第68回NHK杯決勝

17日に放送された、第68回NHK杯将棋トーナメント決勝戦は、羽生善治九段対郷田真隆九段の顔合わせになった。羽生九段は過去10回優勝しており、名誉NHK杯受賞者。郷田九段は第63回に優勝している。
17日は予定より早く帰宅したので、録画していたNHK杯を観た。だが日暮里駅前でのやりとりで腹が立って、羽生九段のインタビューが頭に入ってこない。何度か再生したが、それでも入ってこない。これは指導対局を受けなくてよかった。
決勝戦は羽生九段の先手で、大方の予想通り、角換わり腰掛銀となった。先手は▲２九飛・▲４八金と流行の形だが、後手は△５二金・△８二飛と通常の形。私見だが、後手の形はこれから戻ってくると思う。
羽生九段▲４五歩の仕掛けに、郷田九段は△７五歩と攻め合い。以下数手進んで▲４三歩（第１図）が玄妙な手だった。解説は佐藤康光九段だが、「これは何でしょう!?」と絶句する。「１歩を取りながら形よく銀を引いて」後手に不満がないのに、というわけだ。

恐れながら私も同意見で、私なら喜んで△４三同銀と取る。これで攻め潰されたらしょうがない、ということだ。
だが郷田九段は長考に沈み、△４七歩と攻める。だが成否はどうあれ、ここでドンパチ始まれば、▲４三歩が残る分、羽生九段の主張が通ると思った。
終盤になったが、羽生九段の攻めが決まっている。▲４三歩が盛大に光り、それを足場に▲４二銀が入った。先手は▲７九玉の形が深く、後手の攻めがもう一歩届かない。角換わりの将棋は、当たりの弱い「７九」がベストに思われた。
というところで、▲３五桂（第２図）が好打。△同歩はもちろん▲２四飛の王手角取り。また捨て置いても▲２四飛以下詰みだ。私は昨年の竜王戦第１局、広瀬章人八段（当時）との対局での「▲２四桂」（参考１図）を思い出した。羽生九段には「歩頭の桂」の好手が多い気がする。


また羽生九段の対局ではないが、1979年10月25日に指された、第18期十段戦第１局・▲米長邦雄九段対△中原誠十段戦の「△７五桂」（参考２図）も思い出した。

本譜は△３五同角と取るよりないが、▲同歩で先手勝勢。「最近の角換わりは研究が進み、中盤のねじり合いを飛び越えて、時間も使わないまま終盤になることが多い」と佐藤九段が嘆いたが、その通りだと思う。
本局も77手まで、羽生九段の勝ちとなった。決勝戦にしてはコクのない将棋で、羽生九段に至っては、考慮時間も何分か残していたのではないか。
感想戦はもちろん、長めに行われた。郷田九段は中盤の早い時期に「（▲４三歩を取らなくても）これで勝ちだと思った」を連発した。私は、棋士はこんな早い段階から勝ち筋を見ているのか、と絶句したが、反面この類の言葉は発しないとも思っていたから、珍しく思った。
また▲３五桂に対しても「基本手筋を見落とした」と自嘲していた。私にはなかなか高等な手筋に思われたが、郷田九段、よほど悔しかったのだろう。
改めて、羽生九段11回目の優勝。一般棋戦では45回目となり、大山康晴十五世名人の同44回を抜き、単独最多となった。タイトルと違い一般棋戦優勝はその価値を低く見られがちだが、タイトル防衛が番勝負だけ戦えばいいのに対し、一般棋戦は１回負ければほぼオワリだから、それはそれで大変なのである。
これで羽生九段はタイトル99期と合わせ、優勝144回。大山十五世名人の同124回を、20回も離したことになる。改めて凄まじい数字だ。

西山女王は、女優の松本穂香に似ている

西山朋佳女王は、女優の松本穂香（ほのか）に似ていると思う。
松本穂香は1997年２月５日、大阪府生まれの22歳。高校時代に女優を目指し、2015年女優デビュー。2018年７月、TBS系「この世界の片隅に」で主人公の北條すず役を演じ、一躍全国区になった。女優デビュー５年目、これからの活躍に期待したい。
なぜこの２人が似ていると思ったかというと、私は昨日24日に放送された「NHK杯出場女流棋士決定戦」で西山女王を観たのだが、その夜に放送されたTBS「世界ウルルン滞在記」に出演していた松本穂香が、西山女王にそっくりだったからである。
西山女王の顔から「勝負の厳しさ」を引くと、松本穂香が出来上がるという感じだろうか。
私の「似ているシリーズ」は、ピンとくる組み合わせがあっても「寝かせて」おくのだが、今日は出来立てほやほやのペアを紹介した次第。

