日本がアメリカに次いで、GDP世界第二位になったのは、いつのことだったろうか。
Japan as No.1の本がはやったのもそう昔のことでもないような気がする。
ところが、いつの間にか、China as No.1 なる時代がもうすぐそこに迫っている。
本書は、中国の経済分析、発展の様子を冷静に客観的に明快に説明してくれる。
中国の場合、熱烈支持派と、毛嫌い派が別れるが、どちらにも一度読んでもらいたい本だ。
著者は、香港人だから、西洋と東洋の中間的な眼で、中国の近代化の様子を目の当たりにしてきた。そういった意味でも、本書は、貴重だ。
中国が日本のGDPを抜くのは、たぶん来年ぐらい。アメリカのそれを抜くのは、2026年ぐらいと本書は予測する(人民元の段階的な切り上げ効果も含めてだが)。
たぶんそうはずれはしないだろう。
今回のリーマンショックでも、中国は、打撃を受けたが、立ち直りも早かった。中国の対米輸出依存度は、見かけほど高くないのだという。資本市場も完全には、開放されていないので、米国の株式市場との連動率もかなり低い。
経済自体が大きくなっている上に、外貨準備高も巨大なため、アメリカ経済依存型の日本経済とは、大きく異なってきているのだ。
一方で、一人当たりのGDPは、まだまだ低く、平均寿命、乳児死亡率、第一次産業比率、都市部のエンゲル係数、一人当たりの電力消費量などは、約40年前の日本に当たるという。中国が公害や、資源の無駄使いで非難されているが、日本より40年遅れていると考えれば、40年先を行っている先進国の基準をそのままあてはめるのが酷だという議論も、あながち無茶苦茶とは言えない。
皮肉なことにこの中国の大発展をもたらしたのは、外資である。中国は、近代化を進めるにあたって、外資を活用し見事に成功。国力を飛躍的に増加させたのである。人民元の国際化、外資開放などに30年を要しているが、著者は、この時間のかけ方が、成功のキーであったと分析する。人民元など、ついこの前まで、外人向けの人民元と、国内向けの人民元を分けていた。覚えている人も多いだろう。
著者は、中国の政治形態についても、興味深い考察をしている。
外から見ていると、共産党による政治が続いているのにもかかわらず、中身は、こてこての資本主義で、なぜ矛盾しないのだろうと思う。
筆者は、これまでは、毛沢東時代に大きく遅れた近代化を進めるには、この方法がベストであったと論じるが、今後この体制を維持するのは困難で、韓国、台湾的な民主化の歩みをどこかで進めざるを得ない可能性を示唆する。その対抗馬(可能性)は、このまま中国モデルを追求する方法と、ロシアのようにドラスティックな改革を行う方法だ。
そして、その後は、台湾との統一の可能性もあると分析する。中国が現体制を存続する限りは、難しいが、民主化の方向をとった場合、平和的統一が可能と説く。武力統一の可能性もゼロではないが。その可能性は、年々低下している。
中国の経済って、どうなっているんだったけ? GDP第二位の地位を失う日本は、これからどうすればいいんだっけ?などと思っている人にお勧めの一冊。