一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

お~いお茶杯第63期王位戦第4局

2022-08-26 23:31:14 | 男性棋戦
24日、25日は、お~いお茶杯第63期王位戦第4局(新聞三社連合、日本将棋連盟主催)が行われた。本当はこれが第5局だったのだが、挑戦者の豊島将之九段がコロナに罹患したため、順延されたのだ。
これ、藤井聡太王位は意に介していないが、豊島九段は若干の負い目があったと思う。このレヴェルだとそれが勝敗に直結するやもしれず、豊島九段にとって、非常に厳しい戦いが予想された。
将棋は藤井王位の先手で、またも角換わりとなった。相腰掛け銀になり、お互い飛車を引いた。もうお馴染みの形だが、玉形が違う。
そして銀交換のあと、藤井王位が▲4七玉と三段玉にしたのにビックリした。この手は展開次第である手だが、いつ流れ弾が飛んでくるやもしれず、素人にはとても指せない手だ。
その数手後、豊島九段の封じ手になったが、注目のその手は、歩頭に打つ△8六銀だった。
この手筋、私も女流棋士との指導対局で何度か指したことがあるが、先に銀損するだけに、後で相当な回収をしないと、指しすぎになってしまう。もっとも豊島九段のこと、その辺りは織り込み済みであっただろう。
が、数手後に藤井王位が指した▲5六角が、八方睨みの名角だった。相手のと金攻めを受けつつ、7筋からの反撃を見、後手の3筋からの攻めを牽制している。
ここから攻め合いになったが、私が感心したのは79手目の▲2二銀(第1図)だ。一見イモっぽい金取りだが、これがなかなかの曲者で、後手はどう応じても味が悪い。豊島九段も攻めを継続するしかなかった。


そして第2図は△3三同桂と、例の銀を取った局面。ここ、後手の狙いは△3八歩成▲同玉△5八角成だ。だから何はともあれ▲3九歩と受けたい。
ところが藤井王位は▲4一銀△同玉▲4三銀と、詰めろを掛けた。ただでさえ危ない先手玉に、さらに銀をくれてやったのだ。だが、まず後手玉を見てみると「金なし将棋に受け手なし」で、これがなかなか受けにくい。
そして先手玉が詰まなければ先手の勝ち、という理屈だが、はたして豊島九段は△3八歩成▲5九玉を経た後、潔く投了してしまった。
たしかに投了の局面で、先手玉に詰みはない。以下△5八角成▲同金△4二金には▲6一角だ。
あらためて投了の局面を見ると、▲5六角が光り輝いている。藤井王位の駒は、すべてが目一杯働いている。通常は100%の働きだが、藤井王位は各駒に120%の働きを課しているのだ。だからその分、勝率がよい。▲5六角は、その典型的な例といえる。
そして藤井王位の将棋には、相手玉を受けなしに追いこんだあと、自玉がギリギリ詰まない、という展開が実に多い。それだけ、終盤の読みが緻密なのだ。自玉が危険でも、不詰みを読み切ればコワくない、は昔から云われていることである。
それにしても第2図である。ここ、▲3九歩と受けないで▲4一銀と指せる棋士がどれほどいるだろう。
もう、ほかの棋士とはレヴェルが違い、もはや違う競技を見ている感さえする。
これで藤井王位の3勝1敗。残り3局を藤井王位が全敗するとは思えず、またも防衛濃厚である。
もうどうしようもない。
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女流初段の強さⅡ(脇田女流初段の巻)

2022-08-25 22:50:19 | 女流棋士
24日に日本将棋連盟HPの対局結果を見たところ、第16期マイナビ女子オープン本戦1回戦で、脇田菜々子女流初段が里見香奈女流五冠に勝っていたのでビックリした。たぶん、10人中20人がビックリしたと思うし、10人中5人は、将棋連盟が勝敗を間違えてUPしたと思っただろう。平幕が横綱に勝ったようなもので、そのくらい、脇田女流初段の大金星だった。
そこで実戦を確認してみた。
里見女流五段の先手で、初手▲5六歩から始まった。△8四歩▲7六歩に、脇田女流初段は△8五歩。この早い歩突きが、いま思えば深謀遠慮の一手だった。
この歩を目標に里見女流五冠は向かい飛車に振ったのだが、これこそが脇田女流初段の研究だったのではなかろうか。すなわち里見女流五冠得意の中飛車を回避し、向かい飛車に秘策をぶつけるハラである。
▲6六銀、△6四銀の形で、脇田女流初段は△6五桂。この角取りが素朴な好手に見えて、結果を知っているから書くわけではないが、脇田女流初段が面白くなったと思った。
里見女流五冠も高美濃に組み、左桂を交換して、悪くはなく思える。
しかし脇田女流初段の△9五桂がなかなかの手で、里見女流五冠は▲8八飛と受けたが、それで7筋が薄くなってしまった。
そこから銀交換になり、里見女流五冠は▲7八飛と寄る。
ここで脇田女流初段に鬼手が出た。
△6六銀!

