かねやんの亜細亜探訪

さすらうサラリーマンが、亜細亜のこと、ロックのこと、その他いろいろ書いてみたいと思ってますが、どうなることやら。

日本復興計画

2011年05月07日 | Books
浜岡原発の停止要請がなされたという。唐突であるし、どこまでその影響に対する配慮がなされたのかは不明だが、方向的には、正しい選択と言わざるをえない。福島原発よりも危険な原発であることは、明らかだからだ。大地震の確率にしても、津波の確率にしても。



大前研一さんが、"日本復興計画(Japan; The Road to Recovery )" を緊急出版された。
大前さんの本は、すぱっとわかりやすいし、私は、今でも、大前さんのいろんなアドバイスを実践させていただいている。

もちろん本書のテーマは、すぐ実践できるほど簡単なものではないが、方向感は、的を得ており、核心を突いているように思えるのだ。

本書に説得力のある一つの理由は、大前さんが、原子核工学で博士号をとられ、原子力推進派であったからだ。

大前さんは、震災直後から、ユーチューブでメッセージを発信し続けていて、最初の発表から、制御不可能になることを予測したという。今回の事故は、大前さんの常識を越えるものであり、その深刻さすら、政府や、東電は理解していないことがわかったからだ。

何故、我々庶民はわからなかったか。
TVに現れる解説者は、学者ではあっても、技術者ではないので、実態がわからないまま解説せざるを得なかったのだ。
ちなみに、大前さんは、MIT時代被曝しており、現在の放射能の危険性に対する政府発表は、概ね正しいという。

東電に対しても手厳しい。隠蔽体質は昔から言われていたが、今回のケースは、隠蔽ではなく能力不足ではないかという。技術畑の人は、原発のこれまでのトラブルで、東電には、いなくなってしまっていたのだ。現場の知恵は、失われていた。

大前さんは、これで、日本の原子力輸出政策は終わったという。日本で、原発を作ることも事実上不可能にもなった。反対運動の署名活動なども行われているが、署名活動を行わなくても、これから原発を作ることにOKと言える地方自治体長が、もはやいるとは思えない。スリーマイル島後、原発を30年造らなかったアメリカと同じ。アメリカは、クリーンエネルギーとして、原発再開を宣言したばかりだが、そのタイミングでこの事故は起こった。オバマさんも頭が痛いことだが、日本とアメリカでは、原発をとりまく環境が全然違うことは、十分理解する必要がある。

日本ほど、リスクの高い原発は、少ないという。津波リスクのある原発は、日本以外では、アメリカ西海岸のみであり、元々こんなに地震の多いところでの原発は、日本だけなのだ。
もっといえば、使用済核燃料の処理方法も決まっていない。自分で出した汚物を、全部自分で貯め込んでいる状態と表現している。水洗施設のないトイレと同じ状態なのだ。当初スタートした時は、どうにかなると思っていたのだろうか?
こう見ていくと、日本の原子力政策推進の際、日本の特殊事情が考慮されていたのかという疑問に突き当たる。

既に、今回の事故や、点検中で、原発の50%は稼働していないそうなので(壊れていたり、点検中だったり)、とりあえず、節電と既存の火力等をフル稼働しながら、リニューアブルエナジーへの転換を急ピッチで進めていくということだろう。原発の寿命は、いずれにしても、40年程度だから、それらのシフトが進むころには、今稼働中の原発も寿命を迎えることになる。

電力需要の分散については、4月からのサマータイム(もう5月だが)、週五日制の選択営業、夏の甲子園中止を提言。甲子園については、よくわからないが、前二者は、検討されていいだろう。計画停電については、経済活動への悪影響から、絶対反対の立場だ。

復興財源としては、期間限定の消費税を提言(例えば、2年、2%)。返済財源のない国債発行については、絶対反対。財政が破たんしたら、全てが、パー。

興味深かったのは、何故、こんなに危険な原発がOKだったのかということ?そこには、ラスムレッセンという人の確率理論があったという。リーマンショックの時の、ブラックスワンと全くいっしょ。格納容器神話も、もろくも崩れた。格納容器があっても、冷やし続けられなければ、OUT。

もう一つ興味深かったのが、国と東電の関係だ。今回の事故では、東電が主に悪者になっているが、本書では、元々国の原子力利用政策があって、東電は、その執行者にすぎないという。元々国がやるべき仕事を、一株式会社である東電が、やらされていたという構図だ。果たして、一株式会社が取れるリスクだったのか?
今後は、東電は、配電会社にするべきで、原子力発電は、国の事業にせざるを得ないとの考え。水道や、ゴミ処理は、公営だ。ガスと電気は、民営。その根拠は、定かではない。

日本の復興については、日本の復興計画をもたらすための道州制と日本人のメンタリティの変革を唱える。

ちょっと長くなったが、他にもいろいろな提言がたくさん。
これから復興段階に向かう前に、是非一読をお勧めしたい本。コンパクトなので、すぐ読める。
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