チベット密教の本が面白かったので、ついでに、ヒンドゥー教の本も読んでみた。
チベット密教同様、わからない状況から脱することはできないのだが、その奥深さ、雰囲気が、おぼろげながら、つかめる。
本書を読むとわかるのは、まずヒンドゥ教は、宗教というよりは、インドの思想、哲学そのものだということ。あまりにも、長い歴史、幅広い分野。常人の理解できる枠を完全に越えている。
サイババさんなど有名だが、そんなの序の口。ちなみにサイババさんは、2020年に94歳で亡くなり、8年後に生まれ変わるのだそうだ。今のサイババさんも、シルディサイババさんの生まれ変わりだ。もちろんマハリシヨギさんも出て来る。
ヒンドゥは、5千年の歴史を持つが、アーリア人の宗教バラモン教という川に、各村落の土着信仰が流入し、ついで仏教、ジャイナ教を加え、やや時代がくだってからは、イスラーム教が流入し、という具合に、5000年をかけて流れの幅を広げていった滔々たる大河のようなものである。これが、容易には理解しがたい多面性、目のくらむような豊饒性を生み出した要因になっている。そのスタートは、インダス文明にあるという。
ジャイナ教というのも今一わからなかったのだが、不殺生戒を守るために、農業を避け、商業に従事する傾向が強いのだという。だから、人口に占める割合は低くても、ビジネスで重要な地位についている人が多いのだ。仏教とともに、反バラモンの宗教改革運動であった。
本書によると、五木さんがよく言う四住期は、バラモン教のマヌ法典に著わされているという。
宇宙創造の話も凄い。宇宙の根本原理でありブラフマンと、小宇宙であるアートマン(我)があり、それが、一つのものと唱えたのが、ウパニシャド哲学だ。「梵我一如」思想である。
何せ、ヴィシュヌ神の一昼日は、ブラフマーの百年で、311兆400億年なのだから。気が遠くなるレベルを越えている。チベット密教や仏教との共通点も多い。仏足石みたいな、ヴィシュヌ神の足跡もあるし、ヨーガの理論は、チベットの医術に通じる。
最後にインドの神々の紹介があるので、混乱した頭の整理も少しできる。
ヒンドゥ教にちょっとでも興味のある方への入門書として、最適な書ではないか。