一般的に飛車が向かいあった形は、その間に駒が挟まっている側が指しにくいという。△6六銀はその角に働きかける手で、本局はその弱点がモロに出てしまった。ただ本局は、△6六銀を発見した脇田女流初段が強かった。
私は、第29期女流王位戦第3局で、渡部愛女流二段が指した△6六金(参考図)を思い出したのである。

本譜は以下、▲6六同歩△8七桂成▲7九飛△7七成桂まで、後手優勢。
とはいうものの、相手は女流五冠の里見香奈である。脇田女流初段にだって「ふるえ」はくるだろう。結果を知らなければ、この先まだ一山も二山もあると思うのが人情である。
しかしこの日の脇田女流初段は、何かが乗り移っていた。まったく臆することなく強気、強気の好手を連発し、ついに里見女流五冠に勝ったのだった。
投了図は、脇田女流初段の完勝図になっていた。まさに鬼のような強さで、私は感動した。
それにしても女流初段の強さよ。私が女流初段の女流棋士と100番指せば、何番かは勝てるだろう。だけど、里見女流五冠と戦ったら、100番指しても一番も勝てない。
しかし脇田女流初段は里見女流五冠に勝った。つまり脇田女流初段は、押しも押されもせぬプロ、女流棋士だということである。
脇田女流初段は挑戦まであと3番。ここまで来たら、挑戦権を獲っちゃえ!
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悪夢の社団戦2022・第2日目(4)

2022-08-24 19:43:10 | 社団戦
木村晋介会長に確認すると、本当に勝っていた。
「相手が無理攻めしてきたからネ、丁寧に受けて勝ったよ」
「……。それは強い勝ち方じゃないですか」
木村会長は負けると思ったのに、この勝ちは想定外である。これでまた私が戦犯になってしまった。しかも今回私は、四将で負けたのだ。なんだかまた最後に、悪い夢を見てしまった。
私がうなだれていると、
「でも、負けても3勝することが多くなったということは、チームの実力が上がったということよ」
とAkuさんが言った。そのポジティブ思考がまぶしい。
本日の成績を整理すると、チームは3-4、4-3、2-5、3-4の1勝3敗。通算で2勝6敗となった。20チーム中14位。個人は2-2で、もちろん不満である。
さて、打ち上げである。階段で1階に降りると、見覚えのある眼があった。
「田中先生…?」
そう、田中沙紀女流1級だった。顔下半分がマスクで隠れているが、力強い眼力で分かった。
「お久しぶりです」
「今回は昇級おめでとう!」
田中女流1級は、先日終了した第2期女流順位戦のD級で7勝1敗の成績を挙げ、順位最下位からのゴボウ抜きで、C級昇級を果たした。
私は大野教室で何度か田中女流1級と練習将棋を指したが、憶えていただいていたとは恐縮である。
でも、頑張った田中女流1級に対し私は堕落した生活で、合わせる顔がないのが虚しかった。
さて、打ち上げはA氏が予約してくれた居酒屋だが、先陣は木村会長しかいなかった。
やがてメンツが集まり、参加者は木村会長、A氏、山本氏、Abe氏、山野氏、Kod氏、Fuji息子君、Osa氏、私の9名。のちにKan氏が合流する予定だ。だが、Akuさんは帰ってしまった。
2つのテーブルに分かれ、適当に飲食物を注文する。「2時間限定」とのことだったが、「逆にそのほうが(キリよく解散できるので)いいでしょう」と木村会長。
こちらのテーブルは木村会長、A氏、Osa氏と私だ。木村会長は近々どこかで落語を演るそうで、演目は「らくだ」を予定している。大ネタだが、準備は万端なのであろう。弁護業務の傍ら将棋ペンクラブの会長業をこなし、将棋を愉しみ、落語も演る。理想的な人生である。
その後、Kan氏、Fuji父氏、それと社団戦役員が見えた。役員氏は私の左に座ったが、役員氏はなんと、私のブログをご存じだった。「ブックマークして見てますよ」。
それはありがたい話であると当時に、恐縮してしまう。
めいめいで将棋の話になったが、Osa氏が思いのほかタイトル戦の解説会に赴いているのにビックリした。
さらに、棋士との交流も多数。Osa氏は意外に、プロ棋界でも有名かもしれない。
奥のテーブルでは、また将棋を始めた。ここらでタイムアウトとなったが、木村会長が立ったままその将棋をのぞき込んでいる。木村会長も将棋バカなのであった。
会計後、私はみなと別れて都営バスに乗る。次回、社団戦に参加できたら、後悔することのない将棋を指したいと思った。
(おわり)
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悪夢の社団戦2022・第2日目(3)

