事件自体の中に、相手に信義誠実に反することがあったことを争うのではなく(民法での普通の信義則の使い方ではなく)、裁判において、相手のとった行動(訴訟行為)が、信義誠実に反するとして、裁判で争う手法(相手のその行為を却下してなかったものとする方法)を以下に列挙します。
民事訴訟法上の信義則の使う例です。
このことを学んだ時は、民事訴訟法学を、楽しいと思った一場面でした。
民法で、信義則を持ち出したら、負けるといいますが、民事訴訟法では、信義則を、有効に用いることができる場合が多いようなところが楽しいと思った点です。もちろん、民法でも、信義則の主張は有効とは思いますが…
5つの類型化ができます。
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訴訟行為と信義則
1.信義則の意義
(1)訴訟上の信義則(2)
・信義則:当事者間の特別な関係を根拠として、特定の行為の効力を制限しようとするもの
・権利濫用:制度的又は公共的見地から、行為の効力を制限するもの
(2)効果
・当事者は、行為規範として信義に従い、誠実に民事訴訟を追行しなければならない。
・裁判所は、信義則に反する訴訟行為を却下するか、訴訟行為本来の効力を否定する。
2.信義則の類型化
(1)訴訟状態の不当形成
・意義:当事者が、法規の要件事実を作為的に形成して、当該法規を不当に適用せしめ、または、要件事実の発生を故意に妨げて、当該法規の適用を不当に回避しようとすること。
*法人格否認の法理(最判昭和48年10月26日民集27巻9号1240頁、主要判例集19事件)、管轄選択権の濫用(札幌高決昭和41年9月19日高民19巻5号428頁、第7回資料3)など
(2)先行行為に対する矛盾挙動の禁止(禁反言)
①意義:ある事実に基づき訴えを提起し、その事実の存在を極力主張・立証した者が、その後相手方から右事実の存在を前提とする別訴提起や主張をされると、一転して右事実の存在を否認すること
②要件
・先行行為と後行行為との間に矛盾があること
・当事者の先行行為を相手方が信頼したこと
・矛盾行為を容認したのでは先行行為を信頼した相手方の利益を不当に害することになること
【例】
Xは、金500万円の手形債権に基づいて、A所有の動産に仮差押えの執行をした。これに対して、Aの娘婿Yは、以前にAより営業譲渡を受けており、上記動産はそれに含まれていることを理由に、執行対象物件はYの所有物であると主張して、第三者異議訴訟(第一訴訟)を提起して、営業譲渡に伴う商号使用に関する公正証書等を証拠として提出し、自己の主張にかかる当該事実の証明に努力した。
そこで、Xは、Yを被告として、営業譲渡に伴う商号続用により会社法22条が適用される結果、Aの営業上の債務である本件手形債務についてはYに責任があるとして、Yを被告とする手形金支払請求の訴えを提起した(第二訴訟)。第二訴訟において、Yは、第一訴訟とは異なり、営業譲渡を受けたことにより商号を続用したものではないとして、Xの主張を否認した。なお、第一訴訟は、その後、当事者双方が欠席したため、取下擬制により終了している。
裁判所は、Yの営業譲渡を否認する主張について、どのように判断すべきか。
(参照判例)
最判昭和48年7月20日民集27巻7号890頁(主要判例集20事件、百選Ⅰ12事件)
(3)訴訟上の権能の失効
①意義:当事者がある訴訟上の権能を長期間にわたって行使せずに放置すると、行使されないであろうとの正当な期待が相手方に生じるため、当事者の一方が改めてその権能を行使しようとしても、その権能は失効したものとされること
②要件
・長期間訴訟行為が行われなかった理由
・長期間の不作為によって形成された法律関係の内容
・当該訴訟行為を認めることによる相手方の不利益
【例】
