CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】鯖

2019-03-11 21:20:24 | 読書感想文とか読み物レビウー
鯖  作:赤松 利市

ある漁船団に訪れた悪夢
そんな物語だったように思うのであります
なかなかに入り組んだ事件というか、
ある罠が仕込まれていき、それが発動するというべきか
ともかく、主人公の狂気と紙一重の思考と境遇と、
ふりかかる悪意や、陰謀といったものが、
勢いつけて流れ込んでくるような印象でありました

鬱屈した主人公、その視点から描かれるそれぞれの人物像、
このあたりが肝でありまして、結構な長編だけども、
描いていることは、どことなく、芥川賞的なそれというか、
人間の闇やら膿やら、なんかよろしくないものを
ありあり描いていたようで、読み応えたっぷりでありました

おんぼろ漁船で、団といいながら一隻だけ、
しかも、年寄りの所帯でどれもこれも酷いという有様の中、
それぞれが、その年齢までの技と何かを持っている、
だけどそれもまた、虚しいといえばいいのか、
それが、ことの大きな何かには
何一つ役に立たないというか、
本当に虚しいとしか思えないのがなんとも残念で、
滅び行くものが、最後に利用されて果てた
そう読むこともできたような
悲しいといえばいいか、形容しがたいものがたわる物語でありました

正直なところ、だいたいの黒幕やら、なんだかんだは、
早いうちからわかってしまうんだけど、
それはあまり大切なことではなくて、
そこに至るまでの団員、船員たちの考え方、行動が面白くて、
ずいずいと引き込まれたのでありました
人間ドラマというのが、小説では一等面白いと
改めて気付かされたようでもあって
なかなか楽しめた一冊でありました