付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「二人の女王」 ヘンリー・ライダー・ハガード

2009-12-16 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 日本には「船頭多くして船山に登る」ということわざがあるけれど、物語にほぼ同格の支配者や経営者が複数登場したら、分裂騒ぎになることは約束されているようなものですが……。

 一人息子を亡くして悲嘆に暮れていた狩猟家アラン・クォーターメンを、友人のヘンリー・カーティス卿や退役軍人ジョン・グッド大佐が暗黒の大陸アフリカへと探険の旅へと連れ出す。
 苦難の末ようやく行き着いた秘境の奥には、美しい双子の女王ニレプタとソレイスの支配するズ・ベンディ国があった……。

 『宝島』のスティーヴンスンのライバルであり、コナン・ドイルが目標とした冒険小説の大家ハガードが描く秘境冒険小説『ソロモン王の洞窟』の続編です。
 映画『リーグ・オブ・レジェンド』の公開に合わせて復刻された際に表紙が変わりました。旧版(右)は映画ポスター的なバタ臭い美女2人で、いかにも仲が悪そうですが、新版は日本的なセンスの美少女2人でいかにも仲の良い姉妹に見えます。物語の先の展開を知って見ると心が痛いですね。ビフォー・アフターといった感じの新旧表紙です。

【二人の女王】【H・R・ハガード】【末弥純】【山本耀也】【骨肉の戦い】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「午前零時のサンドリヨン」 相沢沙呼

2009-12-16 | ミステリー・推理小説
「自殺ってそういうことだと思う。死んだら、誰にも言い返すことなんてできないもの。もう生きている人間にすべてを丸投げして、あとはなにもしないで閉じ籠もっているのと同じよ」
 そんな逃避は赦さないと八反丸芹華。

 「さて次の企画は」で紹介されていて面白そうだったので、『午前零時のサンドリヨン』を購入。同時に頼んだ初野晴の『初恋ソムリエ』はbk1在庫切れ。野村美月とか似鳥鶏とか、今年は高校を舞台にした日常系ミステリの面白い本にいろいろ出会えて良かったな。

 教室では寡黙でひとりぼっちの少女・酉乃初だが、放課後のアルバイトでレストラン・バー『サンドリヨン』に立つときは凄腕のマジシャン。人間関係には臆病な酉乃だったが、そんな彼女に一目惚れしてしまったポチこと須川くんのせいで、ひっくり返った図書館の本の謎やら幽霊騒ぎやら、なんだかんだと不思議な事件に巻き込まれていく……。

 読後最初の感想は「やっぱりポチはポチだ」。
 それなりに読書家で、気になる女の子がマジシャンだというのに、脱出王フーディーニの名前も聞いたことがないとはなんたる不勉強。結果オーライだから良いものの、単に話をする口実欲しさに女の子をトラブルに巻き込むだけの傍迷惑な男……になりかけていたよ? 選評の「ラムとあたる」という比喩に納得。
 彼に限らず、一見したらわからないけれど、登場する少年少女の間には行きすぎた愛憎がぐるぐる渦巻いていて、人間関係の鳴戸の大渦巻きやーっ!……くらいの話。この愛憎を鍵にして小さな鎖がつながっていき、全体で起承転結が利いてくる連作ミステリ短編集。確かに巧い。

【午前零時のサンドリヨン】【相沢沙呼】【マジック】【フラリッシュ】【自殺】【いじめ】【ライトノベル】【鮎川哲也賞】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする