付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「金星の尖兵」 エリック・F・ラッセル

2009-12-23 | 破滅SF・侵略・新世界
「個人の人権が奪われそうなときには、個人の自由がまだあるかどうかたしかめたかっただけさ」
 ウェイド・ハーパーの皮肉。

 1980年4月、精神感能力の持ち主であるウェイド・ハーパーは瀕死の男の悲鳴を察知した。パトロールカーの警官が殺されたのだ。
 自らの能力を隠しつつ州警察と共に捜査に当たることになったローバーは、犯人が宇宙飛行士に寄生した金星の高等生物であることを突き止めるのだが……。

 1980年が四半世紀先の未来だった頃の作品。表紙絵だけ見ると宇宙探検SFのように思えるけれど、全然違いました。『Xファイル』というか『地球への追放者』というか『反逆者の月』。地球に潜り込もうとしている異星人をみつけ、狩り出そうとする男たちの戦い。問題はテレパスである主人公は金星人の潜入を察知したことから政府に協力することになるのだけれど、自分の能力を知られた以上、政府だって油断のできない敵に回る可能性があるってところがミソです。

【金星の尖兵】【エリック・フランク・ラッセル】【ビールス】【フランソワ・ヴィドック】【髄膜炎菌】【ウェンドの自由】
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「製鉄天使」 桜庭一樹

2009-12-23 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 表紙デザインからも推測できるように、日本推理作家協会賞を受賞した『赤朽葉家の伝説』と対になる作品。といっても、後日譚とか外伝ではなく、作中に登場する2代目の赤朽葉毛鞠が自らの体験を漫画化した『あいあん天使!』を、さらにノベライズしたもの。言ってしまえば、毛鞠のパートを再話したものなのだけれど、不思議で荘厳なイメージだった『赤朽葉家の伝説』よりも、人を食ったような部分が強調された話になってます。なんというか、ヘン?
 いかにも日本の映画会社が製作に乗り出しそうな話だけれど、中途半端に手を出されてチープな出来になるのが見えています。『赤朽葉家の伝説』を映画化するなら監督は故・岡本喜八と言いたいが、こちらはいっそ香港映画として作ってもらうべきじゃないか。いや、もっと言うなら舛成孝二監督でOVAだ!……そんな感じのレディースによる中国地方統一の物語。

「みなさん、知ってます? 説明書を読めば、世の中のたいがいのことは大丈夫なんですよ」
 <パン屋のオンナ>こと<通りすがりのレディ>の言葉。なんというかアムロがマニュアルを読んだらガンダムを動かせたというレベルの話。

 1970年代から80年代にかけて中国地方に猛威を振るった少女たちの一団があった。レディース<製鉄天使>。
 その初代リーダーであった赤緑豆小豆の物語を、まだ赤いランドセルを背負いながら彫刻刀を振り回して血の雨を降らせていた時代から、世界統一のその後までを描く……。

【製鉄天使】【えいえんの国の丙午】【桜庭一樹】【レディース】【丙午】【鉄使い】【紙使い】【徳川埋蔵金】
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