付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「魔法の使徒」 マーセデス・ラッキー

2009-12-08 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「戦には“いい”ところなど何ひとつありはしない。戦闘に“華々しさ”など何もない。戦が意味するものは、おまえやおれの愛する人々が死んでしまう、それもおそらく無意味に死んでしまうだろうというだけだ。生き永らえた者も体が不自由になるだろう。それなのに戦を始めた愚か者どもは城の高みにのんびりとすわって、自分たちが失った資産を取り戻すための策を練るだけだ」
 <星の風>の言葉。でも、そんな難しい言葉で語っても、幼い子供には理解できないでしょう。 

 武門を誇る領主の跡取り息子ながら華奢な美少年として生まれ、剣より歌や書を愛するヴァニエルは当然のことながら父親に疎まれ、都で<使者>を務める叔母サヴィルのもとへと送り出される。
 そこで彼は<使者>訓練生の少年タイレンデルと出会うのだが……。

 ヴァルデマール年代記の他の作品で伝説の<魔法使者>として何度も言及され、時には幽霊として登場しているヴァニエルの生涯を描いた3部作の1冊目です。
 序盤のゆったりした展開に、いったい話がどこまで進むかと思っていると章を追うごとに加速して、最後は一気呵成に最後の戦いと目覚めに向かいます。ヴァルデマール年代記の中にはなかなか読み続けるのに気力が必要なものもあるのですが、これは読むのが楽しかったですね。主人公はひねた美少年だけれど……。

【魔法の使徒】【最後の魔法使者1】【ヴァルデマール年代記】【マーセデス・ラッキー】【BL】【温泉】【イヤボーン】
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「人外魔境の秘密」 横田順彌

2009-12-08 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 明治から昭和初期にかけて「天狗倶楽部」と呼ばれた一団が活躍しておりました。テニスからボート競技までなんでもこなす親睦団体というと、どこぞの大学のナンパなサークルみたいな気がしますが、こちらは硬派も硬派。日本プロ野球誕生の原動力とも言われるくらい特に野球への入れ込みが有名で、『海底軍艦』の著者である冒険小説家の押川春浪を中心に、東京朝日新聞社や「野球害毒論」を唱える新渡戸稲造と厳しく対立したことでも知られています。
 その天狗倶楽部を主人公に、コナン・ドイルの「ロスト・ワールド」の後日談をやろうというのがこの話です。

 ジャングル奥深くに隠された台地の謎を解き明かさんと、押川春浪率いる天狗倶楽部の面々が探検隊を組織し、南米へと向かう。その行く手に現れるのは、ドイツ人の間諜、そしてチャレンジャー教授だった……。

 「天狗倶楽部」シリーズとしては第2弾。前作では火星人とも戦いを繰り広げた天狗倶楽部ですが、今度は今なお太古の恐龍が跋扈する人外魔境に挑むという、痛快無類の冒険活劇。こういう話が成立するのは実際に彼らが行動力を持った硬派……というかバンカラ集団だったからであり、職業や身分の上下関係を超えた交遊によってさまざまなアイデアを実現していったという実績があればこそです。
 
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