付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「インナーネットの香保里」 梶尾真治

2009-12-04 | その他SF(スコシフシギとかも)
 小学生対象の青い鳥文庫ですが、定番の児童文学や名作ばかりと侮ってはいられません。こういうシリーズの定番でもある『怪盗ルパン』や『巌窟王』だって元は立派な大人向けの作品。上橋菜穂子や宮部みゆきの作品が含まれていたって何の不思議もありません。昔、私らあたりは岩崎書店の名作SFシリーズやポプラ社の少年探偵シリーズなんかを読んで育ちましたが、今はこういう新書サイズのジュニア文庫で育っているんでしょうか?
 イラストレイターもかなり今風になっています。もちろん昔ながらのいかにも「児童文学」「童話」「むかし話」的なオーソドックスなものも少なくありませんが、ライトノベル調のものも目立っています。30年前と同じイラストの『だれも知らない小さな国』や『ムーミン谷の彗星』と並んで緒方剛志イラストの『ねらわれた学園』やHACCANイラストの『赤毛のアン』が並んでいるのはある意味壮観です。
 調べてみると、CLAMPとか藤田香とかにしけいことか見覚えのあるイラストが並んでいます。眉村卓の作品はどれも緒方剛志の絵になってますね。定番を大事にしながら新風もしっかり入れているといったところでしょうか。

「生きていれば、どんな奇跡だって起こりうるからね」
 インナーネット開発の深水の言葉。

 家出少女が出会った青年は、逃亡中の超能力者だった。家出少女と青年は追っ手を振り切りながら九州を目ざした……。

 梶尾真治です。鶴田謙二のイラストです。迷わず買うしかありません!と新刊で即行購入したくせに、いつの間にか子供の本棚に紛れ込んで5年間放置とは情けない……。

【インナーネットの香保里】【梶尾真治】【鶴田謙二】【青い鳥文庫】【山童】【白鳥山】【森の少女】
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「ぐらシャチ」 中村恵里加

2009-12-04 | その他SF(スコシフシギとかも)
「理解するために言葉があって、理解したいから言葉を覚えたのに……どうしてわからないことばかり増えていくんだろう?」
 ぐらの言葉。

 秋津島榛奈はある日、犬を散歩に連れて行った海岸で溺れた。巨大な大波に呑み込まれてしまったのだ。
 やっとのことで陸にはい上がった榛奈の前に姿を現したのは、シャチのような巨大な生き物だった。しかも、そいつは英語で話しかけてきた。
「あーゆーおーるらいと?」

 ごうてん、かわいそう……。
 凄い大傑作だと年間ベストに無条件に推せるとまでは言い切れないけれど、読み終わって満足して本を閉じることができました。たとえて言うなら、光瀬龍とか眉村卓の70年代ジュブナイルを現代に持ち込んだようなファーストコンタクト小説。今月の電撃文庫はけっこう実り豊か。
 もっとも、かつてのジュブナイルなら、少年は多少勉強はできなくても勇敢で運動神経が良く、少女は聡明でしっかりものというのが定番だったけれど、この作品の主人公の少女は、うっかり八兵衛やサザエさんが1位2位を争う日本うっかりランキングのベストテン入りは間違いないといううっかりもの。そして、そうでなければこのファーストコンタクトは成立しなかったわけですが、それにしたってもう少しなんとかできなかったのかと思わないでもありません。“頼りになる大人”も出てこなかったしね。昔は、少年少女の冒険の尻ぬぐいをするのは、博士とか先生とか経験を積んだ頼れる大人の仕事だったのに。
 もう1つ気になるのは、結局オカリナとウクレレが物語の進行に何の影響も与えなかったということかな。

【ぐらシャチ】【中村恵里加】【双】【ファーストコンタクト】【光学迷彩】【ボーイ・ミーツ・ガール】【グラシャラボラス】
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