付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「未来のおもいで」 梶尾真治

2009-12-18 | 時間SF・次元・平行宇宙
 世間の喧騒を逃れて登った白鳥山で滝水浩一は、雨に降られて見知らぬ女性と雨宿りをする。
 一緒に雨宿りをしてコーヒーを飲んだだけの相手が忘れられなくなっていることに気づいた滝水は、彼女の忘れものの手帳を手がかりに自宅を訪ねてみるが、そこで知ったのは彼女がまだ生まれていないらしいと言うことだった……。

 これもSF作家の加塩さんが脇役で登場する、フィニィ・タイプの作品です。1冊本になっていますが、活字が若干大きめかつ行間が空いているためなので、普通に活字を組めば中編サイズ。こういう時空を超えた男女の交流の物語は飽きません。

【未来のおもいで】【梶尾真治】【キルロイ】【コーヒー】【時間旅行】
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「彩雲国物語 暗き黄昏の宮」 雪乃紗衣

2009-12-18 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 神仙がいまだ出没する時代の女性官吏の物語も、いよいよ最終章らしいですよ?
 確かに物語も佳境というか、主人公グループはどいつもこいつも苦境に陥ってますから、ここが佳境でなかったらどこまで落ち込むんだ、こいつら?ということになります。夜明け前がいちばん暗いと信じましょう。

 彩雲国初の女性官吏、秀麗の天命は(文字通りの意味で)尽きようとしていた。
 若き国王、劉輝を取り巻く状況は確実に悪化していた。信頼すべき者は失脚し、宮廷内も地方の役所においても貴族派が着実に勢力を拡大していた。そこに不正などはない。国王が政事をないがしろにしていたツケが回ってきただけなのだ。
 そして国王派の切り札となるべき、王に忠誠であり有能な唯一の官吏、秀麗は彼らのよかれと思った行動の結果、切り捨てられることとなってしまった。
 そんな状況下で地震が勃発し、飛蝗害が発生しようとしている。
「これからどんどん悪くなっていくばっかりになるぞ。あんたらの節穴が映さなかったものを見て、かわりに助けてくれた紅秀麗はもういないんだ」

 覆水盆に返らず。誰が敵で味方か、ではなく、敵でないのは誰か?という四面楚歌ですが、極端な「悪人」というのは出てこない話です。主人公側に感情移入して読めば憎い相手であっても陣営が違うだけで、その属性はあくまでローフル、法と秩序。感情にまかせて突っ走る、日本のアニメやコミックではよく見るタイプの主人公サイドはみんな敵になっても仕方がありません。そんな状況下で、あくまで「一般市民を守るために手続きに従って組織を利用し、滅私奉公で仕事する」というスタンスがぶれない秀麗はやはり異色のヒロイン。病の床についているのも、出生の秘密云々はあるけれど、基本的に過労死寸前ってことだし。
 そもそも、ヒロインが王子さまと結ばれたらバッドエンドという話はあまり多くないと思います。
「長い、道だったな。楽な人生ではなかったな。だがやり直したくないといった、その言葉こそ何より尊い」

 そして、ついに秀麗が目覚め、官吏として最後の職務に挑み始めます。(2009/12/06,12/18改稿)

【暗き黄昏の宮】【彩雲国物語15】【雪乃紗衣】【由羅カイリ】【職務放棄】【神仙】【ふられ男】
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「妖怪アパートの幽雅な日常(2)」 香月日輪

2009-12-18 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
『必要な場所への根回しには、金と手間は惜しむな』
 一癖も二癖もある不良を手玉にとる長谷泉貴の主義の1つ。

 高校2年になったのをきっかけに、稲葉夕士は妖怪アパートへ帰ってきた。
 賄いのるり子さん、託児所で保母として働いているまり子さん、童話作家の一色さんに病院でバイトをしている高校生の秋音ちゃん、国籍不明の「骨董屋」に魑魅魍魎もよけて通る龍さん……。あいかわらず人間らしい妖怪や幽霊がいて、怪しさ大爆発の人間が住み着いている寿荘は夕士を暖かく迎え入れてくれた。
 そして夕士と同じ日に、これまたひょっこり帰ってきたのが「古本屋」だった。

 魔道書に取り憑かれて一騒動の一幕。とはいえ本筋は食わせ物の少年2人の友情物語。そして、それ以上に、お酢でさっぱり牛肉のアスパラ巻きとか海老のすり身入りあんかけだし蕎麦とかキャベツのぬか漬けとかトコブシの醤油焼きとか、料理小説かと思うくらい、あれこれ料亭もびっくりの家庭料理が美味しそうなんです……。

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