2022-08-23 23:22:10 | 社団戦


第3図以下の指し手。△5五角▲同角△同銀▲5三歩△6二金寄▲4三と△2五歩▲2八飛△5六銀▲5二歩成△4七歩▲6二と△同金▲5一飛△6一金▲5六飛成(第4図)

第3図では△5五銀を気にしていた。▲3五角には△2五金があるから、そう指されたら▲4三と△4四銀▲5二と△同金▲2四飛と指すつもりだった。が、実際そう指せたかどうか。
本譜は△5五角で、この角交換は歓迎である。
▲5五同角△同銀に、▲5三歩で攻めの継続を図る。△同金には▲3一角の予定。本譜は△6二金寄だったが、▲4三とで先手が勝勢になった。

第4図以下の指し手。△4八歩成▲同飛△4七歩▲同金△3六銀▲5七金△4七歩▲6八飛△5九角▲6九飛△4八歩成▲5二と△7一金▲4四角△5八金▲5九飛△同と▲7一角成△同玉▲6二と△同玉▲4四角(投了図)
まで、一公の勝ち。

▲4四角で翔風館SST氏が投了。私は気分よくほかをあたったが、こちらの負けが目立ち、結局2勝5敗となった。しかし意外にも、2勝以下で負けたのは初めてだった。
チームは残念だったが、個人で勝ったので、まったく気にならなかった。

最終4回戦は吉本興業と。この吉本興業がなかなか強く、昨年も当たって負けている。私は相手の三間飛車穴熊相手に優位に立ちながら、ポカをやってガタガタになった。そのときの相手も来ており、当たりたいような当たりたくないような気持ちだった。
私はまたも四将だった。大将からFuji息子、山本、山野、私、Abe、Kod、木村の各氏。Fuji君を大将に据えるとは奇策だが、この順番はあまり意味がない。というのは、吉本興業の力は拮抗していて、どの位置でも強いからだ。昨年はじゃんけんで大将を決めていたくらいだ。私も今回は、厳しい戦いになると覚悟していた。
将棋は私の後手。▲7六歩△3四歩に▲2二角成。△同銀に▲3四角と来た。筋違い角戦法だ。これは7月10日の「美馬和夫シニア東日本名人祝勝会」での指導対局でやられた戦法で、局後は美馬氏に対処法を教えてもらった。しかしその変化を忘れてしまった。
まったく、右玉といい筋違い角といい、ヘンな戦法を指されてどうも調子が狂う。
ともあれ本局は5筋位取りの持久戦を目指した。それで序盤はまあまあの進行だったのだが……。

第1図以下の指し手。△4四歩▲6七角△6三金▲4六歩△3三銀▲1六歩△6五歩▲同歩△同銀▲6六歩△5四銀▲7五歩△同歩▲8五歩△同歩▲同飛△8四歩(第2図)

△4四歩は次に△4五歩(銀)があるので、先手の▲6七角は当然。問題はその次で、△6三金は非常にまずかった。
ここは当然△4五歩とすべきで、以下4筋から盛り上がる構想だ。2回戦で▲6五歩と位を張り、後手の発展を阻んだのと同じ理屈である。
先手は当然▲4六歩。角筋が確保できたのが大きく、これが2三まで利いているので、私の△2二銀か△3二金が2三に釘付けになってしまった。
なお感想戦では、「△4五歩と指されたら穴熊を目指す」と吉本興業氏は語ったが、美濃囲いからの進展は難しいと思う。
本譜に戻り、私は△6五歩と1歩を交換するくらいしかない。このあたりではもう、若干嫌気がさしていた。
最終△8四歩には、▲7五飛か▲8八飛か。

第2図以下の指し手。▲8八飛△6五歩▲同歩△同銀▲6六歩△7四銀▲7二歩△5三角▲5六歩△同歩▲同角△5五歩(第3図)

