付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「ソロモンの桃」 香山滋

2009-12-02 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 秘境探検モノを集めていた時期に、「だったら香山滋は基本だろうが!」と手に入れた中短編集。

 「ソロモンの桃」はソロモン王の秘宝を求め中国奥地の死の砂漠ダンガへと向かう動物蒐集人の「私」を主人公にした冒険譚。珍獣パンダが砂漠に棲息していたりするあたりに時代を感じます。この当時は、パンダそのものが正体不明のUMAだったんだなあ……。
 「怪異馬霊教」は陸奥の山村を舞台にした作品で、当時の陸奥を秘境と言ってはいけませんが、金田一耕助でも登場しそうな古い因習の残った世界での物語。
 他に北京原人を巡る怪奇譚「白蛾」、画家と人妻の不倫をテーマにしたミステリ「殺意」、青い蝋燭を巡る幻想譚「蝋燭売り」を収録。ドロドロの人間模様が目立ちます。「怪奇と幻想」あるいは「ミステリー」で何もかもひとくくりにされていた時代です。

【ソロモンの桃】【香山滋】【パンダ】
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「コトノハ遣いは囁かない」 木村航

2009-12-02 | 学園小説(不思議や超科学あり)
「あーあー。本日は消滅なり。本日は消滅なり。死役所からのお知らせです。あなたの一生は抹消されました」
 細木然葉は囁かない。ハンドマイクの拡声器で叫ぶだけ。

 中学卒業の打ち上げで行ったカラオケルームで、突如友人が怪人化して神名結貴(ゆうき)に襲いかかった。人間の欲望や願望に取り憑くナイトメアが実体化したのである。
 魔法使いのような奇妙なコスチュームの然葉(さらば)と幼馴染みの真弥(まや)に助けられた結貴は、学園伝説研究会アウェイカーに入部してナイトメアを狩ることになるのだが……。

 2日続けて、コンプレックスのような負の念によって怪物化する高校生というコンセプトの話を読んでいる気がします。ただ、料理法が違いますから、あまり気にはしないで純粋に物語を愉しめます。
 異形化する高校生に美少女を含む高校生グループが挑むという、学園退魔モノの王道パターンですが、そこは木村航なので魔女装束にメガホンを手にした美少女、才色兼備な有力者の孫娘、気弱な男子高校生といった、ある意味“基本”を抑えつつ、人間の心の弱さや醜さもきっちり描いた上でエンタテイメントに料理しています。無駄な配役もありません。そのあたりは手堅いし、徹頭徹尾、人間の嫌な面、負の心を前面に押し出して話を進め、最後の最後でちらっと希望を持たせて締めてくれるのです。

【コトノハ遣いは囁かない】【木村航】【CH@R】【ナイトメア】【花粉症】【携帯電話】【電子掲示板】【実験場】【付喪神】
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