付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「シャーロック・ホームズ もうひとつの読み方」 木村申二

2009-12-25 | ミステリー・推理小説
 名探偵ホームズの捜査方法や彼自身の能力を企業の管理者として見た場合にどう評価するか?という、どこぞのビジネス書でよく特集している「戦国武将から経営術を学ぶ」みたいな本です。まったくホームズ関連書は奥が深いです。

『神意というものは人からその持つ力を引き出すと信じて良かろうが、人のほうもその力を出し切って、神意に添わんと努力することが大切である』
 後悔しないよう、やるべきことはやるべきときにやれと、コナン・ドイル自伝より。

 企業の管理職として何が必要なのか、それをホームズがいかに持ち合わせているかを原典からピックアップし、業務知識、思考力、行動力、性格、体力、気分転換法などについて紹介し、検討を加えています。
 タイプライターの打ち方で機械の差ではなく個人差が出るのかとか、筆跡で年寄りか若いかといった年齢まで検討がつくのかといった知識面での疑問についてはさておいて、としているところは愛嬌。知っていて知らんふりではなく、「それはそれとして」とわざわざ指摘した上でスルーするところがよろしい。時代性というものもあって、それは無視できないことですから。
 大事なことは知識を蓄え、観察し、推理し、これと決めたら機会を逃さず実行し、もちろん結果に対しての反省も怠ってはならない。確かにそうした資質については十分でしょう。
 でも、ホームズという人は基本的に集団行動に向いていないと思います……。

【シャーロック・ホームズ もうひとつの読み方】【木村申二】【煙草の灰】【足跡】【論文】【ビジネス書】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「シアター!」 有川浩

2009-12-25 | アイドル・声優・芸能
「人間が何かを諦めるのに必要な条件って分かる? 全力でやって折れることだよ」
「守銭奴けっこう! 金は正義だ!」
 後に『シアターフラッグの鉄血宰相』と呼ばれることになる会社員・春川司の言葉。

 今まで一般向け文庫を持たなかったアスキー・メディアワークスがエンターテイメントにジャンルを絞ったメディアワークス文庫を創刊。その第一弾ラインナツプの看板作家が有川浩。どれくらい看板かというと、創刊当日の名駅前三省堂に特設ワゴンコーナーができていたけれど、有川浩1人で他の7人分の売り場を埋めてました。確か、他の7人が平積み2列に対して16列くらいはあったかな。

 司は怒っていた。採算を度外視しても良い物、好きな物を作りたいという父親似で道楽者の弟・巧に。そして価値観が他の世界とはまったく違っていて、やればやるほど赤字という演劇界の構造に。
 小劇団「シアターフラッグ」の300万円の借金を立て替える条件に司が巧に突きつけたのは、2年間で劇団の収入で完済すること、できなければ解散しろという条件だった……。

 基本は演劇ドラマなんだけれど、行きがかりから劇団の金銭管理いっさいを引き受けることになる春川司を軸に話が進みます。どこまで劇団員たちと親密になっても、最後の感覚は共有できない。それを寂しいとは思うけれど、そうなりたいとは思わない。そんな司の節度を持ちつつなりふり構わないマネージメントの光景に拍手喝采してしまうのは、自分もやはりこちら側の、夢で飯は食えないと思う人間だからでしょう。
 でも、本当にその守銭奴ぶりに笑わせてもらいました。単なるケチじゃない、目一杯切り詰めながら必要なところにはここぞとばかりにつぎ込む有能な事務方の活躍するお話です。みんなでわいわいやりながら何か1つの事をやり遂げる話って面白いですよね。

【シアター!】【有川浩】【大矢正和】【演劇】【声優】【物販】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする