本書は、1984年が初版だが、カバーには、初訳より、26年とあるから、私が、生まれたころに訳された本らしい。
スッタニパータという、仏教のごく初期の仏典を訳したものだ。原始仏教と呼ばれている。
訳文は、いっそう読みやすくなりと書かれているが、やはり素人には難解。
本書の半分が注釈になっているが、いちいち注釈をめくっていたら、前に進まないので、とりあえず、ずっと通しで読んでみるのだが、散文的というか、ばらばらというか、詩的というか、まとまりがなく、全体像をつかむのは難しい。
五章構成だが、最初がいきなり蛇の章。それから、小なる章、大いなる章、八つの詩句の章、彼岸の道に至る章と続く五章からなる。
ただよく見ると、将来の仏典につながるフレーズも、散りばめられている。
先日の瀬戸内寂聴さんの話にも出てきた"犀の角のようにただ独り歩め”という言葉も出て来る。
注釈には、犀の角が一つしかないように、求道者は、他の人々からの毀誉褒貶にわずらわされることなく、ただひとりでも、自分の確信にしたがって、暮らすようにせよの意とある。
仏教が、最初は、そんなに秩序だったものでなく、散文的な教えの羅列から、時代を経て、整理されていったものであることがわかる。
同じく注釈には、経典の成立の略図がついている。
ゴータマブッダの説法
1、韻文または、簡潔な文句でまとめられた。
2、散文で説明された(アショカ王の時代)。
3、経典としてまとめられた。
4、三蔵(経・律・論)の成立。→5、現存パーリ語三蔵
4、三蔵(経・律・論)の成立。→5、サンスクリットに翻訳された→漢訳された。
4、三蔵(経・律・論)の成立。→6、大乗経典の成立→漢訳された。
4、三蔵(経・律・論)の成立。→6、大乗経典の成立→チベット訳された。
我々は、漢訳されたものから仏教を学んだのであるが、明治になって、他の語で伝えられた仏教に出会うことになった。実は、それは、我々が学んだ仏教よりも、古いものであった訳だ。
それがわかっただけでも、読んだ意味があったのかもしれないが、普通のレベルの人は、もう少し後の時代の、こなれたものを読むべきだろう。