本件土地の所有者であるAは、大正11年に、推定家督相続人がなくて死亡し、親族会がB1を相続人に選定する決議をし、その旨の戸簿の届出がされたが、右届出は当該決議を無効とする判決によって抹消された。ところが、B1は、その間に、Aから本件土地を相続したとして、Y1の先代C(昭和20年9月死亡)に本件土地を売り渡して所有稚移転登記をし、Cは、さらにY2の先代D(昭和29年4月死亡)に転売して所有権移転登記をした。
ところで、Ⅹの先代B2は、上記無効判決後に、親族会から適法にAの家督相続人に選定され、昭和7年12月に、C・Dの両名に対して、右の所有権移転登記の抹消等を求める本件訴えを提起したが、昭和12年3月に死亡し、その家督相続人であるⅩが本件訴訟を追行することになった。しかし、Ⅹは、昭和19年10月に戦争に召集されたため訴訟の進行を弁護士に委ねた。
その後、昭和22年に復員すると、弁護士から事件記録が全部消失して再製を要するとの説明を受けながら、経済的な理由で裁判所に記録再製を要請しなかった。また、Xは、住所を変更したが、それを裁判所に届け出ることもせず、積極的に期日指定の申立てを行うこともまったくしなかった。しかるところ、訴外Eは、昭和54年10月に、本件土地の一部を買受け、本訴提起に伴う予告登記(処分禁止の仮処分登記)を発見して、Ⅹにその抹消を要請したが、拒絶され、昭和55年4月、予告登記の抹消を求める上申書を提出した。裁判所は、これに対し、訴訟は終了していないとして、昭和55年6月19日午前11時を口頭弁論期日として指定した。これに対して、Y1・Y2は、長期間の経過によりXが訴訟追行権を喪失したものとして、訴えの却下を求めた。
裁判所は、どのような判断を下すべきか。
(参考判例)
最判昭和63年4月14日判タ683号62頁(資料4)
東京高判昭和60年4月24日判時1155号264頁(資料5:資料4の控訴審判決)
(4)訴訟上の権能の濫用禁止
・訴訟上の権能についても、法がそれを認めた趣旨を逸脱する利用は許されないこと
【例】
Y有限会社(持分合計220口)は、Ⅹらを中心とする同族会社であったが、経営に行詰りを来した。そこで、代表取締役A(Ⅹの娘・持分93口)、取締役Ⅹ(持分100口)、Aの夫B(持分10口)等が協議した結果、A・Ⅹらはその持分の大半をC・D夫婦に譲渡してY会社の経営から手を引くことになり、昭和47年5月28日に、Ⅹの持分100口のうち40口をCに、60口をDに、Aの持分93口のうち90口及びBの持分10口をDに譲渡する合意がなされ、C・Dは右持分譲受の代償としてA会社の債務の弁済等のため金500万円を出えんし、A及びⅩは取締役の辞任届けを提出した。そして、同日Yの社員総会で、①右持分譲渡の承認及びCを代表取締役、Dを取締役に選任すること等を内容とする社員総会決議がなされたとして(現実には社員総会は適法に開催されていない)取締役変更の登記がされ、また同年6月にはYの商号変更の社員総会決議がなされたとして(現実には社員総会は適法に開催されていない)、商号変更登記がなされた。その後、Yの経営は持ち直した。
ところが、昭和50年5月に、Ⅹは、上記二つの社員総会決議の不存在の確認を求めて訴えを提起した。第一審では総会決議の不存在が認められて請求が認容された。これに対してYが控訴し、控訴審においてYは、上記のような事実関係の下で、自ら社員持分の譲渡を承諾しておきながら本訴請求をすることは権利の濫用として許されないと主張した。
裁判所は、Yの主張についてどのように判断するべきか。
(参照判例)
最判昭和53年7月10日民集32巻5号888頁(主要判例集291事件、百選4版31事件)
(5)紛争の蒸返しの禁止
・既判力は及ばないが、実体は紛争の蒸返しに過ぎない後訴を新たな紛争として取り扱わず、信義則でもって遮断する。
【例】
昭和23年に、Ⅹの先代A所有の本件各土地について自作農創設特別措置法による買収処分がなされ、さらにY1らの先代Bに対する売渡処分が行われた。その後、Xは、Bとの間で本件土地を買い戻す契約が成立したとしてBの死後Bの相続人Y1・Y2・C(Bの妻)に対して農地法所定の許可申請手続および右許可を条件とする所有権移転登記手続を求め、予備的に買戻契約が無効とされるのであれば、すでにX1からBに給付されていた買戻代金を不当利得であるとして返還するよう求める訴えを提起した(第一訴訟)。
