付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「赤朽葉家の伝説」 桜庭一樹

2009-12-10 | ミステリー・推理小説
「青春がいつ終わるか、わたしわかったヨ。……取り返しのつかない別れがあったときさ」
 レディース<製鉄天使>の頭、赤朽葉毛鞠の言葉。

 この作者は「GOSICK」とかのライトノベル系の作品でしか知らなかったので、いつの間にか吉川英治文学新人賞とか日本推理作家協会賞とかに名前があがるようになっていて、ちょっとびっくり。ちょっとしかびっくりしないのは、もともとライトノベルだろうが文学だろうが9割はクズで、残りの1割はジャンル区分に関係なく面白いと思ってたから。
 最近はライトノベルから一般の文芸やSFにスライドする売り方が増えてきましたね(やっとこさかな)。

 製鉄業で財を築いた鳥取の旧家、赤朽葉家には秘密があった。不思議な千里眼で一族を陰で支えてきた万葉は、かつて「山の民」に置き去りにされた娘だったのだ。
 村の若夫婦に引き取られた少女はやがて赤朽葉家へと輿入れし、製鉄業の隆盛、戦争、高度経済成長、バブル崩壊を乗り切ろうとする中でさまざまな幻視を見る。それは避けようとしても避けることのできない人の生と死。
 その万葉の娘、毛毬は知らぬ者のない伝説の不良少女となり、やがてかつての自分たちを引き写したような不良少女たちの姿を描く少女漫画家となって一世風靡するが、その娘である瞳子は個性の強い祖母と母の陰になり、自分が何者なのか決められないニート。
 この3人の女性を中心にした旧家の盛衰と、そこに隠された1人の死の物語。

 この話については、二代目の毛鞠の生き方が面白かったかな。壮絶。最初ミステリーか伝奇かと思って読み始め、普通の文芸でないかなと思い始め、発行元を確かめ「創元でも最近、ミステリー外に手を出しているからなあ」と思いつつ、読み終えて「もしかしたらミステリーだったのかも」と考え直してググッてみたら日本推理作家協会賞作品。ふうん。テーマは特殊だったけれど、普通に桜庭一樹でしたよ。(2007/09/06)

 この作品中に登場する毛鞠のデビュー作であり遺作となった『あいあん天使!』がノベライズされて『製鉄天使』として刊行されたということで、つい書架から取り出してしまった『赤朽葉家の伝説』を読んでしまったよ。風邪気味なのに、手つかずの新刊が山ほどあるのに……。(2009/12/10)

【赤朽葉家の伝説】【桜庭一樹】【サンガ】【レディース】【製鉄】【現代史】【たたら火】
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「パーム 蜘蛛の紋様1」 獣木野生

2009-12-10 | その他フィクション
「人生はしっちゃかめっちゃかな壁掛けみたいだな。神様はとてもまともな織物師じゃない」
 ジャズピアニストのレイフ・オーガスの言葉。

【パーム30】【蜘蛛の紋様】【獣木野生】
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「ちんぷんかん」 畠中恵

2009-12-10 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「人が側からいなくなるのって、なんて寂しいんだろう?」
 同じ主旨の言葉を、昨日2つ読みました。1つは『ちんぷんかん』、もう1つは『PALM』。今までそこにいた人と気軽に別れてそれっきり再会もできないなんて悲しいことです。日本人はそこで「一期一会」という言葉を見つけたわけですが……。

 もともと病弱な若だんなとはいえ、近所で起きた火事の煙を吸っただけで昏倒とはいかがなものか。気がつけば、懐に潜り込んでいた鳴家たちと共に三途の川岸に立っていて……。

 妖怪時代小説「しゃばけ」シリーズの第6弾。やっぱり短編集の方が読んでいてホッとします。長編だと若だんなが話に決着がつく前に死んでしまわないかと気が気じゃありません。
 今回は、虚弱な若だんながついに冥土に行く話、若き日のおっかさんの恋物語、本に閉じこめられる“ゴボウ”の顛末、兄・松之助の縁談話、桜にまつわる出会いと別れの物語など。

【ちんぷんかん】【畠中恵】【式神使い】【賽の河原】【生玉子】【桜】【縁談】【狸】【呪的逃走】
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「悪魔の機械」  K・W・ジーター

2009-12-10 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 「スチームパンク」と呼ばれるジャンルがありまして、万能の動力源として蒸気機関が普及した世界を描くのが特徴とされています。舞台はヴィクトリア調が望ましく、飛行機でも車でもロボットでも水蒸気の力で動かす社会の物語。真空管やバネ歯車でも可……といった感じ。レトロなイメージの古い機械じかけだけで現代でもビックリの機械が動く社会の面白さが醍醐味ですね。
 その名前のもととなったのが、この『悪魔の機械』。あとがきによれば、この本の書評に対して「スチームパンクとでも呼んでくれればいいよ?」とジーターがコメントしたのがスチームパンクの最初なんだとか。

 時計職人ダウアーの父は天才発明家だった。
 ジョージ・ダウアーは不肖の息子だった。はっきり言ってドジでバカである。
 しかし、そんなダウアーのもとに、父親が作ったという得体の知れぬ機械を修理して欲しいという仕事が舞い込むのだが、依頼者もまた得体の知れぬ黒い肌の怪人だった……。

 ヴィクトリア朝イギリスを舞台に繰り広げられる怪事件の顛末は? そして人類の命運は?……という話ですけれど、一般的な定義のスチームパンクじゃないですね。マッド・ヴィクトリアン・ファンタジーではあるけれど、主人公のマヌケさ加減が良い感じで海底人たちがかわいそうです。

【悪魔の機械】【K・W・ジーター】【ハヤカワ文庫FT】【スチームパンク】【海底人】【時計職人】
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