かねやんの亜細亜探訪

さすらうサラリーマンが、亜細亜のこと、ロックのこと、その他いろいろ書いてみたいと思ってますが、どうなることやら。

昭和史

2009年11月27日 | Books



半藤さんの幕末史の話は、前に触れた。昭和史は、それより前の本であるが、文庫化され、売れている。昭和史を振り返るのにうってつけの本だ。

かなりフラットな立場と思われる、また生身で昭和のかなりの部分を体感した半藤氏の本書は貴重だ。長そうに見えるが、読むとあっという間に読める。単なる歴史書ではなく、ちょっと隠れていた話、個人的な話、歴史書には不似合いかもしれない卑近な話が、ほどよいバランスで配置されていて、読んでいて心地よい。講演録というからそう感じるのかもしれない。大学の講義と違って、講演は、聴衆を引き付けるネタが必要だから。

まずなるほどと思わせるのは、日本の近代化が始まって40年でピークを迎え、40年で敗戦し、すべてを失ったという大きな流れだ。終戦後の経済の波も似ている。この40年サイクルは、人の世代の移り変わりの反映でもあるのか。とすると、このバブル以降の日本の後退は、あと15年ぐらいは続くとなるが、どうか。逆に15年後また上昇が始まるとすれば、何がきっかけか。欧州型のこじんまりしたあくせくしない豊かな社会の始まりか。

戦争責任については、いろいろな本で議論されているが、本書は、昭和天皇が、若い時に、自分の意見を言ったことが政治に影響を与え、その反動から、政治に口をはさまなくなったというのが、戦争突入の大きな要因になったという。半藤氏の世代は、この意見が大勢だろう。ただ、冷静に考えると、これは、天皇が強大な権限を有するにもかかわらず、意見が言えないという明治憲法の矛盾をはらんだシステムそのものが機能しなかったということなのだろう。

日中戦争のきっかけとなった盧溝橋事件のきっかけは、日本軍が中国共産党に発砲させたという説を紹介している。この話は、ちょっと眉つば?

第二次世界大戦に深入りした理由は数多くあるが、ドイツが欧州を征するという根拠のない思い込み(信仰)が、他の選択肢を奪っていったという。ひどい話である。そういった意味でも、違った立場の人々が議論して事を進めるということがいかに重要であるかがわかる。

戦後の復興期の話では、ソニーやホンダに触れられている。今のアジアの様子に似ている。夢があふれる時代だった。私の幼少期は、その時期にあたる。ソニーがポータブルテープレコーダーを出したり、ホンダが初の四輪車を出したり、今の新しいゲーム機が発売されるのとは、桁の違う生活の変化が日常的に起こっていた。

ジャーナリストならではの、戦後政治の内幕話も面白い。

話題満載で、あげると切りがないが、読んで絶対損はない。これから歴史を学ぶ学生にも、ある程度歴史を知っている社会人にも。本書を軸に日本の現代史を見るとまた新たなアイデアがわいてくる。今を生きている日本人全員にお勧め。

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