静岡文化芸術大学の学長になられた川勝平太氏の講演を聴く機会があった。
『美しい国』というと、安部首相が提唱されているが、具体的なイメージがさっぱりわかなかった。川勝さんのお話を聞いて、こういうイメージもあるのかと、感心した次第。講談調でお話いただけるので、面白い。3~4次元的に、これまでの世界の中の日本を見て、これまた、3~4次元的に、将来の日本の姿を見せていただいた感じがした。勿論、川勝さんの私見ではあるが。
元々この静岡文化芸術大学は、高坂正堯氏の提唱によりスタートし、急逝された木村尚三郎さんが、学長をされ、川勝さんが引きついだ。
高坂さんは、若い時、国家の三つの条件として、①力の体系(軍事)、②利益の体系(経済)、③価値の体系(文化)を説いたそうだ。
日本は、文明開化以降、富国強兵政策により、いち早く①を達成。WWⅡで敗れた後、経済大国を目指し、GNP世界第二位となり、②も達成。そして、80年代以降③のステージにあると考え、当大学設立の構想を立てたという。慧眼と言えよう。
日本の文化の受け入れ方にも、面白い見方をされていて、基本的には、江戸時代以前の文化は、中国を通して流入したものが多いが、平安時代以前は、隋唐という、中国北部からの輸入、元ができた鎌倉時代以降は、南に逃れた中国南部(南宋)からの流入が中心になったという。その文化は、日本の中で、東から西に伝播したが。中国北部は、小麦文化で、中国南部は、米文化。違った文化が、日本でも、西と、東に伝わり、その後、融合した。東でも、西でも、中国文化を、日本的に、大きく進化させている。ひじょうに、ユニークな存在なのだ。
そして、近代になると、横浜の港を通して、欧米(特にイギリス)の文化が、急速に流入し、あっというまに、列強の一国となった。日本国内の文化の傾向として、西が東洋文明、東が西洋文明という様相となり、文明の箱庭的な様相を呈することとなった。ユニークさが、倍増されたと言える。
”美しい国”という言葉は、主観的な言葉で、定義は、不可能だが、”行ってみたいなと思わせるような国”ということではないかという。ユネスコ世界遺産もだんだん、文化的景観という定義で、遺産指定を開始している。そういう目で見ると、日本は、まさに”世界の箱庭(Garden Islands)”だ。
日本は、奈良時代、平安時代(京都)、鎌倉時代、室町時代(京都)、江戸時代、明治時代以降(東京時代)と、時代名に、首都名を使う特殊な国だという(そのほかでは、タイぐらい)。東京が長い間首都になっているので、そろそろ変える検討をするべきタイミングとなり、一時期那須野が候補地となったが、今は、頓挫している。
一方、道州制の議論がされている。川勝さんの私見では、道州制というよりは、地理的環境から、日本を4つに分けてはどうかという。東北以北を”森の国”、関東を中心とした”野の国”、中部地方を中心とした”山の国”、関西以西の”海の国”。ここまでくると荒っぽいが、ユニークで面白い。
各々の首都は、洞爺湖近辺(2008年サミットの候補になっている)、首都圏のどっか、美濃地方、瀬戸内海のどっかの島。ウゥーン。
百年単位で、日本を考えるべき時が来ているのかもしれない。