第一訴訟において、Xは、本件買戻契約は本件買収処分が無効であるため、買収処分の対象となった本件各土地の返還を実現する一方法として行われたものである旨一貫して主張したが、結局買収処分は有効とされ、昭和41年に、主位的請求については棄却され、予備的請求については認容する判決が確定した。
それにもかかわらず、Xは、昭和42年に、右買収処分の無効を理由にY1・Y2、および、第一訴訟係属中にY1らから本件土地の一部を譲り受けたY3会社に対して、所有権移転登記の抹消登記手続に代わる所有権移転登記手続等を求める訴えを提起した(第二訴訟)。これに対して Y1・Y2は 第一訴訟において売渡処分の有効性を認める判決が確定している以上、第二訴訟で右処分の無効を主張することは許されないとする本案前の抗弁を提出した。
第一審では、第一訴訟で争いがあったのは買戻契約の有効性であり、これに先立つ買収処分ないし売渡処分はXにおいて本件土地移転の経緯として述べられたものであることから、必ずしもXが右買収処分の有効性を認めたものではなく、第二訴訟を提起することは問題ないとしつつ、Y1らの取得時効の抗弁を認めⅩの請求を棄却した。
Ⅹは、1審判決に対して控訴し、A・B間に本件土地の返還約束がなされていたことを理由に農地法所定の許可申請手続、所有権移転登記手続、および本件土地工作物収去土地明渡を予備的に請求として追加した。Y1らは、第一訴訟と第二訴訟とは、ほとんど同一の紛争のむし返しであり、第二訴訟の提起は信義則に反すると主張した。
裁判所は、第二訴訟についてどのような判断を下すべきか。
また、第二訴訟の提起が、当該買収処分から3年経った頃に提起されたものである場合はどうか。
(参照判例)
最判昭和51年9月30日民集30巻8号799頁(主要判例集203事件、百選4版80事件)
memo:2013.10.30
民事訴訟法上の信義則の使う例です。
このことを学んだ時は、民事訴訟法学を、楽しいと思った一場面でした。
民法で、信義則を持ち出したら、負けるといいますが、民事訴訟法では、信義則を、有効に用いることができる場合が多いようなところが楽しいと思った点です。もちろん、民法でも、信義則の主張は有効とは思いますが…
5つの類型化ができます。
**********************************************
訴訟行為と信義則
1.信義則の意義
(1)訴訟上の信義則(2)
・信義則:当事者間の特別な関係を根拠として、特定の行為の効力を制限しようとするもの
・権利濫用:制度的又は公共的見地から、行為の効力を制限するもの
(2)効果
・当事者は、行為規範として信義に従い、誠実に民事訴訟を追行しなければならない。
・裁判所は、信義則に反する訴訟行為を却下するか、訴訟行為本来の効力を否定する。
2.信義則の類型化
(1)訴訟状態の不当形成
・意義:当事者が、法規の要件事実を作為的に形成して、当該法規を不当に適用せしめ、または、要件事実の発生を故意に妨げて、当該法規の適用を不当に回避しようとすること。
*法人格否認の法理(最判昭和48年10月26日民集27巻9号1240頁、主要判例集19事件)、管轄選択権の濫用(札幌高決昭和41年9月19日高民19巻5号428頁、第7回資料3)など
(2)先行行為に対する矛盾挙動の禁止(禁反言)
①意義:ある事実に基づき訴えを提起し、その事実の存在を極力主張・立証した者が、その後相手方から右事実の存在を前提とする別訴提起や主張をされると、一転して右事実の存在を否認すること
②要件
・先行行為と後行行為との間に矛盾があること
・当事者の先行行為を相手方が信頼したこと
