皆さん、B 型肝炎ワクチン予防接種は、お済でしょうか。
水ぼうそうやおたふく同様に、任意のワクチンであり、自主的に受けるしかございません。
B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus; HBV)は、日常生活でうつる可能性があり、ワクチンで予防することが求められています。
いったんB 型肝炎ウイルスに感染しますと、一部でB型肝炎が引き起こされ、慢性B 型肝炎患者の10~15%が肝硬変、肝がんに進行するなど臨床的に重大な疾患です。
日本小児科学会会長から、以下のような要望書も出されています。
要望書にあります「HBV キャリアの母親から出生した児に接種する母子感染防止事業(1986 年開始)」の充実の観点だけではなく、欧米のように定期で接種するワクチンへとしていくべきところですが、まだまだ時間がかかります。
いまは実費にはなりますが、接種をお忘れなきようにお願い申し上げます。
*****要望書*****
http://www.jpeds.or.jp/saisin/saisin_111024.pdf
平成23 年9 月21 日
厚生労働大臣
小宮山洋子 殿
社団法人 日本小児科学会
会長 五十嵐 隆
要 望 書
B 型肝炎ワクチンの添付文書改訂についての要望
現行のB 型肝炎ワクチン(HB ワクチン)の母子感染予防接種スケジュールについて、以下に述べる理由からHB ワクチンの添付文書を改訂し、国際的に広く採用されている接種スケジュールに変更することを要望いたします。
B 型肝炎は、B 型肝炎ウイルス(hepatitis B virus; HBV)の感染によって引き起こされ、慢性B 型肝炎患者の10~15%が肝硬変、肝がんに進行するなど臨床的に重大な疾患です。
HB ワクチンはB 型肝炎の予防に有効であり、本邦においてはHBV キャリアの母親から出生した児に接種する母子感染防止事業が1986 年から全国的に開始されました。その結果、母子感染の95%が防止される等、大きな成果を収めております1。しかしながら、2002 年の厚生労働科学研究によりHBV キャリア小児の約30%が同事業から漏れてしまったドロップアウト症例であることが判明しました2。これを受けて、厚生労働省を始め、関係諸団体よりHBV 母子感染防止対策の周知徹底に関する要請文書が発出されました3 が、2009 年にも同様の事例が起こっていることが明らかとなり、再度周知徹底に関する要請文書が厚生労働省から発出される等、根本的な解決には至っておりません。
この様にHBV 母子感染防止事業からドロップアウトする症例が相次いで発生する背景には、「HB ワクチンの接種スケジュールが複雑である」という問題があります。現行のHBワクチンの接種スケジュールは「初回接種を生後2~3 か月後、第2 回を初回の1 か月後、第3 回を初回の3 か月後」であり、これは薬事法上の承認を取得しているHB ワクチンの母子感染予防に対する用法・用量として添付文書上に規定されております。このスケジュールで接種を受けるためには、1 か月健診以降にワクチン接種のためだけに医療機関へ3 回受診する必要があり、通院の負担増につながっています。また、抗体産生の時期が遅くなり、その間に担当医師が産科医から小児科医に替わり、或いは、里帰り出産などで通院施設そのものが替わり、接種スケジュールの完遂が困難になる場合もあります。これらの問題は、初回ワクチン接種を生後2 か月まで待たなければならないことに起因しております。
一方、WHO や米国等、国際的に広く導入されているHB ワクチン接種スケジュールでは、本ワクチンの接種を出生直後と生後1 か月で行なうこととしており、本邦においても初回接種を0 か月から開始できるようになれば、ドロップアウト問題の改善に資すると考えます。さらに、母親がHBe 抗原陽性の場合は、血液製剤であるHB 免疫グロブリンの使用量を半減できる利点もあります。
日本でHB ワクチンの初回接種が生後2~3 か月に設定された背景は、母子感染防止事業が開始された1986 年当時のHB ワクチンが血漿由来であったため、抗体産生が良くなかったこと、また、出生直後の新生児にHB ワクチンを接種することについて安全性を危惧する声があったことが挙げられます。しかしながら、現在使用されているHB ワクチンは遺伝子組換え型であり、現行製剤を新生児に接種した場合の有効性及び安全性に関する報告も国内外で多数蓄積されてきました。したがって本邦においても、HB ワクチン接種を0 か月から行う国際的な接種スケジュールの導入は可能であると判断しています。
以上の事から、私ども日本小児科学会は本邦における母子感染予防対策を徹底させるために、現行のB 型肝炎ワクチンの添付文書における「B 型肝炎ウイルス母子感染の予防」の効能・効果に対する用法・用量の記載を「通常、0.25mL を1 回、生後0~3 か月に注射する。(以下現行通り)」に改訂することを要望します。
参考文献:
1. 白木和夫:B 型肝炎母子感染防止対策の追跡調査および効果判定に関する研究。
厚生省心身障害研究「小児の心身障害・疾患の予防と治療に関する研究」平成8 年度
研究報告書
2. 森島恒雄:わが国におけるB 型肝炎母子垂直感染防止の現状と問題点―全国調査からー厚生省子ども過程総合研究事業「後障害防止に向けた新生児医療のあり方に関する
研究」平成13 年度研究報告書
3. 厚生労働省、雇児母発第0427001 号(平成16 年4月)
4. 石井勉、今村孝:HB ワクチン早期接種によるB 型肝炎母子感染防止効果の研究.厚生労働科学研究(肝炎等克服緊急対策研究事業)「B 型肝炎の母子感染および水平感染の把握とワクチン戦略の再構築に関する研究」平成22 年度研究報告書
