付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「地底大陸」 蘭郁次郎

2009-12-07 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 マイブームだった秘境冒険小説が、「朝日新聞」の朝刊に連載していた『新・地底旅行』の影響か、地底探検に片寄り始めた頃に手に入れたもの。

 鉱物資源を探索にアジア大陸奥地に赴いた日本の大陸探検隊が、高度な科学文明を誇る地底帝国への入り口を発見する。だがそこに隣国R国の息がかかった秘密結社ゲーウー団が潜入し、女指揮官アスリーナが地底帝国の科学技術を奪うが、日本男児は柔道の技と勇気でR国の陰謀から2つの帝国を救う。

 ……という、いかにも戦前の少年向け物語です。
 蘭郁次郎という人は、海野十三と並んで日本の科学小説界を代表する作家だったそうですが、1944年1月に台湾で事故死してしまい、そのまま戦後に再評価されることなく幻の作家となってしまったようです。
 ギミック満載で少年向けとしては面白い小説なので、ちょっと残念な話です。ガガガ文庫の跳訳シリーズあたりで復刊しても良いのにね(まあ、跳訳そのものがどこかに跳ねて行っちゃってる現状ですが……)。

【地底大陸】【蘭郁次郎】【モンゴル】【秘密警察】【インカ帝国】【人間タンク】【音波兵器】【怪力線砲】
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「円環のパラダイム」 瀬尾つかさ

2009-12-07 | 時間SF・次元・平行宇宙
「過去を見ても仕方がないんだ。未来を悩んでも仕方がないんだ。そんなのは、今日を精一杯、がんばった後についてくるものだろう」
 だから世界はめちゃくちゃで自分も明日死ぬかも知れないけれど、今日が楽しいという穂坂歩美の言葉。

 地球は無数の断片の寄せ集めになってしまった。
 いつかどこかで何者かの造ったシステムが玖朗たちの地球にまで影響を及ぼし、世界は無数の欠片に分割され、それぞれの欠片を繋ぐのは正体不明のゲートだけとなってしまった。
 しかし、何万年と幾つもの世界を呑み込んできたゲートワールドは、ただの人間が生きのびられる世界ではなかった。そんな幾つもの世界を渡り歩いてきた高校生・赤羽玖朗と紀野国可耶が辿り着いたの<学校>は、共生することで人間に異能を与える円環族と契約することでかろうじて文明を保つことに成功した、高校生を中心としたコミュニティだった。
 そして今、生徒会による生存をかけた戦いが始まる……。

 富士見ファンタジア文庫の『クジラのソラ』が好きで、最近の新刊は何かなあと思っていたら、いつの間にか一迅社文庫で仕事をしていて、慌ててオンライン通販で買い求めた瀬尾つかさの最新作です。一迅社文庫なんて、このあたりの本屋じゃほとんど置いてなく、置いてあってもほんのわずか。オンライン書店がない時代だったら、完全に知らないうちに絶版になってます……。
 今回も当たりです。「面白い本を読んだ!」「SF読んだ!」と素直に満足できる1冊です。ジュブナイルだし、中学高校を舞台に高校生たちが大人を差し置いて活躍する話で、気色悪い怪物も出てくれば、凄まじい怪物も出てくるし、パッチワーク化された世界にはまだまだたくさんの秘密が眠っていて、そんな秘密とつき合っていかなければならない少年少女の恋愛模様を交えたサバイバル小説。長谷川裕一の『轟世剣ダイ・ソード』が好きな人は、これも好きかもしんない。

「経験を積むってのは、なにものにも替えがたい資産なんだ。僕たちは生き延びた。だから、次はもっと上手くやる」
 赤羽玖朗の言葉。

 没になったタイトル案に「生徒会の生存」というのがあったそうです。そりゃ、まずいわなあ。いや他の案もかなりまずいです……。

【円環のパラダイム】【瀬尾つかさ】【一葉モカ】【八岐大蛇】【寄生種】【ゲートワールド】【パッチワーク】
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