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ヒンドゥ教の本を読んだついでに、インド神話の本も読んでみた。
かぶる部分もあるが、本書の方が、絵や写真が豊富で、理屈抜きで楽しい。
初版が1987年というから、本書もロングセラーだ。
著者は、その道のプロではないそうで、やや受け売りチックに感じるところもあるが、こっちは、もっと素人だから、問題ない。
インドの、あのめくるめく神々の世界にちょっと触れていたい人にお勧めできる本。
インドで、よく見かける神々の絵(私も土産の絵葉書で数枚持っているが)は、19世紀のラージャー・ラヴィ・ヴァルマーさんという人が、西洋画の技法を取り入れて描いたのが最初ではないかという。
この親しみやすい絵によって、インドの神々がいかに身近になったか。その効果は、計り知れない。日本の神様も沢山いらっしゃるが、なかなかヴィジュアルなイメージが定着しないので、覚えにくい。
サイババさんのことも載っている。サイは、ペルシャ語で「聖」、ババは、ヒンディ語で「尊師」の意だ。
ヒンディの神々というと、ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァが、その代表格。特にそのヴィシュヌの化身は、ユニークだ。化身としては、魚、亀、猪、人獅子、矮人、矢を持つラーマ、ラーマ、クリシュナ、仏陀、カルキ、ジャガンナータ、ガルダなど、まさにめくるめくという感じだ。古代から多くの神々を取り込みながら吸収してきた複合神だからというが、それにしても....
仏陀もヴィシュヌの化身になってしまっているが、その役割は、否定的という。ヴィシュヌが、仏陀として生まれたのは、アスラ達に間違った教義を広め、その力を弱めるためという解釈になっているのだという。
十面のカーリー神の絵も出て来るが、いかにもおどろおどろしく、The Beatles の”HELP"に出てきた、狂信的な宗教を思い出させる。彼らは、HELPで、インド文化に接する機会を得た。
人気のある神様であるクリシュナについて、面白い記載がある。ヒンドゥ社会における強力な異端ともいうべき仏教やジャイナ教が、ヴェーダの否定、バラモン批判の立場を明確にする中で、クリシュナ教は、それを踏まえたヒンドゥ教内部からの改革運動として一定の役割を果たしたようです。そういう考え方もあるんだ。
インドの神様に奥さんが沢山いるのも、ヒンドゥが勢力を伸ばす中で、周辺民族の神を、ヒンドゥの神々の親戚にしていった結果という。
本書では、ヒンドゥは、宗教というより、政治という印象を持った。