【読書】まず良識をみじん切りにします

まず良識をみじん切りにします　　作：浅倉秋成

ちょっと嫌な感じの短編小説を集めたものだった
全部、ある意味で同じといっていいと思うような、
想像とか、妄想とかによって増幅されてしまう何かに突き動かされる話しで
どこまでも一人といっていいか、根元的な問題は一人というところに尽きるみたいな
そんな感じに読んだのだけども、
悪いことを考えすぎてしまうというのはよくないなと
改めて思い知ったというか、こんなことはなかろうと思いながらも
あるいはとか考えてしまうのでありました
全員考えすぎだし、そういう世界すぎる
行きたくない世界だ

そんなわけで、復讐劇であったり、追い詰められる話しだったり、
最終的にはなんかいい話しっぽかったりとか、
一種のミステリーホラーっぽさすらも感じる内容だったけど
初っ端から、表題作がぶっ飛ばしていく感じは
凄く嫌いじゃないというか、オチが絶対そうだろうなと思うままになっていくけど
そこまでの道程の長さとくどさとしつこさと、
このあたりが素晴らしいなと思いつつ読んだのである
その点においては、他のも似た感じだけど狂気というか、
勢いがこの作において、一番よい感じにスピードが出てたと
そんな風に感じたのである

とはいえ、他のも似たりよったりに、
なんとなく妄想的に追い詰められていく話しなんだが、
意外と、何かにこだわったばかりにもう後戻りできなくなるなんていうのは
身に覚えがある話しだという怖さもあったり、
あからさまに変なお話なんだけど、どっかわかるところが残されている
ちょっとだけ狂気が正気に戻っている部分があって、
そのあたりがとても楽しいと思えたのでありました
一線を超えるという一種の楽しさでもないが、
何かに突き動かされるというものは、小説化した場合
こういう表現になるな、なったなという納得めいたものすらあって
裏切りという表題ではあるが、そうでもない内容が
後味悪くも記憶に残る感じだったのである

倫理とかをぶっ飛ばすというほどでもないが、
やっぱり文字通り「良識をみじん切り」にすると出てくる感じが
全体的によく染みているように思えて
まずまず楽しく読んだのでありました
ショートショートにしては長いけど、
世にも奇妙な物語とかの脚本で15分とかやりそうな内容だと思ったのであった