第2図で▲7五飛はふつうに△7四歩▲7六飛で、先手の飛車が狭い。▲8八飛は至当であろう。
そこで私の△6五歩がまた逸機。ここは△7四金とし、8筋をガッチリ固めるべきだった。本譜も似た意味だったが、銀だと若干薄い。
と、吉本興業氏は▲7二歩。私は少考の末△5三角と打ったが、局後吉本興業氏は、「みんなそう指すんですよね」と言った。ということは、この形に経験豊富ということか。
そこで私は△7二同飛▲8四飛△8三歩▲8八飛△8二飛を提示した。吉本興業氏はうなったが、これも後手が面白くないことに変わりはない。やはり▲7二歩は好手だった。
吉本興業氏は▲5六歩△同歩▲同角とし、左辺に利かせてきた。
△5五歩にはどう指すか。

第3図以下の指し手。▲4七角△4三金▲3六歩△4五歩▲3七銀△4四銀▲3八角△4六歩▲同銀△4五歩▲3七銀(第4図)

吉本興業氏は▲4七角と引いたが、ここは▲7四角△同金▲6三銀があった。これにA△6四金は▲5四歩で角が死ぬし、B△7三金も▲5四歩△6四角▲6五歩までだ。
本譜は△4三金と上がって一安心。その後先手氏に二歩っぽい手があったが、対局時計を押してないので、セーフだ。

第4図以下の指し手。△5二玉▲7一歩成△同角▲7六歩△7三金▲7五歩△同銀▲7八飛△6三玉▲7六銀△6四銀▲6五歩△5三銀右▲8三歩△3二飛▲7五銀△7四歩▲6四歩(投了図)
まで、吉本興業氏の勝ち。

第4図で△5二玉がまた疑問手。▲7二歩を玉で取りに行く構想だが、こんなバカな手はなかった。
吉本興業氏は▲7一歩成△同角とし、待望の▲7六歩の合わせ。飛、角、銀が7、8筋に集中し、私はその進撃が分かっていても受けづらい。
△7三金は8筋の強化だが、それでも▲8三歩がきた。これ△同飛は▲6四歩で技あり。
私は△3二飛と逃げたが、▲7五銀でもうダメである。△7四歩に▲6四歩で投了した。
前述のとおり一応感想戦をやったが、私は後悔の手ばかり。まったく、つまらない将棋にしてしまった。

うなだれたまま他者の将棋を見、最後の将棋が終わった。勝敗を聞くと、3勝4敗とのことだった。また私と木村晋介会長が負けたか……。
私がそうつぶやくと、誰かが「木村会長は勝ったよ」と言った。
「何? 会長、勝ったの!?」
私は目を剥いて叫んだ。
(つづく)
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悪夢の社団戦2022・第2日目(2)

2022-08-22 00:14:28 | 社団戦
2回戦は大きな変化があった。私が大将で芳しい結果を残せないため、Kod監督が私を四将に降格したのだ。「まあ、気楽に指してください」ということだ。情けない話だが、仕方がない。
大将は山本氏、以下Fuji息子、山野、私、Abe、Kan、Kodの布陣である。Kan氏は業務で忙しいが、寸暇を割いての参戦だ。
相手は横浜宇宙棋院で、第1日は4戦全勝、1位だった。ふつうに組んでいては勝てないと、Kod氏も一計を案じたのだろう。
私の先手で、横浜宇宙棋院氏のゴキゲン中飛車になった。△5六歩には▲6六歩とし、後手の捌きを抑えた。横浜氏は△5七歩成~△5五歩としたが、私は▲6五歩とし、△6四歩からの発展を抑える。対振り飛車には、この筋の位が急所だと私は考えている。
その後▲4六銀~▲5五銀右とし、1歩得に成功した。
ただこのあと、私が▲4六銀~▲5七銀右~▲5六銀と繰り替えたのがかなり悠長で、横浜氏に△3五歩から盛り上がられ、形勢が戻ってしまった。
私は1筋から反撃するが、そんなに厳しくは見えない。四将に落ちてもこの将棋かと、このあたりは自己嫌悪に陥っていた。

第1図以下の指し手。△2五桂▲2七飛△1七歩▲2六飛△1四香▲1五歩△同香▲1六歩△1八歩成▲同香△1七歩▲同桂△3七桂成▲1五歩△3六成桂▲2九飛(第2図)

△2五桂は次に△3七桂成▲同桂△3六歩の狙い。私の▲2七飛はそれを防いだものだが、△1七歩に▲2六飛と浮くのは変調だ。
後手は△1四香と走ったが、ここはヘンな手だが△1二香とし、次に△1一飛と回る手もあった。
本譜は私の香得になったが、歩切れ。しかも成桂を作られ、形勢は容易ならじ、と見ていた。