・矛盾行為を容認したのでは先行行為を信頼した相手方の利益を不当に害することになること
【例】
Xは、金500万円の手形債権に基づいて、A所有の動産に仮差押えの執行をした。これに対して、Aの娘婿Yは、以前にAより営業譲渡を受けており、上記動産はそれに含まれていることを理由に、執行対象物件はYの所有物であると主張して、第三者異議訴訟(第一訴訟)を提起して、営業譲渡に伴う商号使用に関する公正証書等を証拠として提出し、自己の主張にかかる当該事実の証明に努力した。
そこで、Xは、Yを被告として、営業譲渡に伴う商号続用により会社法22条が適用される結果、Aの営業上の債務である本件手形債務についてはYに責任があるとして、Yを被告とする手形金支払請求の訴えを提起した(第二訴訟)。第二訴訟において、Yは、第一訴訟とは異なり、営業譲渡を受けたことにより商号を続用したものではないとして、Xの主張を否認した。なお、第一訴訟は、その後、当事者双方が欠席したため、取下擬制により終了している。
裁判所は、Yの営業譲渡を否認する主張について、どのように判断すべきか。
(参照判例)
最判昭和48年7月20日民集27巻7号890頁(主要判例集20事件、百選Ⅰ12事件)
(3)訴訟上の権能の失効
①意義:当事者がある訴訟上の権能を長期間にわたって行使せずに放置すると、行使されないであろうとの正当な期待が相手方に生じるため、当事者の一方が改めてその権能を行使しようとしても、その権能は失効したものとされること
②要件
・長期間訴訟行為が行われなかった理由
・長期間の不作為によって形成された法律関係の内容
・当該訴訟行為を認めることによる相手方の不利益
【例】
本件土地の所有者であるAは、大正11年に、推定家督相続人がなくて死亡し、親族会がB1を相続人に選定する決議をし、その旨の戸簿の届出がされたが、右届出は当該決議を無効とする判決によって抹消された。ところが、B1は、その間に、Aから本件土地を相続したとして、Y1の先代C(昭和20年9月死亡)に本件土地を売り渡して所有稚移転登記をし、Cは、さらにY2の先代D(昭和29年4月死亡)に転売して所有権移転登記をした。
ところで、Ⅹの先代B2は、上記無効判決後に、親族会から適法にAの家督相続人に選定され、昭和7年12月に、C・Dの両名に対して、右の所有権移転登記の抹消等を求める本件訴えを提起したが、昭和12年3月に死亡し、その家督相続人であるⅩが本件訴訟を追行することになった。しかし、Ⅹは、昭和19年10月に戦争に召集されたため訴訟の進行を弁護士に委ねた。
その後、昭和22年に復員すると、弁護士から事件記録が全部消失して再製を要するとの説明を受けながら、経済的な理由で裁判所に記録再製を要請しなかった。また、Xは、住所を変更したが、それを裁判所に届け出ることもせず、積極的に期日指定の申立てを行うこともまったくしなかった。しかるところ、訴外Eは、昭和54年10月に、本件土地の一部を買受け、本訴提起に伴う予告登記(処分禁止の仮処分登記)を発見して、Ⅹにその抹消を要請したが、拒絶され、昭和55年4月、予告登記の抹消を求める上申書を提出した。裁判所は、これに対し、訴訟は終了していないとして、昭和55年6月19日午前11時を口頭弁論期日として指定した。これに対して、Y1・Y2は、長期間の経過によりXが訴訟追行権を喪失したものとして、訴えの却下を求めた。
裁判所は、どのような判断を下すべきか。
(参考判例)
最判昭和63年4月14日判タ683号62頁(資料4)
東京高判昭和60年4月24日判時1155号264頁(資料5:資料4の控訴審判決)
(4)訴訟上の権能の濫用禁止
・訴訟上の権能についても、法がそれを認めた趣旨を逸脱する利用は許されないこと
【例】
