「いいことが起きたら、いや、悪いことが起きるかもしれないと考える。悪いことが起きたら、いいほうに転がることを考える。そうやってプラマイゼロに持っていくことを考えていれば、人生、結構うまくいくもんですよ」
デュマ級軽巡航艦<アトス>の中年オペレーターの言葉
状況の悪化にともなって撤退命令が出た連邦宇宙軍蒼橋平和維持艦隊に、紅天の全艦隊が襲いかかる。
辺境星域では有力勢力ながら、もし真正面から連邦宇宙軍と戦うことになればとうてい太刀打ちできない連邦非加盟国が、何故今さら撤退しようという艦隊を襲撃するのか?
その理由に思い至った平和維持艦隊のキッチナー中将は、あえて6倍の敵に立ち向かうことを決意した。たとえ、それが艦隊を壊滅させることになろうとも……。
宇宙艦隊戦が繰り広げられる話というと最近ではジャック・キャンベルの『彷徨える艦隊』があげられますが、艦隊戦の迫力という点ではキッチナー艦隊の相対速度で秒速50キロを超える戦いも優るとも劣りません。
あとがきも何もないのでなんですが、これで完結でも、まだまだ続くでも通用しそうな黎明篇の3巻は「軍隊とはつまるところマンパワーの集合体であり、最後に支えるのは人間なのだ」とばかり全篇艦隊戦が繰り広げられます。同時に、蒼橋の職人集団、取材に訪れて戦闘の渦中に放り込まれた天然女性記者の物語とも絡み合って急転直下の結末へ。
ただ、いかにも急いで一気に畳みましたという結末なので、爽快感はあるけれど1巻冒頭のプロローグからの輪は閉じません。まだまだ続くと言うことでしょう。そして「冒険」よりも「戦争」テイストの強い話でした。
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