
本書は、ずいぶん前に買ったのだが、積読になっていた。
2015年の発行。
洋泉社という出版社の本だが、洋泉社自体、宝島さんに吸収されているようで、本シリーズの続編は、もうないかもしれない。
この古代史研究の最前線シリーズは、これで3冊目だと思うのだが、小論文の寄せ集め。
たぶん編集者が、各研究者に、テーマ毎に寄稿をお願いして、とりまとめる方式で作っていると思う。逆にそれで、各著者の個性が出て、違った意味で面白い。
特に、アプローチ方法の個性が現れる。
ただ、みなさまプロの研究者なので、関さんのような頭の中で、思索を巡らすのではなく、新しい考古学的発見や、普段触れられない資料からの、議論の発展という形をとっている。
本書は、古代に栄えた(と言われる)様々な豪族を、ヤマト朝廷との関係を軸に、考察しているが、記紀で説明されているのとは裏腹に、かなり自由な連邦的なヤマトであったことが浮き彫りになる。
また、豪族と言っても、朝廷を浮き上がらせるために、作られた側面があり、実在性や、実際の実力がよくわからないケースも多い。
例えばよく取り上げられる葛城氏にしても、何等かの力があったにしても、その葛城氏を抑えたヤマト朝廷の強さを強調する足場に使われているのかもしれない。
本書では、蘇我氏に引き継がれたのではないかと推測している。
蝦夷にしても、本当にいたのか。東北にあった強権力を傘下に収めたヤマト朝廷の強力さを際立たせるための話ではないのか。
実際、その時代の東北では、ヤマト言葉が使われており、その時にはすでにアイヌ的な文化は、東北の北端か北海道に追いやられていたようなのだ。
記紀を読む時には、うなずきながら読んではいけないと、改めて思い知った?