2020年、太陽からわずか2300天文単位という近距離に1つの中性子星が発見された。
竜座のしっぽの先に位置することから「竜の卵」と名付けられた中性子星を調査すべく宇宙船セント・ジョージ号が派遣されることになったのだが、この地表重力は670億Gという天体の表面では知的生命チーラが誕生していた……。
人類が中性子星を発見し、何十年もかけて調査隊を送り込んでいる間に、生命体が生まれ、進化し、文明を育てていく異星人。人類の100万倍のスピードで生き、平均寿命37分という早さで世代交代していくチーラとの間にコンタクトは成立するのだろうか?という話で、12個の目を持つ直径5mm、高さ0.5mmの円盤状生物チーラがすごく魅力的に描かれています。ハードSFの名作であり、ファースト・コンタクト・テーマの傑作であり、1つの生命体の進化と進歩の物語。集落が発生し、農業が始まり、数学が発見され、宗教が誕生し、科学が発展し……。
付録の設定資料はほとんど論文であり、序盤は地球を舞台に科学的なデータをつなげながら世代を超えた中性子星発見と遠征隊編成の物語。一方、チーラの世界に話が移れば「恐竜100万年」か「ローマ帝国の興亡」かという怒濤の展開が待っています。
どう考えたって紙魚みたいなチーラが魅力的なのは間違っている気がしますが、これは彼らの思考が人間に近いから。「姿形は全然違っているくせに、中身は人間」というのはスペースオペラに登場する異星人への悪口ですが、居住環境が特異で、生きる速度が全然違う生物です。これで思考まで完全に異質だったら、読者がついていけませんよね。
【竜の卵】【ロバート・L・フォワード】【ファースト・コンタクト】【放射線治療】【石器時代】