水ぼうそうやおたふく同様に、任意のワクチンであり、自主的に受けるしかございません。
B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus; HBV)は、日常生活でうつる可能性があり、ワクチンで予防することが求められています。
いったんB 型肝炎ウイルスに感染しますと、一部でB型肝炎が引き起こされ、慢性B 型肝炎患者の10~15%が肝硬変、肝がんに進行するなど臨床的に重大な疾患です。
日本小児科学会会長から、以下のような要望書も出されています。
要望書にあります「HBV キャリアの母親から出生した児に接種する母子感染防止事業(1986 年開始)」の充実の観点だけではなく、欧米のように定期で接種するワクチンへとしていくべきところですが、まだまだ時間がかかります。
いまは実費にはなりますが、接種をお忘れなきようにお願い申し上げます。
*****要望書*****
http://www.jpeds.or.jp/saisin/saisin_111024.pdf
平成23 年9 月21 日
厚生労働大臣
小宮山洋子 殿
社団法人 日本小児科学会
会長 五十嵐 隆
要 望 書
B 型肝炎ワクチンの添付文書改訂についての要望
現行のB 型肝炎ワクチン(HB ワクチン)の母子感染予防接種スケジュールについて、以下に述べる理由からHB ワクチンの添付文書を改訂し、国際的に広く採用されている接種スケジュールに変更することを要望いたします。
B 型肝炎は、B 型肝炎ウイルス(hepatitis B virus; HBV)の感染によって引き起こされ、慢性B 型肝炎患者の10~15%が肝硬変、肝がんに進行するなど臨床的に重大な疾患です。
HB ワクチンはB 型肝炎の予防に有効であり、本邦においてはHBV キャリアの母親から出生した児に接種する母子感染防止事業が1986 年から全国的に開始されました。その結果、母子感染の95%が防止される等、大きな成果を収めております1。しかしながら、2002 年の厚生労働科学研究によりHBV キャリア小児の約30%が同事業から漏れてしまったドロップアウト症例であることが判明しました2。これを受けて、厚生労働省を始め、関係諸団体よりHBV 母子感染防止対策の周知徹底に関する要請文書が発出されました3 が、2009 年にも同様の事例が起こっていることが明らかとなり、再度周知徹底に関する要請文書が厚生労働省から発出される等、根本的な解決には至っておりません。
この様にHBV 母子感染防止事業からドロップアウトする症例が相次いで発生する背景には、「HB ワクチンの接種スケジュールが複雑である」という問題があります。現行のHBワクチンの接種スケジュールは「初回接種を生後2~3 か月後、第2 回を初回の1 か月後、第3 回を初回の3 か月後」であり、これは薬事法上の承認を取得しているHB ワクチンの母子感染予防に対する用法・用量として添付文書上に規定されております。このスケジュールで接種を受けるためには、1 か月健診以降にワクチン接種のためだけに医療機関へ3 回受診する必要があり、通院の負担増につながっています。また、抗体産生の時期が遅くなり、その間に担当医師が産科医から小児科医に替わり、或いは、里帰り出産などで通院施設そのものが替わり、接種スケジュールの完遂が困難になる場合もあります。これらの問題は、初回ワクチン接種を生後2 か月まで待たなければならないことに起因しております。
一方、WHO や米国等、国際的に広く導入されているHB ワクチン接種スケジュールでは、本ワクチンの接種を出生直後と生後1 か月で行なうこととしており、本邦においても初回接種を0 か月から開始できるようになれば、ドロップアウト問題の改善に資すると考えます。さらに、母親がHBe 抗原陽性の場合は、血液製剤であるHB 免疫グロブリンの使用量を半減できる利点もあります。
日本でHB ワクチンの初回接種が生後2~3 か月に設定された背景は、母子感染防止事業が開始された1986 年当時のHB ワクチンが血漿由来であったため、抗体産生が良くなかったこと、また、出生直後の新生児にHB ワクチンを接種することについて安全性を危惧する声があったことが挙げられます。しかしながら、現在使用されているHB ワクチンは遺伝子組換え型であり、現行製剤を新生児に接種した場合の有効性及び安全性に関する報告も国内外で多数蓄積されてきました。したがって本邦においても、HB ワクチン接種を0 か月から行う国際的な接種スケジュールの導入は可能であると判断しています。
以上の事から、私ども日本小児科学会は本邦における母子感染予防対策を徹底させるために、現行のB 型肝炎ワクチンの添付文書における「B 型肝炎ウイルス母子感染の予防」の効能・効果に対する用法・用量の記載を「通常、0.25mL を1 回、生後0~3 か月に注射する。(以下現行通り)」に改訂することを要望します。
参考文献:
1. 白木和夫:B 型肝炎母子感染防止対策の追跡調査および効果判定に関する研究。
厚生省心身障害研究「小児の心身障害・疾患の予防と治療に関する研究」平成8 年度
研究報告書
2. 森島恒雄:わが国におけるB 型肝炎母子垂直感染防止の現状と問題点―全国調査からー厚生省子ども過程総合研究事業「後障害防止に向けた新生児医療のあり方に関する
研究」平成13 年度研究報告書
3. 厚生労働省、雇児母発第0427001 号(平成16 年4月)
4. 石井勉、今村孝:HB ワクチン早期接種によるB 型肝炎母子感染防止効果の研究.厚生労働科学研究(肝炎等克服緊急対策研究事業)「B 型肝炎の母子感染および水平感染の把握とワクチン戦略の再構築に関する研究」平成22 年度研究報告書