付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「いさましいちびの駆け出し魔法使い」 ダイアン・デュエイン

2009-11-01 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック

「聖人にもかならず出発点はあるものだ。それにこれまでもずっと、世界を古い時代から救い出し、みずからが描く姿につくり直してきたのはいつだって子供たちだった」
 上級魔法使いカール・J・ロメロの言葉。物語の主役はいつでも少年と少女、大人はただの腰掛けなのだとグレート・ワイズマンも言ってました。

 姉のニータは認めないかも知れないが、デリーンは頭の良い少女であり、単なる知りたがりの11歳ではなかった。
 3歳のときに知識がなければ世の中では生きていけないと認識して以来、ひたすら本を読んで読みまくり、周囲の出来事に目を配り続けていたデリーンは、ニータの持っている魔法の指南書だって読めるところはこっそり目を通している。
 そんな彼女がついに手に入れた、彼女専用の指南書はノートパソコン。新米魔法使いとなったデリーンはいきなり星の海へと飛び出すが、それこそ彼女にとっての“最初の試練”だった……。

 この邦題、『いさましいちびのトースター』のもじりなのは丸わかりなので個人的にはやめてもらいたかった。一目見るなり「いまいましい……」と脳内変換しちゃうんです。
 少女デリーンの宇宙大冒険といった感じで、これで3部作完結!みたいな勢いで大団円を迎えますが、実はシリーズ8作目を越えてなおも続編執筆中とのこと。やってきた新型パソコンの描写がやたらに古めかしく、はてと思って見てみれば1980年の本。そりゃあ、まだウィンドウズも入ってないさ……といいつつアップルだったりするけれど、DOSマシンなんだよね。時代の流れの速さを感じます。

【いさましいちびの駆け出し魔法使い】【ダイアン・デュエイン】【スターウォーズ】【アップルIIIc】【生存のための多様性】【X-MEN】【シリコン生命体】
コメント (2)
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「G戦場ヘヴンズドア(3)」 日本橋ヨヲコ

2009-11-01 | その他フィクション
「あんたは現実に逃げなくなった。照れずにまっすぐ夢を語れるようになった。マンガ家に必要なものなんて、それだけよ」
 石破修高の言葉。

【G戦場ヘヴンズドア】【日本橋ヨヲコ】【少年ファイト】
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「ノーストリリア」 コードウェイナー・スミス

2009-11-01 | 宇宙海賊・宇宙商人
「誰もが自分は自由だと思っとるかもしれん。しかし、だれの人生も、たまたま知り合った人たち、たまたま居合わせた場所、たまたま出くわした仕事や趣味で作りあげられていく」
 キャットマスターの言葉。

 お話は簡単だ。むかし、ひとりの少年が地球という惑星を買いとった。痛い教訓だった。あんなことは一度あっただけ。二度と起こらないようにわれわれは手をうった。少年は地球へやってきて、なみはずれた冒険を重ねたすえに、自分のほしいものを手に入れ、ぶじに帰ることができた。お話はそれだけだ。

 プロローグでこう書かれ、「これでもう読まなくてもいい」といわれたら、もう読むしかありませんよね。
 惑星ノーストリリアの社会制度と個人的な敵に追いつめられた少年ロッド・マクバンの起死回生の大逆転。死の運命から逃れて<補完機構>によって統べられた地球を手に入れ、失うものを失い、手に入れるものを手に入れて帰還する、ゆきてかえりし物語。
 前半の舞台は、銀河一裕福でありながらその価値を守るためにあえて牧歌的な生活を選択し、人々が今なお汗を流しながら牧畜に従事しているノーストリリア。一方、後半の舞台は、すべての文明と官僚支配の中心地であり、いっさいの労働は人間に似た姿を与えられた獣人やネズミの脳を埋め込まれたロボットによっておこなわれている地球。それぞれ特異な発展をしている世界の対比が面白いし、だからこそそのどちらの世界にも居場所のない少年の物語が魅力的に描かれるのですね。
 たぶんネコミミ美少女の元祖は、ここに登場するク・メルだと思います。
 そして、このオチのネタのひとつは『ラーゼフォン』でもオチに使われていると思います。それが幸せな記憶であって、救いになるのならば、本当にあったことだろうとなかったことだろうと関係ないじゃないかという話です。長谷川裕一の『マップス』やグレッグ・ベアの『ブラッド・ミュージック』も同じですが。

【ノーストリリア】【人類補完機構】【コードウェイナー・スミス】【ク・メル】【経済戦】【150基金】【ボーイ・ミーツ・ガール】【模造記憶】
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