
釣りの師匠にねだって快晴の一日を、凍っていない釧路湿原の川へと連れて行ってもらった。
阿寒湖の釣りでは連続三回、一匹も釣れないボウズという状態だったので、このまま歳を越すのがなんとも情けなかったのだ。
この時期の釣りはアメマス(エゾイワナ)狙いだが、ポイントに着いて片手用の網を持ち出そうとしたら、「そんな小さいの網は役に立ちませんよ」と言われ笑われた。
考えてみたら50センチで中くらい、70センチオーバーもありえるというのではそんな網では入らないし、「今日は岸からの釣りなので川に入りませんからね」とも。
釣りにもいろいろなパターンがあるのである。
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雪はそれほど深くないし、氷点下3℃というけれど陽が当たっているのでそれほど寒くはない。まさに最高の一日だ。
釣りのポイントを代えながら歩いていると、エゾシカの親子に遭遇。
2mくらいまで近づいてもそしらぬ風で、雪が解けたところの草を一生懸命食べている。
いよいよ近づくと仕方なさそうに歩き始めたが、鳥獣保護区であることを知っているかのように時々振り返りながら平然と歩いている。
全くなんてところだ。

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さて、この時期のフライフィッシングは、水に沈むラインに沈むフライを取り付けて、川底を引きずるようにすることでアメマスの興味を引いて食いつかせようというのだ。
しかし川底には流木が沈んでいたり、水草の根などがあって、しばしばフライが引っかかってしまう。
こうなると強く引っ張って糸を切るしかないのだが、そのたびにフライを一個失う羽目になる。
一個が何千円もするルアーでの釣りならば尻込みするかもしれないが、フライならば次のフライにつけ直せば良いだけのことで、そのために何個もフライを持参する。
だから弾切れだけは避けたいところで、皆この時期は同じタイプのフライを何個もひたすら巻くのだという。
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さて、この日は35センチのアメマス二匹をしっかりと釣り上げてとりあえず今年一念を締めくくることができた。
証拠の写真も撮ってもらったが、デジカメを阿寒湖で水に浸してしまって以来発色がおかしくなってしまったので白黒写真でお許し願いたい。
決して昭和30年代の釣りではありません。
湿原の夕日も素晴らしかったが、帰るころにはタンチョウの親子が鳴きながら上空を飛翔してゆく。
全くなんという自然なことか。
今年の流行語大賞は「ワイルドだろう~?」とのことだが、これこそ本物のワイルドだ。
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写真でもビデオでも下手な文章でも表すことができない自然の魅力は、本当にここで感じていただく以外にはなんともしようがない。
でも釣り人が増えるのは勘弁してほしいとも思う。
できれば天国は独り占めしたいのである。