私は棋士のブログはあまり読まないのだが、先月竹俣紅女流初段のブログを見たら、「江の島将棋頂上決戦」の告知があった。
これは湘南江の島で行われるもので、今年で4回目。今年は9日に開催される。出演は竹俣女流初段のほか、戸辺誠七段、つるの剛士氏、乃木坂46伊藤かりんさん、ザブングル加藤歩氏とのことだった。
会場は「江の島コッキング・サムエル苑」で、入場料が200円かかるそう。
私は昨年行かなかったが、後で後悔した。9日は予定もなかったので、今年はお邪魔することにした。
だが当日朝は、起きるのに難儀した。前夜の就寝が夜中の3時で、明らかな寝不足だったからだ。無計画に夜更かしするからこんな羽目になるわけで、どうしようもない。
さて江の島へのルートはいろいろあるが、最も安いのは新宿まで出て、小田急の利用だ。
また大船からモノレールも通じていて、こちらも食指が動く。料金は高いが早く着くし、輸送形態も魅力的なので、迷った末、こちらを利用することにした。
上野駅から上野東京ラインに乗った。上野~東京間の新線ができたのは嬉しいけれど、始発が東京でなくなったので、座れなくなったのは痛い。
でも新橋で座れた。ここで少しでも仮眠しないと、これからもたない。
でも眠れないまま、大船で降りた。時間があれば大船観音を参詣したいが、もちろんモノレールへ直行し、滑り込みで乗車した。
湘南モノレールは過去に何度か乗ったことがあるが、ずいぶん久しぶりだ。乗り心地はさらに良くなり、レールの上を走っているかのようだった。
タイム15分で、終点の湘南江の島駅に着いた。そこはビルの5階だったが、シャレたテラスがあり、富士山が綺麗に見えた。
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3階でこのイベントのチラシをいただく。これは「第36回 湘南江の島春まつり」の一コーナーで、ほかにもいろいろ催しが用意されていた。
湘南電車の踏切を渡り、江の島弁天橋を渡ると、右手に再び富士山が見えた。
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江の島の袂からは和太鼓の音が聞こえてくる。これもイベントのひとつだが、ここで寄り道するわけには行かない。
遠くに江の島のシンボル・Sea Candleが見えた。コッキング苑はその周辺だ。
江の島に入る。江の島は紀行番組でおなじみなので、久しぶり感がない。鳥居を潜ると、参道左手に行列があり、名物「たこせん」を売っていた。もちろんここも素通りする。
右手に「エスカー」が現れた。これに乗れば難なく頂上に着けるが、利用料360円は高くて手が出ない。てくてく階段を登る。
江島神社があったが、ここも参拝せず先を急ぐ。やっとコッキング苑に着いたが、時刻は11時を過ぎていた。やはり徒歩だと時間がかかる。
入場料は、Sea Candleの展望入場料込だと500円になる。私は入苑するだけでいいので、200円だけを支払った。
入苑すると、野点をやっていた(無料)。藤沢清流高校茶道部の方々がお茶を出してくれるありがたい企画だが、やはり先を急ぐ。
Sea Candleの袂に行くと、舞台では戸辺七段、竹俣女流初段が大盤を前に、将棋のレクチャーをやっていた。客席は満員で、立ち見も含め300人はいるだろうか。
私は後方で立ち見である。しかしふだんの運動不足の解消と、大盤を眺めるためには、これでちょうどいい。
「将棋の駒は8種類。これを覚えれば、あなたも将棋が指せます!」
と、戸辺七段が何かのセールスのように言う。
竹俣女流初段は、紅のコートが鮮やかだ。「私は金が好きです。攻めにも守りにも強いし、要になる。イジメっ子をやっつけたり、弱い子を守ったりするのが好きです」
こんな感じで8種類の駒の特性を述べ、いよいよ対局である。
司会は妙齢の女性が務める。第1局は、つるの剛士氏(アマ三段)と、ザブングル加藤歩氏(アマ初段)だ。舞台の看板には「江の島将棋頂上決戦 江の島竜王戦」とあった。
まずは、ふじさわ観光親善大使・つるの氏が登場した。今日は羽織袴姿のいでたちだ。
「皆さんおはようございます! 私はこの素晴らしい景色の中で将棋を指したいと思ってイベントを始めたんですけど、今年で4回目です!」
早くも気合が迸っている。会場を見渡して、「今年も“かりん党”がいらっしゃるんですか? いい味出してます」
とみなを笑わせた。
続いて加藤氏が登場した。こちらはトレーナー姿でラフだ。
しばらくは二人のプチトークショーとなる。
「私は加藤さんがライバルだと思っていて、3戦して、2敗してるんですよ」
「何言うてるんですか、三段と初段じゃ、えげつない差ですよ」
「いやいや、だって加藤さんのお父さんは、将棋道場の師範ですよ。名前の歩も、将棋から取ってるんでしょう?
そんで加藤さん、『将棋ウォーズ』で、無料で指してるんですよ」
将棋ウォーズは日本将棋連盟が公認する将棋オンラインゲームのアプリで、1日3局まで無料で対局できる。有料ならもちろん何局も指せるのだが、加藤氏はおカネを出し渋っているという。「加藤さんそのくらいのカネ出してよ!」
「いやそのカネがないんですわ」
何だか漫才を見ているようである。
「昔はねえ、『さんまのからくりTV』で、将棋十番勝負もやったんだけど」
と、つるの氏。だがそれはお蔵入りになったそうだ。「今なら放送されたと思うけど、当時はまだ将棋ブームじゃなかったからねえ……」
つるの氏が遠くを見た。「でも加藤さん、今日はまた予備校生みたいな恰好で……。フラッと来た感じがどうも……」
私たちは爆笑する。そこへ伊藤かりんさんが登場した。すかさず会場から、多くのタオルが掲げられる。
「アッ、『振り飛車党』のタオル!」
なるほど、「かりん党」が多く来場しているようだ。「私とつるのさんは誕生日(5月26日)が一緒なんです」
「今日はガチですよ」と加藤氏は怪気炎を上げた。
なお、加藤氏が好きな駒はなぜか飛車、かりんさんは香車とのことだった。
今日用意された駒は天竜師作の逸品だ。「ウン十万はしますよ」とつるの氏が感嘆する。
ここで勝敗予想である。早くに入場した人はすでに受け取っていたのだが、勝者予想の整理券を受け取り、それが当たると「つるの剛士のイラスト入りクリアファイル」がもれなくもらえるのだ。
配布は地元高校の生徒諸君が行なっている。イベントにはボランティアの協力が不可欠である。
私は「加藤氏勝利」の整理券を頂戴した。加藤氏、「今日は『悔しいです!』のギャグはやりません」と頼もしい。ただし、駒を触ったのは2年振りとのことだった。
2人が所定の位置に座る。記録・記譜読み上げの小高悠太郎奨励会三段(小高佐季子女流2級の兄)の振駒で、先手がつるの氏になった。持ち時間は15分・秒読み30秒。
対局が始まった。
(つづく)