エコノミストのAN氏の新著が出た。3/1に書きあげたとあるから、大震災の寸前。
かつAN氏は、民間から、独立行政法人へ転身されたから、民間エコノミストとしては、最後の著になる。
大震災と、原発事故で、さらに大きなハンディを負った日本経済だが、根本的な問題は、ここ数十年に渡って積もり積もってきたもので、本質は変わっていない。AN氏は、思い切った提言をしているように見える。そのベースは、借金漬けの政府にこれ以上頼ることはできず、民活により、国を立て直していくしかないという決意である。
以下、私の備忘録代わりに、提言のいくつかを列挙してみる。
少子高齢化は、大きなハンディの代表だが、両立支援策、地方活性化によって、逆に、それをばねにした活性化を図れるのではないか。
財政赤字の原因は、歳入歳出両サイドにあり、その中で、大きく上昇している社会保障の見直しとのセットでの検討が必要。その中で、大きな政府、小さな政府、どちらを国民は選ぶのか。意思統一が必要。アメリカ型か、スウェーデン型か、どちらをめざすのか。目指すべきは、財政健全化と経済活性化を、市場競争とセーフティネット充実の成長戦略で、実現していくべきだろう。
デフレ脱却には、企業活力を高め、賃金をあげることがベース。そのためには、企業が強くなることが必要だが、それにより、退場した企業において失業が発生。失業者の教育、雇用の責任を国が持つセーフティネットを設けることが同時に必要。
これまでは、景気が悪くなると財政が出動し、景気が回復していく中で、不均衡が作りだされ、またバブルがはじけるの繰り返し。持続性のある経済成長システムのキーは、教育ではないか。日本の教育レベルは、ずるずると低下してしまったので、その立て直しは、急務。
現在の経済状況は、大恐慌時に似ているが、その際は、戦争が恐慌を吹き飛ばした。今は、戦争に頼れないから、産業革命を起こす必要がある。環境分野、生活革命がキーワードになる。
中国の成長は、日本の成長戦略。中国の今の経済状況は、日本の70年代とそっくり。中国ASEANコンビの労働集約型と、日本とNIESコンビの資本集約型がタッグを組むことにより、アジアの多国間行程分離が可能だ。
TPPは、経済活性化のポイント。バラッサさんの分類によれば、TPPは、自由貿易地域という経済統合度合の最初の一歩で、それから、関税同盟、共同市場、経済同盟、完全な経済統合と続く。アジアの場合、国力がかなり異なるが、TPPは、その中で、経済水準は、価値観が近い国が参加を表明しており、まさに、日本にとって最もワークする連携だ。EUに加わることにより、閉鎖的だったフランスも劇的に変身したという。
都市化率を上げることが地域経済活性化策になる。地域では、農業の生産性を徹底的に上げる必要がある。
小泉改革は、市場主義の導入が中途半端で終わったことの方が問題で、さらに小泉改革を進めれば、もっと生産性の高い、日本経済を作り上げることができたのではないか。
いずれにしても、大きな変化を起こさない限り、日本の将来は、暗い。暗いで済めばいいが、破滅に向かうリスクもある。
今回の震災を、大きな変化のきっかけにできないものかと、本書を読んで、感じた次第。
本の題名のごとく、今回の地震を、日本が変わる突破口にできないものか。