Y有限会社(持分合計220口)は、Ⅹらを中心とする同族会社であったが、経営に行詰りを来した。そこで、代表取締役A(Ⅹの娘・持分93口)、取締役Ⅹ(持分100口)、Aの夫B(持分10口)等が協議した結果、A・Ⅹらはその持分の大半をC・D夫婦に譲渡してY会社の経営から手を引くことになり、昭和47年5月28日に、Ⅹの持分100口のうち40口をCに、60口をDに、Aの持分93口のうち90口及びBの持分10口をDに譲渡する合意がなされ、C・Dは右持分譲受の代償としてA会社の債務の弁済等のため金500万円を出えんし、A及びⅩは取締役の辞任届けを提出した。そして、同日Yの社員総会で、①右持分譲渡の承認及びCを代表取締役、Dを取締役に選任すること等を内容とする社員総会決議がなされたとして(現実には社員総会は適法に開催されていない)取締役変更の登記がされ、また同年6月にはYの商号変更の社員総会決議がなされたとして(現実には社員総会は適法に開催されていない)、商号変更登記がなされた。その後、Yの経営は持ち直した。
ところが、昭和50年5月に、Ⅹは、上記二つの社員総会決議の不存在の確認を求めて訴えを提起した。第一審では総会決議の不存在が認められて請求が認容された。これに対してYが控訴し、控訴審においてYは、上記のような事実関係の下で、自ら社員持分の譲渡を承諾しておきながら本訴請求をすることは権利の濫用として許されないと主張した。
裁判所は、Yの主張についてどのように判断するべきか。
(参照判例)
最判昭和53年7月10日民集32巻5号888頁(主要判例集291事件、百選4版31事件)
(5)紛争の蒸返しの禁止
・既判力は及ばないが、実体は紛争の蒸返しに過ぎない後訴を新たな紛争として取り扱わず、信義則でもって遮断する。
【例】
昭和23年に、Ⅹの先代A所有の本件各土地について自作農創設特別措置法による買収処分がなされ、さらにY1らの先代Bに対する売渡処分が行われた。その後、Xは、Bとの間で本件土地を買い戻す契約が成立したとしてBの死後Bの相続人Y1・Y2・C(Bの妻)に対して農地法所定の許可申請手続および右許可を条件とする所有権移転登記手続を求め、予備的に買戻契約が無効とされるのであれば、すでにX1からBに給付されていた買戻代金を不当利得であるとして返還するよう求める訴えを提起した(第一訴訟)。
第一訴訟において、Xは、本件買戻契約は本件買収処分が無効であるため、買収処分の対象となった本件各土地の返還を実現する一方法として行われたものである旨一貫して主張したが、結局買収処分は有効とされ、昭和41年に、主位的請求については棄却され、予備的請求については認容する判決が確定した。
それにもかかわらず、Xは、昭和42年に、右買収処分の無効を理由にY1・Y2、および、第一訴訟係属中にY1らから本件土地の一部を譲り受けたY3会社に対して、所有権移転登記の抹消登記手続に代わる所有権移転登記手続等を求める訴えを提起した(第二訴訟)。これに対して Y1・Y2は 第一訴訟において売渡処分の有効性を認める判決が確定している以上、第二訴訟で右処分の無効を主張することは許されないとする本案前の抗弁を提出した。
第一審では、第一訴訟で争いがあったのは買戻契約の有効性であり、これに先立つ買収処分ないし売渡処分はXにおいて本件土地移転の経緯として述べられたものであることから、必ずしもXが右買収処分の有効性を認めたものではなく、第二訴訟を提起することは問題ないとしつつ、Y1らの取得時効の抗弁を認めⅩの請求を棄却した。
Ⅹは、1審判決に対して控訴し、A・B間に本件土地の返還約束がなされていたことを理由に農地法所定の許可申請手続、所有権移転登記手続、および本件土地工作物収去土地明渡を予備的に請求として追加した。Y1らは、第一訴訟と第二訴訟とは、ほとんど同一の紛争のむし返しであり、第二訴訟の提起は信義則に反すると主張した。
裁判所は、第二訴訟についてどのような判断を下すべきか。
また、第二訴訟の提起が、当該買収処分から3年経った頃に提起されたものである場合はどうか。
(参照判例)
最判昭和51年9月30日民集30巻8号799頁(主要判例集203事件、百選4版80事件)
memo:2013.10.30