一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

菅井八段、殊勲の勝利

2022-08-13 23:01:25 | 男性棋戦
藤井聡太竜王がA級に昇級して、今期のA級順位戦(毎日新聞社、朝日新聞社、日本将棋連盟主催)は藤井竜王の挑戦でキマリだと思った。悪くても1敗。まあ、全勝で駆け抜けると思った。
1回戦は佐藤康光九段に勝ち、上々のスタートを切った。そして10日の2回戦で、菅井竜也八段と当たったのである。
私は将棋連盟の携帯中継に加入していないが、藤井戦はABEMAで中継があるからありがたい。夜になってチラッと見たら、菅井八段が優勢だった。しかし藤井竜王はここから強いのだ。
が、しばらくしてまた見たら、菅井八段の勝勢になっていた。▲5二飛△4三玉▲5三飛成△同玉に、▲4二角と打ってピッタリ詰み。菅井八段会心の一局で、これは初手から見たいと思った。
ネットを検索して、該当局を鑑賞する。菅井八段の中飛車に、藤井竜王は舟囲い。以前当ブログにも書いたが、勝率8割の藤井竜王が振り飛車に苦戦のイメージがあるのは、対振り飛車という相手の土俵で戦っているからだと思う。
藤井竜王が相居飛車のスペシャリストであっても、対振り飛車では舟囲いのような一般的な囲いを選ぶしかない。そこに振り飛車のつけ入るスキがある。先日のNHK杯で佐々木慎七段が「(極論すれば)初手▲7八飛と指せば、自分の望む戦法が指せる」と語ったが、まさにその通りの展開になったわけだ。
藤井竜王△6四銀に、菅井八段は▲6五歩。これに△7三銀と引いては気合負けだから藤井竜王は△6五同銀だが、菅井八段は▲6八角(第1図)と引く。次は▲7七桂が狙いで、後手は分っていてもそれが防げない。振り飛車の左桂と居飛車の銀の交換なら、先手大成功である。

実はこの局面、かつて見た記憶があったのだが、それは1966年発行「快勝将棋の受け方」大山康晴著(池田書店)の133頁とほぼ同一だった。56年前に紹介された手筋が実戦で現れる不思議に、私は感動を抑えきれない。



本譜に戻るが、実際の形勢はこれでも難しい。菅井八段の角は8八に蟄居し、まったく働いていない。
ところがこれが将棋の難しいところなのだが、後手がこの角を数手掛けて取っても、その立ち遅れが響き、存外よくならないのだ。
そういえばこの手法、藤井竜王がよくやる業ではなかったか。
菅井八段は2度の▲4四歩を利かす。いかにも筋、という手で、よく分からないが急所の手に見える。
と、菅井八段は▲9六歩~▲9七角とし、相手の飛車と交換になった。これは先手、望外の戦果で、これは負けられない、と思ったことだろう。
とはいえここから先も、私にはさっぱり分からぬ展開となったのだが、上に記したとおり、菅井八段の快勝になったわけだった。
さてここまでの記述から、私は藤井竜王の名人挑戦を望んでいるかに見えるが、実際は逆である。残りのA級棋士は、全力を尽くして、藤井竜王の名人挑戦を阻止しなければならない。
コメント
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