第2図以下の指し手。△1六歩▲2五桂△同銀▲同飛△4二金▲1六香△2四歩▲2九飛△2五歩▲3四香△2六歩▲3一香成△同飛▲2二角△2一飛▲4四角成△2七歩成(第3図)

△1六歩はこう指したくなるところ。私は幸便に▲2五桂と跳ね、これが▲3三香の先手。後手氏はしょうがない、という感じで△2五同銀と取ったが、これは▲同飛で先手がラクになった。
とはいえ先手の飛車も窮屈で、まだ安心はできない。▲3四香には△3三桂と辛抱されて難しかったが、横浜氏は△2六歩。
私は角を取って▲2二角だが、あまり有効ではなかった。△2七歩成とされ、いよいよ飛車が危うい。

第3図以下の指し手。▲1四歩△2八と▲2二歩△2九と▲2一歩成△1八飛▲6八角△1六飛成▲3一飛△4一歩▲2二と△1四竜▲3四歩△4三香(第4図)

私は指す手に窮し、▲1四歩。ここはほかに最善手があったはずだが、横浜氏の次の一手を△2八とと読み、あえて一手待ったのだ。
果たして横浜氏は△2八と。しかしこれには▲2二歩があり、飛車の取り合いになった。
私としては、お荷物の飛車が駒台に載り、大儲けである。ただ、相手の疑問手をアテにして読みに手抜きをしており、こんな将棋を指しているようではダメだと思った。
戻って横浜氏の△2八とでは△2四飛と浮き、そのあと△2八とを狙えばよかった。
さて△4三香にはどう指すか。

第4図以下の指し手。▲6二馬△同金▲3三歩成△同金▲同飛成△4七香成▲3二竜△1八竜▲6二竜△7二香▲7一銀△9三玉▲8二銀打△9二玉▲9一銀成△9三玉▲8二銀不成(投了図)
まで、一公の勝ち。

第4図で▲5四馬は△5三歩で馬が死んでいる。よってここは▲6二馬が切り時である。△同金に▲3三歩成で、この将棋は勝ったと思った。
▲3二竜の金取りに△1八竜は錯覚だが、ほかの手を指しても私の勝ちは動かない。
▲8二銀不成まで私の勝ち。どの位置でも、勝ちはうれしいものだ。

ほかを当たってみると、上位陣が厳しいようだ。全員の対局が終わり、また3勝4敗で負けか……と残念がっていると、誰かが「4勝3敗ですよ」と言った。
調べてみると、大将以下●●●○○○○で、勝っていたのだ。前回1位のチームに勝つとは思わなかったから、私は却って放心してしまった。
「強かったですよ」
相手チームが、こちらを労う口調で言った。いや確かに、下位打線がよく頑張った。私は今年初めて、チームに貢献したのだった。
今年の社団戦も休む間はない。すぐに3回戦で、翔風館SSTとである。
「さっきは四将でいい感じだったので、次もそれで行きましょう」とKod氏が言い、私は引き続き四将となった。大将から順に、山野、Abe、山本、私、A、木村、Akuの各氏である。
私は先手で、居飛車VS四間飛車となった。作戦はちょっと迷ったが、舟囲いからの急戦とした。

第1図以下の指し手。▲3五歩△4二角▲3四歩△同飛▲3五銀△3二飛▲3四歩△6四角▲4六歩(第2図)

私は▲3五歩。これには△4五歩の反撃を考えていたが、翔風館氏は△4二角。これは弱気の手で、▲3四歩から▲3五銀、そして▲3四歩と抑えて指し易くなった。翔風館氏期待の△6四角には▲4六歩がピッタリである。早くも、これは負けられないと思った。

第2図以下の指し手。△5五歩▲同歩△5四歩▲2四歩△同歩▲5四歩△同銀▲2二歩△同飛▲4四銀△4二飛▲3三歩成△4四飛▲同角△4九銀▲3六飛△5八銀成▲同金△3五歩▲2六飛(第3図)

翔風館氏は△5五歩から△5四歩と合わせてきた。見たことがない筋だが、ということは最善手でない可能性が高い。よって私が最善を尽くせば勝てると思った。
▲2四歩から▲2二歩と味をつけ、じっと▲4四銀と出る。これに△3二歩なら▲5三銀成で先手勝ち。
翔風館氏は△4二飛から暴れてきたが、私は自然に指して手駒を増やす。
しかし△3五歩に▲2六飛と寄った手がやや軽率で、翔風館氏にチャンスが訪れていた。

(つづく)
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