CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】硫黄島 栗林中将の最期

2019-01-28 21:01:38 | 読書感想文とか読み物レビウー
硫黄島 栗林中将の最期  著:梯 久美子

「散るぞ悲しき」という有名な本がありますが、
その作者による、同著の補講めいた一冊でありました
本歌というか、そちらを読んでいないけども、
新書で読みやすそうだからと、手に取った一冊
なかなか感激して読み終えたのでレビウっておく次第

硫黄島の戦闘について、イーストウッドの映画で脚光を浴びたというイメージもありますが、
この激戦の指揮を執った栗林中将が、実際どうであったのか
ドキュメンタリとして追っかけた内容であります
様々な証言、資料をあたって、歴史を掘り下げていくという
歴史ルポのど真ん中という内容で非常に興味深い
これこそが、足で稼いだ記事というべきでないか
そう思うような内容であります

栗林中将がどれほど偉大な人物であったかと、
やや英雄にすぎるというところから発生したとも考えられる
中傷や、非難について、本当にそんなことがあったか、
たとえば、ノイローゼで実際は指揮していなかっただとか
そういう可能性を検証したりという部分も面白かったのでありますが、
その影でもないが、あまり語られることのなかった
青年将校たちの生き様であったり、
まったく知らなかったけども、半ば公然であったという、
人肉食についてのあらましなんかが、大変興味深く、
実際は父島で起きていた惨劇のようだけども、
飢えからではなく、もっと深遠からくる動機によって行われていたであろう
捕虜解体と食べるという倫理や、何もかもから離れてしまった所業について
書かれているのが衝撃でありました

これについては、裁判にもなり、実際のところが
かなり明らかとなっているようでもありますが、
本人がどうしてそう指示をしたのか
その部分についてはわからないままであるし、
わかることもないのであろうと
そんな風にも読めるところ
なんとも悲しいといえばいいか、恐ろしいことである

そして、皇室が硫黄島とどう関わっていたかについて
一部割いていたのも印象的でありました
とりわけ、美智子皇后のお心遣いや、失語という衝撃的な事件の裏側、
様々なことの解決というべきものが
硫黄島にあったのではないかというのが
大変よくよく読めたところでありまして、
ここについて、どうこうなどといえるはずもないけど
ただ、その姿と、ここに照らし合わせたのでなかろうかと
その示唆だけでも、十分にといえばいいのか、
凄い感動を催したのでありました
ただ、ここだけは、硫黄島というくくりを超えてしまっていると
感じなくもないのだけども、いい一章だったと思うのでありました

戦争の悲惨さなんて、ありていな感想であるわけもなく、
そこにあったことを検証するという行為について
この本から学んだ、それが一番心に残ったのでありました