西山女王は昨年女王を獲得し、初タイトル。来月には防衛戦を控えている。相手は最強の挑戦者・里見香奈女流四冠だが、奨励会でのキャリアは互角である。自信を持って五番勝負に臨むだろう。好勝負を期待している。

藤田綾女流二段は、女優の佐藤玲に似ている

日付変わって今日３月24日は、藤田綾女流二段の32歳のお誕生日。おめでとうございます!!
その藤田女流二段は、女優の佐藤玲（りょう）に似ていると思う。
佐藤玲は、1992年７月10日、東京都生まれの26歳。中学３年の時、ある劇団に入団し、2012年、蜷川幸雄主宰の舞台でデビュー。2014年には映画出演を果たし、以降はテレビドラマにも出演するようになる。ここまで安定した活動といえるが、テレビはレギュラー出演作が少ないので、これから頑張って露出を増やしたいところだ。
藤田女流二段と佐藤玲は、目元と口の形がよく似ていると思う。

藤田女流二段は昨年２月に結婚したが、昨年は女流王位リーグに入り、見事２勝した。昨年11月には出産し、今月は女流名人リーグ入りも決めた。結婚がいい刺激になったようで、今ノッテいる女流棋士の一人と云える。私もあやかりたいものだ。

第77期順位戦の名人挑戦および、昇降級予想の答え合わせ

14日に行われたＢ級１組順位戦で、第77期順位戦がすべて終わった。当ブログでは昨年６月８日に、名人挑戦者および各クラスの昇降級者の予想をしたので、今日はその答え合わせをしよう。
まず、６月８日の記事を再掲する。

【Ａ級】
名人挑戦…豊島将之八段
降級…深浦康市九段、阿久津主税八段
名人挑戦は、豊島八段とする。今年も王将、棋聖、王位の挑戦を決め、死角がない。
一方降級者の予想が難しいのだが、１人は阿久津八段にしよう。阿久津八段は４年前にＡ級に昇級したが、全敗で降級した。その時のイメージが強いのである。
あとの１人がどうしても決められない。もう、深浦九段に４勝５敗で落ちていただくことにした。

【Ｂ級１組】
昇級…渡辺明棋王、斎藤慎太郎七段
降級…野月浩貴八段、畠山鎮七段
昇級の一番手は渡辺棋王。順位は１位だし、候補に挙げるのは自然である。
もう一人は難しいが、斎藤七段とした。人柄がよさそうなのが勝負師向きでない気もするが、その人柄を買った。
このクラスも降級者が分からないが、順位下位、すなわち前期昇級の２人とした。

【Ｂ級２組】
昇級…中村太地王座、千田翔太六段
中村王座はＢ級２組３期目。そろそろ昇級しないとしょうがない。
もうひとりは千田六段か永瀬拓矢七段か。２人は４回戦で直接対決がある。その勝者が昇級すると見るが、順位上位の千田六段に１票を入れよう。

【Ｃ級１組】
昇級…佐々木勇気六段、藤井聡太七段
実はＣ級１組が、最も昇級が厳しい。だって昇級枠が２人なのに、39人もいるからだ。
１人は藤井七段でキマリ。残る１人は何人か候補がいるが、順位３位の佐々木六段とした。佐々木六段は、藤井七段に対する強烈なライバル心がある。段位は先を越されたが、クラスまで抜かれるのはプライドが許さないだろう。

【Ｃ級２組】
昇級…大橋貴洸四段、佐々木大地四段、三枚堂達也六段
このクラスももちろん予想は難しいが、上記３人とした。
大橋四段は高勝率で、死角がなさそう。
佐々木四段は、ふてぶてしい？面構えを買った。
三枚堂六段は大橋四段との直接対決があるが、それでその将棋も負けそうだが、何となく応援したくなった。
順位２位の石井健太郎五段も推したいが、今期は緊張の糸が切れそうな気がする。


