【エゾシ会議の展示】
昨日は釧路短期大学と釧路市の主催による、第二回くしろエゾシカシンポジウム「みんなでエゾシ会議inくしろ」が国際交流センターで開催されました。
展示コーナーでは協賛団体によるパネル展示も充実してきて、展示の数がずいぶん増えましたし、何よりもこうしたシンポジウムへの参加者が飛躍的に増えました。
【北大近藤先生の講演:写真は釧路市提供】
今回も冒頭の北大の近藤先生の講演では用意した300席がほぼ満席の状態です。
このシンポジウム、昨年のテーマは「食べる」だったのに対して、今年は「もっと食べる」というもの。
昨年よりもさらに食材としてのエゾシカを追求したものとして、来場者には先着250名の方に、市内のレストラン「イオマンテ」提供によるエゾシカバーガーと、全日空ホテル総料理長の楡金久幸さん監修のシカミートソース缶がプレゼントされました。
エゾシカを食べるということへの関心と興味が深まってきたことを感じますが、問題は適切な供給の方にありそうです。
【エゾシカバーガー、シカ肉はパテでしたか、なるほど】
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実は昨日のこのエゾシ会議に続いて、今日日曜日の朝八時からの北海道クローズアップでまさにこのエゾシカを食べるということが取り上げられていました。
内容は、エゾシカ肉の供給と駆除の問題を深く突っ込んだものとなっていて、道庁での取り組みや、阿寒湖畔でのエゾシカを活用したB級グルメの阿寒やきとり丼などが紹介されていました。
しかし実際のエゾシカ数の適正管理と活用は進んでいません。
道内でのエゾシカの適正生息数は15万頭ほどと言われる中、今は約65万頭がいると考えられていて、あきらかに自然の許容量を超えています。
生息数の約1/6ほどが増えると考えられているために、全体数が増えれば増えるほど年間に捕獲する数を増やさなくては全体が減らず、道庁では年間15万頭を駆除する目標を立てていますが、ハンターの高齢化と減少が危機感を強めています。
一方、獲ったエゾシカの活用は、というと平成22年度の調査では全道での捕獲数が約年間11万頭であるのに、有効に活用されているのは約1万3500頭に過ぎず、残りはハンターによる自家消費や廃棄されているのだろうとのこと。
阿寒本町でエゾシカ肉の提供を行っている北泉開発の曽我部さんが年間千頭を出荷する大手加工会社として登場していました。
曽我部さん自身が、野生動物をビジネスにすることは肉を安定的に供給することが難しいという苦労を語る形となっていて、ハンターが撃ってから一時間以内に加工場へ持ち込むことを要求されていると紹介されていました。
鹿を生け捕りにして一時養鹿するというやり方もありますが、群れは移動するために捕獲の罠の設置も安定しないこと。さらに餌や人件費などのコストもかかるということで、需要が小さい現在はビジネスとしてはかなり難しいようです。
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もっとも、本来のエゾシカ対策はまず農業被害の軽減が主眼に置かれているので、数を減らすための捕獲・間引き、などをよりやりやすくする行政面での支援も必要でしょう。
そしてそのうえで、できればそれを道産食材として地域の特色あるビジネスに繋げることでエゾシカ捕獲ニーズをさらに強くしたい、という願いもかなえたいところです。
【なかなか被害額が確定しませんが、林業被害も相当です】
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基調講演を行ってくださった北大の近藤先生のお話の中では、日本人のシカ食に対する思い込みが間違っているということを指摘されていました。
一つは『明治までは動物の殺生を禁じられていたので動物の肉は食べなかった』ということですが、実はコメをふんだんに食べられるようになったのは明治以降の近代で、江戸時代は農民がシカやウサギなどの動物を被害防除のために駆除して、それをありがたくいただいていたということ。
また、刀狩以降農村には武器はない、と思われがちですが、これも武器としてではなく、農機具としての銃は農村にいくらでもあって、これで害獣を駆除していたのだそう。
仏教の戒律を持ち出されれば、そこには『薬として食べるなら良い』という薬喰という抜け道もありました。
今あらためて、鹿を食べる文化を再度醸成し、安定的な供給が図られるような方策を早急に実行に移してゆきたいものです。
ちなみに、鹿の日(毎月第四火曜日=四火=シカ)には市役所の地下でもシカカレーがふるまわれます。
市長も私も美味しくいただいておりますよ。
【地下食堂のシカカレー】