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裁判外紛争解決手続(ADR)の一種「公害紛争調停委員会」による公害紛争解決に今後期待します。

2017-02-26 23:00:00 | 行政法学
 今後の行政分野においては、裁判外紛争解決手続(ADR)のひとつと位置づけられる「公害紛争調停委員会」の役割も今後重要になってくると思われます。

 その役割を考える上での参考判例と思われるため、最判H27.3.5を見ておきます。

 判決文では、

「公害調停は,当事者間の合意によって公害に係る紛争を解決する手続であり,当
事者に手続への参加を求める方法,合意に向けた各当事者の意向の調整,法36条
1項に基づく調停の打切りの選択等の手続の運営ないし進行については,手続を主
宰する調停委員会が,当該紛争の性質や内容,調停の経過,当事者の意向等を踏ま
え総合的に判断すべきものであって,その判断には調停委員会の広範な裁量が認め
られるものというべきである。」

 と公害調停委員会に広範な裁量権を認めています。


*****最高裁HP******
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/912/084912_hanrei.pdf

- 1 -
平成25年(受)第1436号 損害賠償請求事件
平成27年3月5日 第一小法廷判決
主 文
原判決中,上告人敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき,被上告人らの控訴を棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人らの負担とする。


理 由
上告代理人田中達也ほかの上告受理申立て理由第2の3(1)について

1 産業廃棄物の最終処分場の周辺地域に居住する被上告人らは,同最終処分場
を管理する会社の実質的経営者,産業廃棄物の処分を委託した業者その他関係者を
被申請人として,公害紛争処理法(以下「法」という。)26条1項に基づく調停
(以下「公害調停」という。)の申請をした。本件は,被上告人らが,同申請を受
けて設けられた徳島県公害紛争調停委員会(以下「本件委員会」という。)がその
裁量権の範囲を逸脱して違法に,被申請人の呼出手続を行った上,調停を打ち切る
などの措置をしたと主張して,上告人に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害
賠償を求める事案である。

2 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) Aは,少なくとも平成3年4月から5月まで及び平成6年8月から平成7
年3月まで,徳島市上八万町に設置した産業廃棄物の安定型最終処分場(以下「本
件処分場」という。)に,他の事業者から処分の委託を受けた産業廃棄物を埋め立
てるなどし,また,Bは,遅くとも平成11年頃から,本件処分場に残土を投棄し
た。
- 2 -
(2) 被上告人らを含む本件処分場の周辺地域の住民468名(以下「申請人
ら」という。)は,本件処分場を調査した結果,ダイオキシン類や水銀,鉛等の有
害な重金属類等が検出されたなどとして,平成19年11月8日,A又はBの実質
的経営者,代表者等のほかAに産業廃棄物の処分を委託した業者らの合計18名
(以下「被申請人ら」という。)を被申請人として,徳島県知事に対し,被申請人
らにおいて本件処分場におけるボーリング調査及び違法に処分された産業廃棄物の
撤去を行うことを求める公害調停(以下「本件調停」という。)の申請をした。
(3) 徳島県知事の指名による3名の調停委員から構成された本件委員会は,平
成19年12月27日頃,被申請人らに対し,申請人らとの調停に応じるか否かの
意見を聴取する書面を送付し,被申請人らは,平成20年2月中旬頃までに,いず
れも調停に応じない旨の回答をした。
(4) 本件委員会は,上記回答も踏まえ,本件調停の進行方針等を協議し,平成
20年3月18日,本件調停の当事者双方に対し,第1回調停期日を同年4月11
日と定める旨の期日通知書を送付して,上記調停期日への出席を求めた。
本件委員会は,調停に応じない姿勢を明確にしている被申請人らに対して出頭を
強制しているとの誤解を与えてはいけないとの配慮に基づき,被申請人らに送付し
た期日通知書には,「調停期日を下記のとおり定めたので,出席する意志がある場
合は,下記の日時・場所へお越しください。なお,時間厳守とし,下記時間より3
0分以上遅れた場合,出席する意志がないものとして扱わさせていただきますの
で,ご留意ください。」との記載(以下,このうち第1文中の「出席する意志があ
る場合は,」の部分及び第2文を併せて「本件記載」という。)をしたが,本件記
載は他の多くの都道府県における公害調停の期日通知書にはないものであった。
- 3 -
(5) 本件委員会は,平成20年4月11日,第1回調停期日を開いたが,申請
人側のみが出席し,被申請人らはいずれも出席しなかった。申請人らは,調停の打
切りに反対したが,本件委員会は,当事者間に合意が成立する見込みがないものと
認め,法36条1項に基づき本件調停を打ち切った。

3 原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判断して,被上告人らの請
求を一部認容した。
本件委員会が本件記載のある期日通知書を被申請人らに送付したこと及び第1回
調停期日への被申請人らの欠席を理由に直ちに本件調停を打ち切ったことは,いず
れも不相当であって,これらは一連のものとして本件委員会がその任務を著しく怠
ったものと評価することができるから,その裁量権の範囲を逸脱したものであり,
国家賠償法1条1項の適用上違法というべきである。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
公害調停は,当事者間の合意によって公害に係る紛争を解決する手続であり,当
事者に手続への参加を求める方法,合意に向けた各当事者の意向の調整,法36条
1項に基づく調停の打切りの選択等の手続の運営ないし進行については,手続を主
宰する調停委員会が,当該紛争の性質や内容,調停の経過,当事者の意向等を踏ま
え総合的に判断すべきものであって,その判断には調停委員会の広範な裁量が認め
られるものというべきである。
前記事実関係によれば,本件調停に係る紛争は,平成3年から同7年までに処分
された産業廃棄物及び平成11年頃以降に投棄された残土に係るもので,当該産業
廃棄物等に対する被申請人らの関与の態様や程度は様々である上,被申請人らはい
- 4 -
ずれも,本件委員会からの事前の意見聴取に対し,調停に応じない旨の意思を明確
にしていたものである。また,本件委員会が被申請人らに送付した期日通知書に本
件記載をしたのは,上記意思を明確にしていた被申請人らに対し,手続への参加を
強制されたとの誤解を与えないようにとの配慮に基づくものというのである。そし
て,本件委員会は,上記紛争の性質や内容に加えて,本件調停の第1回調停期日に
被申請人らがいずれも出席しなかったことをも踏まえ,上記紛争について当事者間
に合意の成立の見込みがないと認めた結果,続行期日を定めたり,被申請人らに対
し法32条に基づく出頭の要求をしたりすることなく,法36条1項に基づき本件
調停を打ち切ったものである。
このような事情の下においては,本件委員会が,被申請人らに対し本件記載のあ
る期日通知書を送付し,第1回調停期日において本件調停を打ち切った措置は,そ
の裁量権の範囲を逸脱したものとはいえず,国家賠償法1条1項の適用上違法であ
るということはできない。

5 そうすると,以上と異なる見解の下に,被上告人らの請求を一部認容した原
審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由
があり,原判決のうち上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして,以上説示したと
ころによれば,被上告人らの請求は理由がなく,これを棄却した第1審判決は正当
であるから,上記部分につき,被上告人らの控訴を棄却することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 金築誠志 裁判官 櫻井龍子 裁判官 白木 勇 裁判官
山浦善樹 裁判官 池上政幸)
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