では、答え合わせをする。◎が正解。

【Ａ級】
名人挑戦…豊島将之八段→豊島将之二冠◎
降級…深浦康市九段、阿久津主税八段→深浦康市九段◎、阿久津主税八段◎

【Ｂ級１組】
昇級…渡辺明棋王、斎藤慎太郎七段→渡辺明二冠◎、木村一基九段
降級…野月浩貴八段、畠山鎮七段→橋本崇載八段、野月浩貴八段◎

【Ｂ級２組】
昇級…中村太地王座、千田翔太六段→永瀬拓矢七段、千田翔太新七段◎

【Ｃ級１組】
昇級…佐々木勇気六段、藤井聡太七段→近藤誠也新六段、杉本昌隆八段

【Ｃ級２組】
昇級…大橋貴洸四段、佐々木大地四段、三枚堂達也六段→及川拓馬六段、佐藤和俊六段、石井健太郎五段

Ａ級は予想通り。
Ｂ級１組は最終局まで全員正解の目があったが、さすがに無理だった。それにしても恐るべきは渡辺二冠の12戦全勝で、格の違いを見せつけた。来期の戦いが楽しみである。
Ｂ級２組は千田－永瀬戦の勝者が昇級すると見ていたが、終わってみれば２人で19勝１敗のぶっちぎりで、他を寄せ付けなかった。私は中村七段も推していたが、終盤の失速が痛かった。
Ｃ級１組は藤井七段が全勝で抜けると信じていたので、やや意外な結果だった。
意外といえば佐々木七段もそうで、指し分けで終わるとは思わなかった。それも途中までは２勝５敗だったのだからどうしようもない。
それにしても、藤井七段の師匠の杉本八段が、９勝１敗で抜けるとは思わなかった。これは明らかに藤井七段の活躍が刺激になったはずで、50歳を過ぎても、気の持ちようでいい将棋が指せるのだ。
近藤新六段の昇級も見事。自分の予想を確認したら、近藤六段を推してなかったので、意外だった。近藤六段は藤井七段の影に隠れて目立たないが、順位戦３期で２度目の昇級で、かなり優秀である。来期の戦いが楽しみである。
Ｃ級２組は３人とも間違えた。失敗したのは石井五段を外したことで、てっきり昇級予想に入れたと思っていた。
ただ、前期頭ハネを食った人が翌期に失速する例はよくあり、例えば第74期のＣ級１組・北島忠雄七段は９勝１敗で頭ハネを食い、翌75期は雪辱を期したものの、２勝８敗で降級点を取ってしまったのだ。これだけを取っても、勝敗は時の運、ということがよく分かる。そこを石井五段は腐らず、よく戦い抜いたと思う。
三枚堂六段は、「大橋四段に負ける」と予想し、それは当たったのに、結局その敗戦が響いて昇級できなかった。順位戦は１つの勝敗が運命を左右するのだ。
名人挑戦を決めた豊島先生、昇級を決めた先生方、おめでとうございます。

以上、今期は正解６、間違い８。正直言えば、もう少し当てたかった。

「世界の将棋まつり2019」での出来事（後編）

「ほらぁそこ邪魔邪魔、どいて!!」
どこからか怒鳴られ、私は困惑した。すぐ隣に対局者？が迫ってきて、私は訳が分からず、その先の空きスペースに移動し、自分の名前を書く。
「だから邪魔なんだよ！　ここいま対局中なので!!　あのー、対局中に盤の前でメモなんか書きませんよね!!!」
やたらと太った男が私に注意した。こいつが声の主か。しかし何言ってんだ？　盤の前だろうが何だろうが、テーブルの上で書いてるんだから文句ないだろう。
連続の叱責で私も頭に血が上ったが、そのテーブルを離れて俯瞰して見ると、訳が分かった。
テーブルの横一列に７種のボードゲームが置いてあり、それを２人の競技者が同時に指していたのだった。椅子は置いてなく、横走りである。これなら周囲に人がいないはずだ。
そしてそこは、私が昼前に見た、チェスクロックがあった場所だった。あの時競技者が「４勝３敗」と言ったのは、その７局目が終わったところだったのだ。
だが、ほかの自由対局場に混じって、こんな競技が行われていたとは、初見の私に分かるはずもない。
先ほどの太った男は、首から何かを下げていた。すなわち、このイベントのスタッフだった。
「７局すべてが行われていたんですか。だけど分からないよね」
このまま一人で理解するのもイヤなので、私は別のスタッフにつぶやく。
「あぁあぁそうですお父さん、確かにお父さんの言う通りだ。言われないと分からないよね」
アンタの言い分は分かりましたよ、という口調も感じが悪く、私はまたカチンときた。
しかしここで怒りを露わにしては、私がクレーマーになってしまう。それで、ぐっと堪えた。
それにしても、と思う。このイベントは、休みの日に近所の市民がふらりと遊びに来る、のほほんとした場だと思っていた。少なくとも、有料で入場した客が一喝される要素はない。ところがかくのごとしで、あのデブは、まるで私がタイトル戦の公開対局に乱入した悪人のような扱いをした。私にも非はあったが、もう少し口の利き方ってもんがあるだろう。あんた、どれだけ偉いんだ!?
私はムカムカして、もうこのイベントに１円でも金を落とすものかと思った。
幸い、指導対局はまだ申し込んでいない。石田直裕五段か渡辺弥生女流初段に教えていただけないのはアレだが、たとえ申し込んでも、こう頭に血が上っていては、満足に手を読めないと思う。
というわけで、もうこの場を失礼させていただくことにした。何と、朝のけやきカップに続いて、連続の途中退出である。
まあけやきカップはともかく、「世界の将棋まつり」には悪いイメージがこってりとコーティングされたので、もう来年以降は行かない。
サヨナラ。