一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第68回NHK杯決勝

2019-03-26 00:16:44 | 男性棋戦
17日に放送された、第68回NHK杯将棋トーナメント決勝戦は、羽生善治九段対郷田真隆九段の顔合わせになった。羽生九段は過去10回優勝しており、名誉NHK杯受賞者。郷田九段は第63回に優勝している。
17日は予定より早く帰宅したので、録画していたNHK杯を観た。だが日暮里駅前でのやりとりで腹が立って、羽生九段のインタビューが頭に入ってこない。何度か再生したが、それでも入ってこない。これは指導対局を受けなくてよかった。
決勝戦は羽生九段の先手で、大方の予想通り、角換わり腰掛銀となった。先手は▲2九飛・▲4八金と流行の形だが、後手は△5二金・△8二飛と通常の形。私見だが、後手の形はこれから戻ってくると思う。
羽生九段▲4五歩の仕掛けに、郷田九段は△7五歩と攻め合い。以下数手進んで▲4三歩(第1図)が玄妙な手だった。解説は佐藤康光九段だが、「これは何でしょう!?」と絶句する。「1歩を取りながら形よく銀を引いて」後手に不満がないのに、というわけだ。

恐れながら私も同意見で、私なら喜んで△4三同銀と取る。これで攻め潰されたらしょうがない、ということだ。
だが郷田九段は長考に沈み、△4七歩と攻める。だが成否はどうあれ、ここでドンパチ始まれば、▲4三歩が残る分、羽生九段の主張が通ると思った。
終盤になったが、羽生九段の攻めが決まっている。▲4三歩が盛大に光り、それを足場に▲4二銀が入った。先手は▲7九玉の形が深く、後手の攻めがもう一歩届かない。角換わりの将棋は、当たりの弱い「7九」がベストに思われた。
というところで、▲3五桂(第2図)が好打。△同歩はもちろん▲2四飛の王手角取り。また捨て置いても▲2四飛以下詰みだ。私は昨年の竜王戦第1局、広瀬章人八段(当時)との対局での「▲2四桂」(参考1図)を思い出した。羽生九段には「歩頭の桂」の好手が多い気がする。


また羽生九段の対局ではないが、1979年10月25日に指された、第18期十段戦第1局・▲米長邦雄九段対△中原誠十段戦の「△7五桂」(参考2図)も思い出した。

本譜は△3五同角と取るよりないが、▲同歩で先手勝勢。「最近の角換わりは研究が進み、中盤のねじり合いを飛び越えて、時間も使わないまま終盤になることが多い」と佐藤九段が嘆いたが、その通りだと思う。
本局も77手まで、羽生九段の勝ちとなった。決勝戦にしてはコクのない将棋で、羽生九段に至っては、考慮時間も何分か残していたのではないか。
感想戦はもちろん、長めに行われた。郷田九段は中盤の早い時期に「(▲4三歩を取らなくても)これで勝ちだと思った」を連発した。私は、棋士はこんな早い段階から勝ち筋を見ているのか、と絶句したが、反面この類の言葉は発しないとも思っていたから、珍しく思った。
また▲3五桂に対しても「基本手筋を見落とした」と自嘲していた。私にはなかなか高等な手筋に思われたが、郷田九段、よほど悔しかったのだろう。
改めて、羽生九段11回目の優勝。一般棋戦では45回目となり、大山康晴十五世名人の同44回を抜き、単独最多となった。タイトルと違い一般棋戦優勝はその価値を低く見られがちだが、タイトル防衛が番勝負だけ戦えばいいのに対し、一般棋戦は1回負ければほぼオワリだから、それはそれで大変なのである。
これで羽生九段はタイトル99期と合わせ、優勝144回。大山十五世名人の同124回を、20回も離したことになる。改めて凄まじい数字だ。
コメント
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