七段の狙いで、それで後手よし、という読みだったのだろう。
しかし藤井竜王の4筋の歩成も大きな手で、後手玉への脅威になるばかりか、4筋に底歩が打てるようになったのが大きい(竜を遮断できる)。
伊藤七段は狙いの香打ちを実現させたが、藤井竜王の銀受けと底歩が、当然とはいえいい粘りだ。
しかし伊藤七段も手順を尽くし、先手玉に肉薄する。これ、アマ同士の対局なら、後手が勝つのではないか?
ところが藤井竜王の馬切りが鋭い手で、伊藤七段の桂の王手にも、その馬で食いちぎってしまった。
伊藤七段、馬を取る一手に、藤井竜王、頭金の王手。藤井竜王がこんなところに金を捨てるということは、伊藤玉に詰みがあるということだ。
以下、流れるような手順で、伊藤七段を投了に追い込んでしまった。最大3時間1分あった消費時間の差も、最後は藤井竜王が残り1時間10分、伊藤七段が残り29分で、藤井竜王のほうが41分も多く残していた。消費時間の逆転も、いつものことである。
しかしこの投了図、△9二玉でも△7一角でも、詰み手順が難しい。前者は▲8二香成△同玉▲7二歩成△同玉▲8四桂△8二玉▲8三歩以下。後者は▲7二歩成△同玉▲8四桂△8一玉▲8二香成△同玉▲8三歩△8一玉▲7一飛成△同玉▲8二角△8一玉▲9一角成以下だろうか。金捨てから数えて37手詰になる。藤井竜王の恐るべき終盤力と言わねばならない。
とはいえ、第2局と第3局もそうだったが伊藤七段、もう少し手を進めてくれないか。ただ、ここで投了するのが、伊藤七段の矜持なのだろう。
かくして、第36期竜王戦七番勝負は、藤井竜王のストレート勝ちに終わった。伊藤七段ははっきり言って期待外れだったが、今シリーズは相手が悪かった。次回相対したら、何番か入るのではないだろうか。
藤井竜王は「充実したシリーズだったと思う」と述べたがその通りで、不利になった局面は、第4局の飛車の手のときぐらいだったのではなかろうか。第4局の勝ちも神懸かりで、現棋界で藤井八冠に太刀打ちできる棋士はいない、と言わざるを得ない。藤井一強時代は、気が遠くなるくらい先まで続きそうである。