思春期に関わる小児科医としても、小児科医がその処方をするしないとは別に、子ども達への健康知識として伝えて行くべき事柄だと考えます。
緊急避妊薬に関する北村医師の論考を掲載させていただきます。
緊急避妊EC Emergency Contraception:
1、性交後避妊 妊娠の危険率を0.7%に抑える
2、黄体ホルモン製剤 レボノルゲストレル(LNG) 1.5mg(ノルレボ 0.75mgを2錠)を性交後72時間以内に服用する
3、作用機序 排卵を抑制したり、排卵を遅延させることによる
4、注意点
〇100%妊娠を防げるわけではないこと
〇性感染症の可能性も忘れないこと
*処方につきましては、当院も子ども達の健康を守る立場から産婦人科と連携を取りながらご相談に応じる所存です。
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Dr.北村が語る現代思春期
緊急避妊薬を巡って
毎日新聞2019年5月13日 全国朝刊
避妊しなかった、避妊に失敗した、レイプされたなどの性交があった際、72時間以内に決められた用量の薬を飲んで妊娠を回避できる方法があります。この薬を緊急避妊薬といいます。黄体ホルモンの一種であるレボノルゲストレル1・5ミリグラムを1回服用することで妊娠率を0・7%に抑えることができます。妊娠が成立した後では効果がないので、緊急避妊薬は人工妊娠中絶薬ではありません。
この緊急避妊薬を巡って、僕の周辺が慌ただしくなっています。一つめは、2011年に承認・発売された緊急避妊薬に今年3月、後発薬が登場したことです。医療機関によって価格に多少のばらつきがあることは否めませんが、従来に比べて格安で入手できるようになりました。二つめは、海外から緊急避妊薬を個人輸入し、フリマアプリで無許可販売していたとして男が逮捕されたこと。三つめは、「薬局で薬剤師が扱うのは困難」などの理由で見送られたままになっている緊急避妊薬のスイッチOTC化(医療用から要指導・一般用への切り替え)について厚生労働相が、「再度の議論は妨げられない」と発言したこと。四つめは、緊急避妊薬が対面なしのオンライン診療によって入手できる見通しとなったことです。原則は、専門性を有する医師が診ることなどが条件ですが、妊娠をなんとしても避けたい女性にとって入手しやすくなることは朗報です。
計画外の妊娠を回避するために、緊急避妊薬が入手しやすくなることはとても大切ですが、スイッチOTC化にせよオンライン診療にせよ、緊急避妊薬の服用はスタートであってゴールではありません。緊急避妊薬の存在を知らなかったでは困りますが、それ以上に大事なのは、日ごろから避妊を男性任せにせず、女性が主体的に取り組める方法を選択しておくことです。
また、緊急避妊薬は排卵を抑制、あるいは遅らせることで避妊を可能にするので、服用後の性交で思いがけず妊娠してしまうことがあります。そのため、僕のクリニックでは緊急避妊薬を求める女性には翌日から経口避妊薬(ピル)を服用してもらうこともあります。このような特徴を理解しないままスイッチOTC化やオンライン診療が進み、新たな問題を抱えることにならないかと危惧しているのは僕だけではないはずです。(日本家族計画協会クリニック所長、北村邦夫)=次回は27日掲載