付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「未来の二つの顔」 J・P・ホーガン

2009-11-11 | バイオシップ・人工知能
 猫のノミを退治する一番簡単な方法は猫ごと火の中に投げ込むことだ。しかし、誰もそんなことをしないのは人間としての常識が無意識に選択肢から排除しているから。けれども、そんな常識を植えつけられていないコンピュータが相手だとしたら……。
 2028年の月面「静かの海」での事故をきっかけに、大規模な社会インフラの管理をコンピュータに任せて良いのかということが問題となった。今は何も問題は発見できない。しかし、近い将来、地球上すべての社会インフラをコンピュータが管理するようになったとき、日々複雑化していく社会にコンピュータが対応していく中で、どんなことが起きるのか誰にも分からない。
 高度に発達し複雑化した人工知能を人類は制御できるのか?
 やってみなければ分からないというなら、やってみるしかないと建造中のスペースコロニーに次世代型のコンピュータ・システムを組み込んで管理させ、それに意図的な負荷をかけることで複雑化していく社会システムをシミュレートしようということになったのだが……。

 星野之宣がコミック化もした、ガニメアン・シリーズと並ぶホーガンの代表作で、コンピュータ問題を知る最適のガイドブックとして一般誌でも紹介されました。確か日本語版「月刊プレイボーイ」誌ではなかったかと記憶してます。
 壮大なコンピュータ実験を描いた小説であると同時に、異質思考する存在との戦いを描いたミリタリーアクション巨編でもあり、人工知能テーマの傑作。終盤の宇宙空間での攻防戦はコロニー内戦闘のバイブル。いろんな意味での必読書だと思います。

【未来の二つの顔】【J・P・ホーガン】【ヤヌス】【スパルタクス】【人工知能】【トーラス型スペースコロニー】
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「彷徨える艦隊4~巡航戦艦ヴァリアント」 ジャック・キャンベル

2009-11-11 | ミリタリーSF・未来戦記
 宇宙艦と士官の組み合わせという表紙イラストが続きますが、さすが寺田克也。統一感を持たせながらも飽きさせません。でも、今回は誰なんだろう? タイトルからすると巡航戦艦ヴァリアントと艦長のランディス中佐かと思われますが、今回<ヴァリアント>もランディス艦長もそんなにキーとなるような活躍はしていない気がします。

 ギアリー大佐率いるアライアンス艦隊の敵はシンディック艦隊だけではない。ギアリーの失脚を謀る内部の敵は潜伏したまま活動を活発化させ、さまざまな破壊工作を仕掛けてくる。それは単なる反ギアリー派なのか、それともシンディックのスパイ、あるいは異星人の手先なのか……。

「わたくしは自分の人生や自分の故郷で、どんな男性にも従属するつもりはありません。そばにいる男性に私が求めるものは、対等のパートナーという役割です」
 ターニャ・デシャーニ艦長の言葉。

 ここ数日『とらドラ!』を全巻一気読みしていて、『彷徨える艦隊』との共通点を見つけました。凶悪な美女との三角関係に翻弄される常識人の物語。今回は、この「あいたたたっ!」な三角関係が表面化して、またもやギアリー大佐に新たな危機がっ! しかし、ここは女性2人の沈着冷静かつ慇懃無礼なやりとりのはざまを縫って、なんとか着地成功。さすがは伝説の英雄! これが全6巻と聞いて、あと3冊でまとまるもんかい!と思わないでもありませんでしたが、この三角関係にけりが付いたなら、あと2巻で敵包囲網を突破して異星人の罠をかいくぐり政治的対立の圧力をはねのけるくらい何とかなりそうです。

【彷徨える艦隊4】【巡航戦艦ヴァリアント】【ジャック・キャンベル】【寺田克也】【漂流艦隊】【裏ネット】【奇跡】【ワーム】
コメント (1)
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