「あたしはね、運命論者なの。与えられたものを精一杯利用するのよ。風向きに文句をつけてもしようがないじゃないのさ」
採掘施設でのドティの言葉。
日本ではまったく無名の作家グロスバックです。米国アマゾンで検索かけてもハードカバーとペーパーバックを別に数えても登録されている著作が40冊ちょい。本家でもそんなに多くありません。
確認できている邦訳は3冊きりで、そのうちの2冊が映画のノベライゼーション。『名探偵再登場』(1978)と『グッバイガール』(1978)で、『名探偵再登場』の方は劇作家ニール・サイモンのゴーストライターをした作品。そして3冊目が『死者がUFOでやってくる』(1981)でこれっきり……。
人間の死は肉体の死であって、本当の意味で「生命の死」ではない。人間自身は意識していないのだが、人間と呼ばれる生物は、実際には2つの生命体の複合物なのだ。
原子より小さい有機構造の集合体である<スティム>は約5万年前に平行宇宙の壁を超えてこの宇宙に到達し、そこで見つけた霊長類と融合し超共生することで「人類」となった。
死とはあくまで「霊長類」部分の死であり、回収された残りの部分は宇宙の果ての施設でカウンセリングを受けて再結合を待つというのだが……。
確か、人間の脳味噌が寄生体なんだという小説がどこかにあった気がするけれど、これもそういう感じの話。とはいえ、シチュエーション的にはいきあたりばったりの『プリズナーNo.6』だと思います。
訳者はあとがきで、SFには珍しい人間臭さがこの作品の魅力で、そのために科学にもSF特有の疑似科学にも疎いけれど頑張って訳したみたいなことを書いているけれど……まあ、本編ツッコミどころが多いので、訳者のいわれるようにSF風幻想小説ドタバタ風味と思って読むのがよいようです。タイトルだって、邦題は山田洋次監督の映画『馬鹿が戦車でやってくる』を思わせますしね。
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